第106話 卒業記念狩猟
二人の力を借りて部屋まで辿り着いたが、僕はそこで力尽きてしまった。
「なあ、流石にこのまま放置する訳にはいかないだろう。濡れた服のままじゃあいくらシリルでも可哀そうだろう」
「それはそうだけど、な、じゃあ俺が上を脱がすからアントニオはズボンを脱がせてくれ」
「ちょっ、ちょっと待て、勝手に決めないでくれ。ここはそうだな・・・じゃんけんで、じゃんけんで決めよう」
「・・・仕方が無いな」
アントニオの悲痛な悲鳴と、王子君の喜ぶ声が聞こえる。
「風呂へ入れるのは危ないよな」
「それは無理だな、お湯で身体だけ拭いて、後は布団にくるんでおけばいいだろう」
「そうだな、俺も早く寝たいし」
「確かに、それじゃあそうするか」
どんどんどん、と部屋の扉をノックでは無く殴っているような音に、泥の様に眠っていた僕も目を覚ました。
ベッドに身体が張り付いているかと錯覚するほど自由に動かない身体を起こし、何とかノックの主に返事をする事が出来た。
「やっぱりまだ寝てたか、準備を済ませたら校長室へ行かないとな」
「校長室・・・って、ああそう言えばそんな事言われてたね」
「呑気なもんだな、まあシリルらしいと言えばらしいけどな」
「一応言っておくけど、僕から提案したんじゃ無いからね、それ以上は言わないけど」
「わかるよ、卒業記念狩猟だろ。とは言っても、あれだけの大物を狩ったのは初めてかも知れないな」
「そんな記念だからって狩りをするなんて事をするのは・・・、レイならやるか」
「恐らく何かしらは記念で狩ってると思うけど、俺もレイナルドさんが何を狩ったかまでは知らないから、俺が知ってる中での大物はあの大きな鳥が一番だな」
「レイの話しだと、ガンナーが拘束をしたら、後は首をはねるだけだって言ってたんだけどね」
「レイナルドさんらしい説明だな、でも、レイナルドさんにとっては簡単な事なんだろう」
「かもね、今は定期的に狩ってるて話しだったから、あ、肉、雷鳥の肉はどうしたんだろう。かなり高価な肉な筈だけど」
「あ、あれが雷鳥か始めて見たわ、あれなら調理場の人達が総出で処理をしてる筈だぞ、食べれなくても魔力は取れるからそのままにしておく事は無い・・・、っておい急げ、時間が無いぞ」
「ああそうだったごめん、大急ぎで着替える・・・って僕裸じゃないか」
「あ、ああ、アントニオと二人で服を脱がせたんだが、服を着せるとこまでは出来なかったんだ」
「そうだったんだ、階段を登った辺りから記憶が無くてさ、服を脱がせてくれて、うん」
「どうした」
「おかしいな、素直にお礼の言葉が出て来ない、どうしてかな、なんでだろう」
「・・・まあ良いよ、いつも世話になってるんだからあれぐらい」
「何か心の片隅に引っかかってるんだよね、って急いで服を着なきゃ」
「急げよ」
僕は急いで服を着て顔を洗って部屋を出た、王子君も僕も時間が無くなってしまったため朝食を食べれなかった。