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第128話 世界の全部

「いつ来るかわからない人を待っているってのは、・・・暇だな」

一番最初にアントニオが音を上げた、実際は僕も退屈はしていたのだが、狭い部屋の中で剣術の訓練をする訳にもいかずにひたすら耐えていた、

「こういう男ばかりが集まっていて話題に困ったら、あれだろ」

アントニオの不敵な笑みに嫌な予感しかしなかったが、落とし穴に落ちてみなければその深さを知れない、と言うぐらいには無謀な僕としては、アントニオの話しに乗る以外の選択肢は無かった、

「あれって何の事、今なら何を言っても良いよ」

「お、シリルは乗り気だね、と言ってもシリルの話しには興味は無いんだけど」

アントニオの失礼な物言いに少し苛立ちを覚えたが、僕がアントニオにどれだけ興味が有るのかを自答したら、すっと怒りがどこかへ消えてしまった、

「やっぱりここは好きな女の話ししか無いだろう、この学校へ来てもう何か月も立ったことだし、好きとは言えないまでも、興味のある女の一人ぐらいは居るだろう」

「なんだよ、アントニオは僕の好きな女の子の話しに興味が無いのかよ」

「お前はなぜか女にモテモテじゃないか、シェリー先生にシンディ先生、それにオードリーさんにジェイミーにレイラにヘレナ、なんで俺じゃ無くてお前なんだよ」

「ちょっと待って、シェリーもシンディも一緒に家の宿を手伝って貰っていたから仲が良いだけだし、ジェイミーとレイラの事は当然好きだけど、それは女性としてでは無くて人と好きなんだし、ヘレナは恐らく僕の事は嫌いなんじゃないかな」

僕が一気に捲くし立てたが、アントニオは呆れた顔をして首を傾げている、そこで頼りになるのはやはり王子君・・・だったのに、

「シリルの場合は、それとオフィーリア姫もだな。食事も同席させて貰っていたぐらいだし、何年か前の剣戟大会でも色々と教えて貰ったんだろう、恐らくは異性として好きとかでは無いだろうけれど、相当気に入られている事は間違いないな」

気に入られている・・・のかも知れない。

その事実だけで満足できるほどの高みに居る姫様に、紹介状まで書いて頂いて後ろ盾になってくれているのだから。

「まあ僕の話しはアントニオも興味ないくらいだしこれぐらいにして、王子君はどうなのさ。それこそジェイミーさんなんて好きじゃなくても気になっちゃうくらいの存在だし、ヘレナさんの事もかなり気にかけてたでしょ」

「ヘレナさんを気にかけてたのは、お前の扱いが酷過ぎたからだろ」

王子君にはっきりと言われてしまった、それに関しては素直に反省するしかない、実際本人にも謝罪したくらいだし、

「まあ気になる女性の一人や二人は居るけど・・・」

思いがけない王子君の言葉に、僕もアントニオも目を見開いて聞き手に回った、まさか王子君がこんなに簡単に、気になる女性の事を話してくれるとは思っていなかったからだ。

「それよりも、世の中の半分は女性だけど、半分しか好きになれないなんて寂しくないか」

僕は王子君の言う事が良くわからなかったが、半分じゃ無くて全部を好きになれるって良い事だなと共感出来た。

「そう言うって事は王子は・・・」

アントニオと王子君の目と目が合った、いつもながら真剣なまなざしの王子君と、ちらりちらりと僕の方へ視線を向けて明らかに助けを求めているアントニオ。

「それで、王子君の気になる人って誰なの」

「それか、それはな・・・」

王子君はそう言いながら席を立ち扉の方へ向かった、そして勢いよく扉を開けるとばたばたと人が倒れて来た。

ジェイミーと、その下敷きになって鼻を打ったのか鼻を押さえているレイラと、その後ろにはあきれ顔で立っているオフィーリア姫が見えた。

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