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第103話 真実の剣

「きゃぁーーーーーーーー」

ジェイミーの悲鳴を掻き消す程の落雷の弾ける轟音が辺りに響き渡る、シリルを雷の咆哮が襲ったのを見ていたジャッキーが絶望に顔を伏せ、自分の軽はずみな行動で後輩を死なせてしまった憤りと、あと僅かしか残っていない自分の命を嘆き地面を殴りつけた、濡れているというよりも水面の様になっている校庭で水飛沫が跳ねる。

「ちくしょう、ちくしょう」

自らの浅はかさに出てくる言葉は後悔の念しか出て来ない、いまだ不自由な身体でせめて前を向いて死のうと視線を移すとシリルはまだそこに立っていた。

ならばせめて俺も立って死のうとジャッキーは全身に力を込めた、その瞬間シリルの顔がこちらを見た。

「なんで僕は生きてるの」

緊張感の無い言葉に全身から力が抜けてジャッキーはその場にへたり込んだ」。

シリルが生きている事に安堵したのはジャッキーだけでは無かった、自分を助けてくれたシリルが死んでしまったのではないかと思っていたジェイミーも思わず笑ってしまう所だった。

何かの偶然か命を拾う事は出来たが、脅威はまだ無くなってはいない。

シリルが死んでいない事に驚いている生物はまだ居た、雷鳥は当然シリルが焼け焦げていると思っていたが、その思惑は外れて困惑していた。

全身に雷を纏って放った一撃を無傷で切り抜けたシリルに対して、少しづつ違和感を感じ始め、それが恐怖の感情だと気付くまでに少しの時間を要してしまった、それが雷鳥にとって致命的な思い違いだったとはその時には気付く余地は無かった。

「どうやら僕の剣が壊れちゃったみたい」

今日一日酷使し続けた剣からボロボロと部品が零れ落ちて来たのを、シリルは壊れたと思ったようだが真相は違った。後ろからシリルの剣を覗き込んだジェイミーは驚きと怒りと喜びが複雑に混ざり合い、微かに見えた生還への道標に咄嗟に手が動いた。

「シリル、驚かないでね」

シリルの剣の柄を握ったジェイミーは勢いよく地面に突き立てた。

「ガチャリ」

音を立てて鞘が割れてシリルの剣の本当の刀身が姿を現した、微かに発光する刀身は雨粒を寄せ付けず、刀身の周りで霧散した雨粒が靄になり光を反射して淡く輝き、靄の中を雷の竜が鈴の音を響かせながら飛び回り始めた。

「これが、僕の剣」

シリルは驚きを隠せなかった、ただそれと同時にこの剣が僕たちの救世主だと気付いていた。

「また来るわ」

ジェイミーはシリルの後ろに隠れ、シリルは剣を構えた、再び二人を雷の咆哮が襲う、しかしただ轟音が響き渡っただけで、二人には何も影響を及ぼす事は無かった。

そしてその一部始終をシリルは瞬きする事無く見ていた、剣が、雷を吸収した。

そうとしか思えなかったが、恐らくはそうなのだろう、雷を吸収するという事は、雷を纏う雷鳥に攻撃が届く、ジャッキー先輩の微振動剣だと攻撃は雷鳥には当たらず、全身で雷攻撃を受けてしまう。

ただ丈夫なだけの剣だと思っていたけれど、丈夫で当たり前だ、これは本物の竜を相手に振るう剣なのだから、剣戟大会で使う様な代物では無く、人間の限界を超えた狩竜人たちが、それでもなお敵わない強大な竜に対峙するための武器なのだから。

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