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第139話 川豚と呼ばれるには

甲板に戻ると、船首の方でジャッキー先輩たちが何やらわいわいと議論を交わしていた。

「もうすぐ川豚料理出来ますけど、こっちはどんな感じですか」

輪の中に入るために僕が声を掛けると、ジャッキー先輩たちは議論を止めてこちらを振り向き、

「ここでやるのが良いのか、本湖の方まで移動した方が良いのか結論が出なくてな」

「空を飛んでくるんでしたっけ」

そう言って僕は空を見上げたけれど、それらしい姿は確認が出来なかった、

「それなんだよ、川豚を食べに来るって事は知っているんだけど、どこに居るかとかわからないんだ」

「あー、ヤマイルカだけに」

僕は無言でアントニオの頭を叩いた、それを見ていた王子君は苦笑いをしている、

「こういう時こそ、オフィーリア姫様に助言を求めるのが良いんじゃないかな」

「そうだな、じゃあシリル聞いて来てよ」

自分が言い出した手前、王子君の提案を断るわけにもいかず、僕はまた船内へ戻り、艦橋に居る姫様に助言を求めた。

「そうか、ならばまずは食事をしてからだな」

艦橋にまで料理の匂いが立ち込め、僕が姫に声を掛けた時の第一声が”出来たか”だった事から、どう考えても腹が減っている事がわかったために僕はまた厨房へ行き、レイラに料理の進捗状況を確認した。

「みんなを呼んでもらっても良いですよ、シリル君のお父さんのお弁当と一緒に食べましょう」

にこやかなレイラの顔にドキッとして、僕は再度甲板に出てジャッキー先輩たちを食事に誘った。


食堂に全員集まり、取れたての川豚の肉にかぶりつくと肉汁が口いっぱいに溢れ、噛めば噛むほど旨味が口いっぱいに広がる。

父のお弁当は彩を考えて作られてはいたけれど、僕が好きだった料理ばかりが入れられていて、少しだけ目頭が熱くなってしまった、そしてまた自分が獲った獲物を食べさせてあげられなかった事を思い出し、良い感じに煮られた芋を頬張ると申し訳ない気持ちが溢れた。

「食べながらで良いから聞いて欲しい、食事が終わったらヤマイルカの狩猟に取り掛かる。各自狩りの服装で甲板に来るように」

姫様から直々に狩猟をすると告げられた、ヤマイルカの狩りとは一体どんな方法なのだろうか。

「調理を担当した者たちは休んでいても良いぞ」

姫様の言葉にレイラたちは顔を見合わせて何やら相談をし始めた、そして3人が頷きながら、

「離れたところで見ていても良いでしょうか」

ジェイミーが代表として姫様に尋ねた、それを聞いて姫様は大きく頷きながら、

「ああそれでも構わない、危ないから気を付けるんだぞ」

姫様からの思いがけない危ない発言に、狩り担当の僕たちは一瞬はっとしたが、危なくない狩りなんてそもそも存在しないだろうと自分に言い聞かせて心を落ち着かせた。

それからゆっくりとした食事の時間は過ぎ、食後に一息ついたところで僕たちは甲板へ集合した。

そこへ槍の様な、槍と言うには長すぎる棒とワイヤーを持った姫様が出て来てた、見た事が有るような無いような長い棒を甲板に置くと、

「まずはお手本を見せるが、私の近くに居るか船内まで離れるように」

そう言うと、姫様は棒の様なものから伸びたワイヤーの先に川豚を縛り始めた。

そして棒を持ち上げると大きく振りかぶり、勢い良く頭上で回し始める。

唸りを上げて勢いよく川豚が回り、次第に辺りに飛沫が飛び散り始めた。

それと同時に何とも生臭いような匂いが立ち込め始め、それが川豚の体液だと気付くのに時間は掛からなかった。

甲板に川面に飛び散る体液は油膜を作り、回転する川豚からはその内ぶうぶうと音が鳴り始めた。

するといままで僅かな雲しか見えなかった青空に小さな動く黒い点の様な物が現れ、それは次第に数を増やしていった。

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