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2話 借金

眠い

 さて、俺は死んでしまった。と思っていたが、何と目を覚ますとそこはベッドの上だった。そして辺りを見渡すと、冴えない不健康そうな中年の男性が立っていた。ロクに外出もせずにだらだらと引きこもっていそうな風貌である。

「ここは、何処なんだ?」と訊くと、どうやら俺は崖から落っこちて全身骨折をしたが、通りかかった商船に拾われたらしく、そしてこの小さな村で魔法による治療を受け、快復したとの事だった。

 やはりここは現世ではなく、魔法がある世界だったのか、とファンタジー小説の読み過ぎによって頭の中がお花畑になっていた俺は現実を難なく受け入れる。ただ、よく分からん世界なのに日本語が通じるなんて随分と都合がいいんだなあなどと考えながら、


「だがこいつみたいなガリジジイが魔法使えるんなら俺にだってできそうだよな〜」


と言うと男性は呆れたような顔をして、


「なんて失礼な奴なんだ、もし時間を戻せるならお前が運ばれてきた途端に慌てて魔法の杖など持ち出さずスコップと墓石でも用意していた。」


とぼやいた。


「魔法を使うには杖がいるのか、なるほど」


と、一人合点した俺はまずその杖とやらを調達しようと診療所を出ようとすると、


「おい、待て。おい、聞いてんのかカス、おいコラ、ゴミデブ」


と呼び止められた。


「なんだようるせーな」


と、構わず振り切ろうとしたが、中年のジジイによる謎の魔法によって縄が出現し、捕えられた。


「おい、監禁罪!私人逮捕は現行犯以外は原則認められて…」


そう喚くが、老害は言葉を遮って、


「何の対価も無しに治療だけして貰えると思ったか?ボランティアじゃないんだよ、相場に則り、52000ラガー、耳を揃えて払ってもらうぞ。」


と言う。

ラガーってなんだよ、この世界の通貨の単位か。日本円に換算してどのぐらいなんだ。

 その後、契約書に名前を書かされ、腕に変な紋章を付けられ、(借金を完済すると消えるらしい)やっとの思いで外に出ることができた。


「いやあ酷い目にあった、あのゴミいつか刺してやりたい」


そう独りごちて、ふと後ろを振り返ると、墓地があった。病院ではよく人が死ぬからこんな場所にあるのだろう。縁起でもない話だ。

 露店に立ち寄ると、見たこともない果物や野菜が売られていた。瓢箪に似た形状の黄色い物体には、4.5Rと書かれている。


「こんなんじゃ相場分かんねえよ」


と呟いた。だがどうせ一文無しなので知ったところで意味もないと諦める。

 借金はこの際忘れるとして、この世界でどうにか食い扶持を確保しなければならない。死んで、元の世界に帰れる保証はない。だが俺には一つ問題があった。

それは俺がその辺で雇われの身となるには、余りに高貴すぎることだ。何の才能もない低俗な庶民と共に労働するというだけで俺のプライドはガッタガタのボキボキにへし折られ、再起不能となってしまう。


「大体がこんなクソみてえな田舎でまともに生きていけるわけねえだろ、舐めてんのかマジで」


と、怒りのあまり道端の縁石の破片を蹴っ飛ばすと、石は飛ばずに足を挫いてしまった。


「いだだだだだ」


情けない声を出して悶絶した後、ふらつきながら歩き回ると、前を歩いていた人間と衝突してしまった。


「痛えなあ、前見て歩けやコラ」


と声がした方を見上げると、見るからに知能の低そうな目の細いチンピラが睨みつけてくる。


「いや、これは足挫いてて仕方な…」


言い訳を言い終わるまでもなく、俺はビンタを喰らい、腹に蹴りを喰らい、他にも色々と喰らわせられそうになったが、なんとか立ち上がり逃走を図った。


「なんて治安の悪い地域なんだ、行政は何やってるんだ」


と文句を垂れるがはいそうですねと駆け付けてくれる者がいる筈もなく、無駄に直線が多い街並みも相まって、中々振り切れずに追いつかれそうになる。

 と、その時視界に車両のような物が飛び込んできた。見た目からしてバスっぽい。乗って怒られるか分からんけど緊急時ってことで許して貰えばええか、と間髪入れず乗り込んだ。

すると、雨の日の強風のような音と共に、車両が走り出した。後部から覗くとチンピラが何かを喚いてる様子だったので、変顔をしておいた。

 さて、座席に戻ると、乗客らしき人達が数人いる。その内の一人にこの乗り物が初めてであり、どのようなものであるか教えて欲しい、と問うと、どうやら運賃を払うバスのような交通機関で間違いないらしい。風輪と言って、風を操ることのできる訓練された魔法の使い手によって、運営されている。そう言われれば、先頭にはそれらしき人物が目に入った。


「これと、あと水路のお陰でここみたいな僻地でも不自由なく生活が成り立つのよ」


「あー、はいはいなるほど、それでこれは一体どこに向かうんだ?」


俺は関係のない話を適当に聞き流して自分に都合のいい情報だけを尋ねる。まあ俺の癖みたいなものだ。


「城下町よ、ここ最近はみんバトの大会も近くて往来も賑やかなのよ」


城下町か、煌びやかな俺に相応しい、と言うかみんバト?聞き間違いじゃないか?


「みんバトって、四人で戦う、あの、アレ?」


思わずそう尋ねると乗客は、


「あら、この辺の事何も知らないみたいな顔して、知ってるじゃないの。その通りよ」


そう答えた。どうやらこの世界にはみんバトが存在しているらしい。俄な衝撃と共に、風輪は下り坂に入ったのか、カタン、カタンと音を立てる。

眠い

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