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第136話 ヤマイルカ

僕は徐々に船の速度を上げて行き、流れていく景色に船を操船している実感に感激していた。

いつかは自分もこんな船を持ちたい、そう思わせるに十分な体験に僕は酔いしれているとすぐに減速の指示が出された。

あくまでも試運転を兼ねた狩りなのでどこか壊れたのかと心配になったが、地平線から次第にキラキラと輝く水面が見え、それが目的地のオルカ湖だと気付き、こんなに近くにこんなに大きな湖が有ったのかと驚いていると、

「まじか、こんなに早くオルカ湖に着くのか・・・」

僕よりもジャッキー先輩の方が更に驚いていた、ため息交じりのその言葉からは悲しみも感じ取れ、僕がその理由を尋ねると、

「ここへは川豚を狩りに来た事が有るんだが、その時は往復で1週間だぞ。今はせいぜい1時間じゃないか、マローたちが良い機会だからとここへ向かっているが、着くのは3日後だからな」

なる程、ここが川豚の生息地だったんだ、上級生になったらまた来るかもしれないから覚えて置いて損は無いだろう、何より川豚の肉はとても美味しいし。

「微速前進、出来る限り岸の近くへ着水」

「微速前進」

僕はオフィーリア姫の指示を復唱して、オルカ湖の岸際まで速度を落としたまま前進を続けた。

「微速下降」

「微速下降」

少しづつ下降する狩竜人船が湖面に近付くにつれて水飛沫が上がり、宙を舞う水滴は上昇するにつれ霧状になり、虹を纏いながらキラキラと甲板に降り注いだ。

やがて船は大きく揺れて着水したことを皆に伝えた。

「支流に入って接岸、そこで川豚を狩る」

オフィーリア姫の指示が飛ぶ、すぐにジェイミーが現在地から一番近い支流を探し出し、レイラがアントニオへ舵取りの指示を出す。

僕はそれらの指示を聞きながら船の速度を調節し、今度は大きな振動も無く接岸する事が出来た。

ジャッキー先輩がオフィーリア姫の指示で甲板に出て、大木と船をロープで縛り付け、そこで船の魔力炉を止める様に指示が出た。

「ではこれより川豚の狩りに出る、ジャッキー君は川豚狩りの経験がある様なので各自狩り方を聞くように、以上」

オフィーリア姫からの指示はそれで終わってしまった、そのため艦橋に戻って来たジャッキー先輩を捕まえてみんなで川豚の狩り方を教えて貰った。

「雷鳥よりもはるかに簡単だから特に教えるほどの事も無いんだけど、呼吸のために水面に上がって来るから、そこを逃さずに剣で刺すなり弓で撃つなりをするんだけど、この時期はヤマイルカも居るからそれも出来れば狩りたいな」

川豚と言うだけあって川の中に生息していて、水面に出て呼吸をするという事は魚の様に鰓呼吸が出来ないようだ、それが無ければ狩るのも大変だっただろうに、

「ヤマイルカも川の中に居るんですか」

僕がジャッキー先輩に尋ねる、川豚は聞いたことは有るが、ヤマイルカとは初めて聞いた。いったいどんな味の肉なんだろう、

「ヤマイルカは川の中には居ないよ、別名飛び豚って言って空を飛んでるんだ、だから必然的に弓での狩りになるんだけど、この時期は川豚が岸に寄って来るから、その川豚を食べて丸々と太ってて動きが鈍くなるんだ」

「美味しい川豚を食べてるなら、ヤマイルカも美味いんじゃないかな」

食べている物がその肉に影響をする事を僕は知っている、川豚の肉は脂がのっていてとても美味しいから、それを丸々と太る程食べているのなら、ヤマイルカの肉の味にも期待が出来そうだ、

「それは俺もわからん、俺が来た時はまだ時期じゃ無かったし、マローはそれも狙ってると思うけど、ガンナーの腕が良く無いと狩れないし、湖面に落ちたヤマイルカに止めを刺すにも、回収するにも船が居るから」

「運良く陸地に落ちたら、狩れるって事ですね」

水面に出て来る川豚を食べているのなら、わざわざ陸地の上を飛び回る事はしないだろう、なる程、ジャッキー先輩が言う様にとても狩りにくい獲物のようだ。

「狩竜人船の甲板ならロープを掛けて引き摺り落とせるから、何も無いよりははるかに狩りの成功率は上がるだろう、餌として甲板に川豚を置いて置けば齧りに来るんじゃないかな」

引き摺り落すと聞くと雷鳥を思い出してしまう、レイラに準備をして貰っていたから僕たちは楽が出来たけれど、長い旅を終えて必死に川豚を狩り、その肉も食べずに狩れるかわからないヤマイルカを狩るのは確かに非効率的だ、杭を打ち込むための準備も必要だしワイヤーも要る、雷鳥があれだけ沢山の杭を引っこ抜いた事を考えて準備をするとなると大荷物になるだろう。

マロー先輩が卒業記念の狩りのつもりなら、人数を集めてそれぐらいの準備はしてからここへ来るかもしれないな。

「あ、川に飛び込むのは良いけど、湖には飛び込むなと言われてるから、気を付けてな」

「それはどういう事ですか、本湖は駄目だけど支流は良いって事ですか」

「俺も良くわからんがそう言われてるから、まあここで狩りしてる分には本湖は関係無いし良いだろう」

「わかりました」

僕たちは甲板へ出て、水面に浮かんでくるであろう川豚を待った。

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