第10話 僕の席無いから
朝食を済ませて、僕は一か月遅れの初登校をした、学級は1クラスしか無く、三学年合わせて120人ちょっとの生徒しか居ないようだけれど、全寮制なのでこれ以上生徒を増やす事は難しいだろう、そんなところへ推薦で入れて貰えたことは感謝でしかない、しかも高いと言われている授業料も全部持ってくれているのだ、いつかレイやアル船長に恩返しをしたい、その為にもこの学校でしっかりと勉強をして、立派な狩竜人に成らないといけない、と思ってはいるのだが、すでに1か月以上授業を受けられなかったのは残念でしかない。乗っていた船が、嵐に巻き込まれて沈没したのが原因だとしてもだ。
教室に入り自分の席がどこにも無い事に気付き、王子たちと別れて職員室へ向かった。船が沈んだ事が学校へ伝わっていれば、僕の席が無いの仕方が無い事だ、まさか生きて登校してくるとは努々思わないだろう。
「おはようございます、今日から登校する1年のシリルですが」
職員室の扉を開けて大きな声で挨拶をすると、先生と思わしき人たちが一斉にこちらを向き、一人の先生を除いて何やらひそひそと話し始めた、
「おはよう、君が噂のシリル君だね、私は1年の担当のアリスター・アームストロングだ。これから1年よろしく」
「シリル・エアハートです、ひと月遅れですがよろしくお願いします」
僕はぺこりと頭を下げた、するとひそひそ話をしていた先生たちはざわざわとし始め、
「校長から君の事を聞いていてね、いったいどんな野生児が来るのかと噂になっていたんだよ」
僕は、アリスター先生の後ろで、ざわざわしている先生たちに頭を下げ、
「ご期待に応えられずすいませんでした、思いの外快適に過ごせたので、ちょっと寄り道をしていて辿り着くのに時間がかかってしまいました」
僕の言葉を聞いて先生たちの噂話も加速しだした、
「あの森の中が快適だったって・・・」
「新入生で一か月はすごくないか、三年生ならまだしも」
「あのレイナルドの1番弟子らしいから、それぐらいは出来るだろう」
「それでなのか、アルデンサルの紹介状を持ってたってのわ」
大体こんな話しが聞こえて来た、そんな事よりも僕は自分の席を確保したくてここに来たんだ、
「それで、僕の席が教室に無いのですが、どうすれば良いのでしょうか」
「ああ、そうだったな、よし備品室に置いてあるから、一緒に取りに行こうか」
そう言って歩き出したアリスター先生の後に付いて、僕たちは備品室へ向かった。