序章
照りつける日差し、騒々しい蝉の鳴き声がこだまする7月中旬。彩奈は一人御門高校からの帰路につく。
再生都市常世。数百年前に都市一帯を覆う巨大な大爆発でかつて繁栄を極めた街並みも灰燼とかし、今や土砂とセメント、血と汗で構成された人工島になっている。事故の原因は今に至っても不明とされているが、大規模な実験の失敗、未曽有の戦火による後遺症、はたまた何かしらの儀式によって引き起こされたなど突拍子もないもの憶測されている。
そんないわく付きの町に住む少女 神無彩奈は俯き、誰ぶつける訳でもなく
「なんで私の回りだけこんな不幸な事がおきるの……」
そんな悪態をつく。だがこの零した言葉は誰にも届くことはなく、ただ虚しく響くだけだった。
彼女はなにも元から友人がいないわけでは無い。むしろ普段なら彩奈の回りは多くの友人、知人で囲まれている。普段なら彼女達と他愛のない雑談でもしながら帰宅するが、とてもそんな気分ではなかった。
「こんなこといつまで続くだろう」
彩奈は深いため息を吐き、車も通らない交差点を渡る。
ここ2ヶ月で彼女の周りでは、失踪や事故が多発している。例え自分に直接的な責任はないとは考えているが、不自然なほど彩奈の周りだけで起きていることから、友人とは距離を置こうと彼女は考えた。友達が自分のせいで危険な目に合うことは彩奈には許せなかった。
いつまでも落ち込んだり、周りに気を使わせてはいけないと暗い感情を振り払おうとするが、拭いきれない恐怖心が付きまとう。
解の無い悩みを巡らせ、閑散とした大通りを通る。
普段なら人でにぎわっているが、落ち込む気分に呼応しているのか彩奈がいつも帰宅する時よりも人が少ない。
信号の音響が響く交差点。彼女のアルク向かい側から、男が歩いてくる。
その男の髪は染めているのか黒と銀が混じり、身長は平均的な日本人と変わらない。だが彼だけが閑散とした周囲の世界から浮いている、そう少女の目には映る。
「一人で行動しない方が良い。このままだとあんたも死ぬ事になるぞ」
青い瞳の青年とすれ違ったとき、不意に投げかれられた理解不能な言葉に彩奈は咄嗟に反応できなかった。
「それってどういう――」
頭が彼の言葉を受け止め、その真意を訊ねようと声の主を見ようと長い髪をたなびかせ振り返るが、そこにはただ揺らぐ陽炎があるだけだった。
これがと翡翠彩奈、後の雪の数奇な出会いだった。




