第127話 旅の準備
「約束も守ったみたいだし、ここに居ても仕方が無いから部屋へ戻って準備でもするか」
僕がヘレナに休校中の予定を取り付け終えて席に戻ると、王子君とアントニオが下校の準備を済ませていた、教科書などは置きっぱなしでも構わないので、他に持って帰る物が無いか机を漁ってみたけれど、これと言ったものは見つから無かった。
「特に何も無いからこのままで良いや。部屋へ戻るのは良いけど、すぐに出発する訳じゃ無いよ。ジャッキー先輩がどんな事を企んでいるかわからないから、どんな予定かを聞いてからの方が良いと思う」
「まあそれはそうだけど、それなら、とりあえず今日の昼飯はどうするか決めようか」
「あ、そうか、食堂へ行っても食事は無いんだっけ」
「購買へ行けば少しは食べる物は有ると思うけど、ちょっと出遅れたから残ってるかわからないな。保存食が無かったら、狩りに出かけるとか言ってられないぞ」
「確かに、今から保存食を作ってたら休校期間が終わっちゃうしね。それに、それほど獲物は居ないし」
野外授業で学校の周りを探索した時に、まともに出会ったのはサーベルタイガーぐらいで、後は蛇やカエルに昆虫が獲れたぐらいで、他の獲物を狩る事は望み薄だろう。
「それじゃあ部屋へ帰って準備をする前に購買へ寄って、保存の出来る食べれそうな物を買ってからにするか」
王子君の号令で僕たちはすぐに席を立って購買へ向かった、学校に残る人は思いの外少ないのか、特に混雑もしていない中で目当ての物を購入し、いったん僕の部屋に集まった。
「なんか、いつも僕の部屋に集まってる気がするんだけど」
僕の素朴な疑問に驚いたような顔で顔を見合わせた王子君とアントニオは、
「お前の部屋は扉が変わっていて解りやすいからな、部屋を間違えたら大変だから」
それは確かにそうなんだけど、まあ別に良いかお漏らしさえされなければ、
「それで、ジャッキー先輩はどうなってるんだ」
「どうなんだろう、今頃は色々と計画を練ってるんじゃないかな」
「ジャッキー先輩に全部任せておくと、この前の雷鳥みたいな事にならないだろうな」
「それはわからないけど、今回の事も有るから多少は考慮するんじゃないかな」
「やっぱり心配だな、ちょっと部屋まで行って一緒に考えようか」
しっかりと計画を立ててから動きたい王子君は、どうしてもジャッキー先輩が信用できないようだ、僕も全幅の信頼を置いている訳では無いけれど、どちらかと言えば行き当たりばったりで、何か起これば臨機応変に対応するのが面白いと思ってしまう性分なので、ジャッキー先輩と馬が合うのかもしれない、それは恐らくレイもそうだろう、
「そうだね、じゃあ王子君案内してよ」
「いや、俺は知らないぞ」
王子君の返事を聞いて僕はアントニオの顔を見た、
「俺は階が違うし」
それはあまり関係無いと思うけれどそりゃあそうだよね、
「僕も知らないんだけど・・・」
こんな事ならジャッキー先輩の部屋の扉も壊しておくんだった、
「片っ端からノックしていく訳にはいかないから、ジャッキー先輩がここへ来るまで待つしかないか」
「そうなっちゃうか、ジャッキー先輩は僕の部屋には来た事が有るし、扉が違うから間違えようが無いし、扉が壊されて良い事も有るんだね」
「いや、それは無いと思うぞ」
二人は両手を左右に振りながら否定した、そりゃあそうだよねぇ。