第126話 休みの予定は
「俺からの話しは終わったんだが、何か質問は有るか」
魔力炉の修理の代金をすべてジャッキー先輩が肩代わりしてくれる様なので、僕たちはほとんど呼び出された意味も解らないまま協議は終わってしまった。
そうなると聞きたい事と言えばお金の保管の話しだ、僕の部屋はすでに何回も侵入されているので、夜もおちおち寝ていられなくなってしまいそうなので尋ねてみた、
「休校の間も心配なのですが、僕の部屋はずでに何度も侵入されていますし、大金を頂いても安心して部屋に置いて置けないのですけれど」
「そいつはすまんかったな、俺の管理不行き届きで謝る事しか出来ねぇが。そうだな、父親も来る事だしアトモスへ持って帰って貰うか」
「ああそう言えばそうでしたね、必要な分だけ残して持って帰って貰った方が良いかも知れません」
「今回の仕事の報酬だけじゃ無くて、雷鳥の素材の代金まで持って帰ったらえらい事になるぞ」
「家が新しく建て替わってたりしてな」
借金先輩が冗談を言ってくるが素直に笑えない、とは言え、親孝行だと思えば別に構わないかな。
こうして、ここで、狩竜人に成るための勉強をさせて貰えているのだから。
「ジャッキーは心配無いとして、ジェイミーとレイラはどうする」
「私たちの事はご心配なさらず、すでに手配してありますので」
「おおそうかい、それなら良いんだ。もう質問は無いか、無いなら教室へ戻って良いぞ」
僕たちは顔を見合わせ、質問が無い事を確認してから席を立ち、頭を下げて退室をする事にした。
「休校の間は自由時間だからと言って、あんまりやんちゃはせんでくれよ」
扉へ向かう僕たちの背中に校長がそう言った、多少のやんちゃはしてくれと聞こえてしまうのは僕だけだろうか、廊下に出たところで僕はジャッキー先輩に恐る恐る尋ねた、
「卒業記念狩猟は・・・、雷鳥で終わったんですよね」
ジャッキー先輩は僕の方へ振り返ると何とも言えない笑みを浮かべて、
「どうかなぁ、お前も暇なんだろう」
「父親が来るので挨拶を済ませたら・・・ね」
僕はジャッキー先輩に負けないくらいの笑みを浮かべて答えた、そのやり取りを見ていたジェイミーとレイラは呆れ顔をしていたが、恐らく、多分、絶対に、誘ったら一緒に狩りに着いて来るだろう。
教室へ帰るとすでに半数以上の生徒は寮へ戻り、帰り支度に勤しんでいるようだ。
「おうようやく戻って来たか。シリル、お前はどうするんだ、親父さんが来るみたいだし仕事を手伝ったりするのか」
王子君とアントニオが僕の帰りを待っていたようで、僕が席に着く前に話しかけて来た、
「いや、魔力炉の事は全然わからないし、邪魔になるだけだから手伝ったりはしないよ。王子君とアントニオはどうするんだい」
「それを今話していたところなんだ、街へ行くのも良いけど、それじゃあ面白くないだろう。お前と居れば楽しそうだなって」
「そうそう、どうせまたとんでも無い事考えてるんじゃないかなって」
「で、どうするんだ」
二人同時に詰められてしまった、僕はそんなにとんでもない事してるとは思ってないんだけど、そうまで言われたら期待に応えなきゃ駄目だよねぇ。
「わかった、とりあえずジャッキー先輩と簡単な狩りぐらいは行くと思うから、同行して良いか確認してみるよ」
そんな僕たちのやり取りを、ジェイミーとレイラは聞き耳を立てている様だ、それともう一人誘わなければならない人が居る。
僕はさっと席を立ち友達と談笑しているヘレナの下へ行き、
「ヘレナさん、昨日は御免なさい、僕の配慮が足りなくて。それで、もし良かったらなんだけど休校中の予定が無ければ、僕たちと一緒に行動してくれないかな、もちろん断ってくれても構わないんだけど」
僕の謝罪と提案に顔を真っ赤にしたヘレナは友達とひそひそ話をして、
「よろしくお願いします」
「じゃあ予定が決まったらまた誘うから、よろしく」
そう言って僕が背中を向けると、ヘレナと友達は何やらきゃあきゃあと騒ぎ始めた、何を言っているかは僕の耳をしても全く聞き取る事が出来なかった。