第22話 無理なんだい
そんなこんなで座学の授業の半分ほどを終え、いよいよ実技の訓練が授業に組み込まれ始めた。
狩竜人の歴史などは興味を持って調べるととても面白い物だったけれど、興味が無い人たちにとっては退屈な授業だったようだ。正直昔の狩竜人の名前や功績を知ったところで、目の前の脅威に打ち勝てるかと言えばそんなことは無いため、詰まらなそうに外を眺めている生徒に注意する事無く授業を進めるのも仕様が無い事かなと思った。そう言うやつらはテストでひどい目に合えばいいとほくそ笑んでいたのだが、残念ながらテストの様な物は一切行われなかった。僕がテストを行われない事に対して、残念がるなんて事が有ると知ったのも驚きだった。
知ってる奴だけ生き延びる、知らなきゃ死ぬだけ、至って単純な事で、すべては自己責任で成り立っている、僕も船が沈んだ事以外は自分の知識で生き延びてここまで辿り着いたから、その事は身に染みてわかっている。
そのためか星の見方や、寒暖の対処の仕方など、直接命に関わる授業は外を向いている生徒も少なかった、全く居ないわけでは無いのは、自分には関係無い事だと思っているのか、僕みたいにすでに履修済みかだ。
先生の質問に対して外を眺めていた僕が何でも答える為、相当先生からの心証は悪かったようで、座学で僕を丸め込めなかった分、実技に入ってからもその矛先は僕に向かっていた。
「えー、目の前に見た事の無い生物が現れました、口には鋭い牙、鋭い爪を持つ腕と足、逞しい尾を持っています、そして僕は剣と盾を持っています、その生物のどこが一番脅威でしょうか」
とても簡単で返答困難な質問に対して、みんなは思い思いの事を話し会っている、アントニオも僕の所へやって来て、
「牙は盾で防いで、爪は剣で払いのけれるから、尻尾が一番の脅威かな」
確かに相手がアントニオの思っている大きさならそれでも正解だと思う、先生も恐らくそう答えてくることを期待している筈だ、でもレイ達に鍛えられた僕には通用しない。
「それじゃあ、優等生のシリル君、答えを聞こうか」
「はい、全部が脅威です」
「どうしてそう思う」
「見た事も無い生物の脅威度はわからない以上、そのすべてを脅威と見做すのが最善だと思います」
「そうだな、概ね正解だが・・・、それじゃあその未知の生物にどう立ち向かう」
僕の答えが望んでいた物では無かったからか、質問の内容が変わってしまった。
恐らくどこかの部位を答えたら、それは間違いだと言いたかったのだろう。
「えーっと、その生物と遭遇した場所はどこですか、森の中ですか、砂漠のど真ん中ですか」
僕の返答に先生は少し考えた後で、
「森の中だ」
「その生物の大きさは、周りの木々と比べてどれぐらいの大きさなのでしょうか」
先生は両手を広げて横幅はこれくらい、その後で右手を高々と上げて、口がこの辺りだと答えた、
「腕に爪が有るのが確認できているという事は、後ろ足で立ち上がってその大きさですか」
「そうだ」
「周りに草は生い茂っていますか、木はたくさん生えていますか」
「草はほとんど無い、木は疎らに生えている」
僕の質問に対して次々と答える先生に対して、僕はどんどんと不明だった箇所を質問した。
長い時間質問のやり取りをして、僕の中でほぼ答えが固まった。
「それで、優等生の答えはどうなんだ」
「はい、答えがわかりました、僕なら一目散に逃げます」
僕がそう答えると周りで聞いていた生徒たちはアントニオも含めて笑い出した、しかし先生だけは真面目な顔になり、
「なぜ逃げる、仲間は3人も居て扇状に広がっていて、一斉に飛び掛かれば誰かが側面から攻撃できるんだぞ」
「扇状に広がっているのなら3方向に逃げれるので、それでも追いかけてくるのなら、追いかけられている仲間の側面と後方を取れば良いと思います、そうすれば前に出るよりも優位に立てると思います、でも、出来れば追いかけてきて欲しく無いですね、見た事も無い生物相手に準備が足りな過ぎると判断しました」
「そうか、未知の物に対する探究心は無いのか」
「そんな事は有りません、死んだら終わり、生きてる事が勝ち、と教わったので」
「そうか」
そう呟いて先生は僕たちに静かにするように言うと、昔話をし始めた。




