第19話 似た者同士
レイ達を乗せた狩竜人船は次の目的地へ向けて緩やかに旋回をし始めるとわずかに傾き、主の居ない船長席に置かれていた船長帽が地面に落ちた。
「次の目的地は、どこだったかな」
拾い上げた船長帽を目深に被り、レイは少しおどけた様にオードリーに尋ねる。
「次の目的地は・・・、ふふふ、あなたじゃあまだちょっと貫禄が足りないわね」
「そうかな、自慢じゃないがかなりの物だと思うぜ」
そう言ってレイは腕の筋肉を見せつけた、オードリーはそんなレイを見て嘲笑気味に首を横に振った。
少し悲しそうな顔をした後で、レイは被っていた帽子を船長席に置くと腕を組み、窓の外を眺めながら再びオードリーに話しかけた、
「ちょっとシリルをかわいがりすぎじゃないか、あんなにべったり唇の跡を付けて」
「あら、あなたも面白がっていたじゃない」
「俺は良いんだよ、俺は。お前こそ魔力帯まで付けて、シリルが力負けして驚いてたぞ」
「随分と頑張ってるみたいね、これが無かったら私は負けてたかもしれないわ」
そう言ってオードリーは腰に巻いていた帯を外す、ところどころに魔力を詰めた球が複数付いており、その一つ一つが不思議な光を放っている。
「あの子も強くなってるのね、久しぶりに見たから見た目の違いに驚いちゃったわ」
「俺も驚いたよ、あんなに変わるものなんだな。しかし、あそこまで強くなってるとは思わなかったよ」
「そうね、あなたも油断してたら、ころりと負けちゃうかもよ」
「いやあ流石にまだ大丈夫だと思いたいね」
そう言ってレイは再び窓の外へ視線を移した。
「で、次の目的地ってどこだったっけ」
「ふふふ、まだ船長にはなれそうもないわね」
そう言ってオードリーは手に持っていた地図を指差しながら次の獲物の説明をし始めた。
僕はそそくさと寮へ戻り、夕食まで静かに部屋に籠っていた。
時間になると王子君が迎えに来てくれたので一緒に食堂へ向かったが、途中ですれ違う生徒たちの注目を浴び捲ってしまった。忘れていたわけでは無いのだけれど、あの船の乗組員は、得てしていたずらと言うか、冗談が過ぎる所がある事をあらためて噛みしめた。
王子君はレイには少しばかり興味があったようだけれど、オードリーには見向きもせず、僕とレイたちが校長室へ向かった時には付いて来なかったので、その後の顛末は知らないようだった。
もちろん聞かれれば、多少の脚色は加えるかもしれないが全部話すけれど、自分からあえて言う程の事では無いと思い、不思議そうにしている王子君には悪いけれど、僕たちは急ぎ足で食堂へ向かった。