第130話 狩りの一歩
案の定と言うか当たり前の事であるが、僕の部屋に一番最初に来たのはジャッキー先輩では無くて、まだ学校に残っていたオフィーリア姫を間近で見て置きたい生徒達だった。
しかし腕を組んで僕の部屋の前で仁王立ちしているオフィーリア姫に、例え挨拶だとしても声を掛けれるような豪胆な生徒は居らず、暫くのちに書きかけの計画書を持ったジャッキー先輩が来るまで人は増え続けた。
とにかく早く部屋へ入って欲しかったために二人を押し込むと、残念そうな目をする者と、明らかに敵意を抱いている者がいたが、今更そんな事を気にする僕じゃないので、それらを背中で受け止めて扉を閉めた。
「あの、どういう用件でしたか」
訳もわからずに呼び出されたジャッキー先輩の開口一番の発言は至極尤もで、オフィーリア姫に用件を説明させるとまた支離滅裂になると思い、ジャッキー先輩には僕から事の経緯を説明させて貰った。
「なる程、そう言う事なら断る理由は何も無いな」
そう言いながらジャッキー先輩は抱えて来た計画書の草案を破り捨てた、そうと決まれば後の話しは早い。
準備も有るために出発は明日の朝、目的地はオフィーリア姫の言う通り、期間は父親が魔力炉を直すまでの間、予定では2週間だけど微調整は可能、狩竜人船なので狩竜人武器の使用が可能、それらは全部船に有る物を使う。
「ジェイミーさんはヘレナさんの部屋を知ってるかな、予定を伝えて置いて欲しいんだけど」
「わかったわ、部屋は知ってるから・・・、私から伝えて良いのね」
「うん、よろしくお願いします」
少し複雑そうな顔色を見せたジェイミーは小さく頷いた、僕は少しだけ気にかかったけれど気のせいかなとその場はそのままやり過ごした。
「それでは私はこれで失礼する、各々準備を怠らない様に、簡単な狩りだが命のやり取りをするのだ、当然狩られる事も有る事を努々忘れない様に」
オフィーリア姫の締めの言葉でこの場の空気が変わった、狩りに行く事は狩竜人にとって当たり前の事だが、狩られる側もただ黙って狩られる訳では無い。
鋭い爪や牙、大木をなぎ倒す程の膂力の籠った尻尾、それらが僕らの生身を打ち付ければ無事では済まない、恐らくは奴らの晩飯になるだけだ。
だから僕たちは武器を構える、爪や牙を払い、尻尾を避けて急所へ渾身の一撃を撃ち込む。
それが出来れば、奴らは僕たちの晩飯だ、ただそれだけの話し。
雷鳥は僕たちが万全の準備をした場所へおびき寄せて、四人がかりでようやく辛勝する事が出来た、しかしこれから狩る相手はそうじゃ無い、どこで何を狩るかはまだわからないけれど、そこは奴らが普段狩りをしている場所だ、そんなところへわざわざ出向くのだから普通に考えれば凶器の沙汰だ。
だけど、恐らくは今度の狩りはまだ最初の一歩ですら無いのかも知れない、その先にある竜を狩る事に比べたら。