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第137話 けがなくてよかった・・・のか?

「あれだ、今そこに顔を出した」

川豚狩りの経験者であるジャッキー先輩が、呼吸をするために川面に顔を出した・・・であろう川豚を指差しして教えてくれたのだが、僕たちには水面の煌めきなのか、川豚の呼吸なのかわからずに時間だけが過ぎて行った。

「ちょっと良くわからないですね、最初の一匹はジャッキー先輩にお願いできますか」

業を煮やした僕はジャッキー先輩にそう提案をしてみた、どう考えても僕たちよりも先に見つけているジャッキー先輩が狩った方が効率が良いに決まっている、しかし返事は思いもかけない内容だった、

「・・・剣士の俺が飛び込むと、その、服が濡れちゃうだろ。だから、まあ、あれだ、ガンナーのレイラに狩って欲しかったんだけど・・・」

僕はジャッキー先輩の言葉を最後まで聞き、すぐに船から川へジャッキー先輩を突き落とした。

水の中に落ちたジャッキー先輩はすぐに水面に顔を出し、右手を突き上げて何やら怒鳴っている。

怒鳴っている内容は聞こえなくても大体わかるので、僕も船べりからジャッキー先輩にぶつからない位置に飛び降りた。

服を着たままだと濡れた服が身体にへばりつき、裸の水泳よりも体力を使うが、豚を抱えて泳いだことも有る僕にはどうって事は無い。

僕が川に飛び込んだ事を確認したジャッキー先輩は怒鳴る事を止め、川岸まで泳ぐとさっさと川から上がってその場に座り込んでしまった。

僕もジャッキー先輩に続き川辺に上がると、ジャッキー先輩が呆れた様に、

「お前さぁ、やり方ってものが有るだろう、俺は一応先輩だぞ」

「わかっていますよ、率先して川に飛び込んで行く、素晴らしい先輩です」

前髪から川の水の雫を垂らしながらそう答えた、再びジャッキー先輩は呆れた様に、

「濡れちまったらもうしょうがないな、・・・どうだ、俺と狩り勝負しないか。沢山狩った方が勝ちって事で」

川豚を全く見つける事が出来なかった僕にそんな勝負を仕掛けて来るなんて、受けて立ちましょう売られた勝負は全部買うのがレイの教えなのだから。

「わかりました、勝負の方法は時間内で何匹にしますか、それとも先に何匹か狩った方にしますか」

「ガンナーの邪魔にならない場所まで下って・・・、3匹先に狩った方が勝ちにしようか、そんなに沢山狩っても食べきれないしな」

「わかりました、じゃあそれで良いです」

「決まりだな」

そう言うとジャッキー先輩は助走を付けて川へ飛び込んで行った、飛び込んだ先で水飛沫が上がり、それが収まると水面が赤く染まり川を流れて行った。

「まず一匹」

丸々と太った川豚を岸へ引っ張り上げると、ジャッキー先輩は顎を出しながら、

「いやあこのままだと簡単に勝っちゃうからな、ちょっとぐらい手加減しないと勝負にならないかなぁ」

随分と自慢げなジャッキー先輩を尻目に、僕は全身の服を脱ぐと川へ飛び込んだ。

「おいおい、俺の話しを聞けよ。まったく可愛くない後輩だなぁ」

そんなジャッキー先輩の愚痴を聞いているほど暇では無い。

それに、さっき船から飛び込んだ時に確認をしたんだけけど、川の中には川豚がうようよ居るので、水面に顔を出すのを待つのでは無くて、水中に居る川豚を狩った方が簡単な気がしたから、それを早く確認しておきたかったのだ。

水中での狩りは、海の有る町に生まれた僕には手慣れたもので、アトモスに居た時はもっと素早い魚を漁していたぐらいだから、図体の大きく動きの鈍い川豚を狩るのなんて簡単に決まっている。


「川に潜ったまま出て来ないから心配してたんだぞ」

僕が3匹の川豚を狩り終えて川から上がると、すぐにジャッキー先輩が駆け寄って来た。

「ジャッキー先輩、勝負は僕の勝ちですね」

おろおろしているジャッキー先輩に僕が勝ち名乗りを上げた、

「見たところ平気なようだな、まったく困った後輩だ」

「へへへ心配をかけてしまってすいませんが、勝負は僕の勝ちって事で良いですか」

「ん、ああ、良いよ。おめでとう、お前の勝ちだ。じゃあそれを囮に・・・、って内臓捨てて来ちゃったのか」

「え、ああ、はい。水の中なんで処理が簡単だったんで、まずかったですか」

「仕方ないな、それは肉として食べるか。囮には俺の狩った川豚を使おう、ヤマイルカは内臓が好物だからな」

「ああそうか、囮として使うんでしたっけ。そうか、それなら捨てて来るんじゃなかったなぁ」

「それよりもお前、服なんか脱いで良かったのか、船から丸見えだぞ」

「ええ、これだけ離れてれば何も見えないでしょう」

「お前ガンナーの目の良さを知らないのか、この距離なら・・・、毛が何本生えてるかぐらいはわかるぞ」

ジャッキー先輩に言われて僕は咄嗟に隠したが、そこに毛は生えてなかった。

「わはは、船に戻って顔を背けた相手には丸見えだった証拠だな」

僕は船に背を向けながら下着を履き、まだ濡れている上着も着込んだ、

「でもジャッキー先輩、勝負は僕の勝ちですからね」

「ああそれで良いよ、おめでとうお前の勝ちだ」

「あれ、それだけですか」

「そりゃあそうだろう、勝った時にどうするなんて決めてないし」

2匹目を狩る素振りすら見せなかったジャッキー先輩は、最初から勝つ気が無く、僕に川豚を狩らせただけだと船に戻る途中で教えられた。

どうやら、船から突き落とした事の復讐をすぐにされたようだ。

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