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【後編】竜に見出された僕は竜退治に出かけ~そして俺は殺戮者になる【完結】  作者: 葛原一助
第3話  つぐもの、つがれるもの

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あとはルースを殺すだけだ(2)

「まだ返答がないようだが、どうするかね!?」


 同じように拡声術式で応対するか、あるいは照明弾を使っての応答をしろという事だろうが、俺の結論は変わらない。

 手招きでコンタやマノも呼び寄せると、トゥーリアが会話の口火を切った。


「……ラストー?」

「逃げるぞ」

「どうやって?」

行き先を求めて(クウェア・ディスティ)なら可能だ」

 外をそのまま移動するのは危険極まりないが、この術式なら下準備は必要だが全員まとめて一目に付かないよう移動できる。


「それだけでどうにかなるさね?」

 術式を把握してないトゥーリアが心配になるのも分かる。


「走るくらいの速度になるが、俺達の行先がわからなければどうしようもないだろう」

 もう少し細かい話をするべきだろうが、今はこの術式で全員を避難させる方が先だ。


「我々はどうすれば?」

「起こしたばかりで悪いが術式でもう一度眠ってもらう。その後、深層域に意識を繋げる事で術式範囲を広げて潜る」

 簡潔な答えを求めるマノらしい質問に、俺も必要事項だけ伝えて返す。

 一つ頷いて答えを返してきたマノに対し、追随するようにコンタも何度も頷いた。


「逃げる算段をされているのかな!?」

 やや痺れを切らしたような、怒りの滲んだ声が聞こえてきた。

 まあ、ここまで全く返事をしていない以上、そうなるのも当然だろう。


「……疑問系じゃない段階で、答えを言っているようなものだろう……」

 遠見はどうにかしたが盗聴の可能性は消してない以上、おそらく何らかの手段を用いて聴いているだろう。

 とはいえ、手出ししてこないならこのまま逃げるだけだ。 


「では、もう少し圧を掛けさせてもらおうか!」

 そう言うと、俺たちを遠巻きに囲むようにさらに外装骨格(エクステリオッサ)が立ち上がった。


「追加六機!? 半分連れてきてるじゃないさね!」

 国防の分は連れてきていないとは思ったが、今までも十分危険だったのだが、これ以上は本気でまずい。

 勝てないとは言わないが、少なくとも俺とトゥーリアはともかくコンタとマノが巻き添えで死んでしまう可能性がある。


「……尚更逃げるべきだな……」

 逃げ切れるなら問題ないが、戦う事になるのなら安全な位置まで距離を取る必要はある。

 何はなくとも、まずは逃走すべきだ。


「トゥーリア、術式を頼めるか?」

「あいよ」

 術式の準備は出来ていたのか、短銃を構えて撃つとぱしゃりと水が弾ける音がして、宙に漂う水の玉が二つ生まれた。


「飲みな」

 術式の力で浮いてるが見た目はただの水で、香りはどことなく落ち着くような香りがする。


「美味いンスかね?」

 コンタも匂いが気になったのだろう。鼻をひくつかせてなかなか口につけない。

 一方のマノは時間のない事を理解しているせいか、さっさと口を付けて目を閉じてしまった。


「ただのぬるい水さね。いいからさっさとしな」

 コンタも一口舐めた後、自分なりに納得したのか一気に飲んで床に伏せた。

 コンタを俺が抱え、マノをトゥーリアが抱えると、空から一つ咳払いが飛んできた。


「返事がないなら、そろそろ武力行使とさせてもらおう!」

 時間切れか。

 俺はトゥーリアに手を差し出すと、意図を汲んでくれたのか握り返してくれた。

 すぐさまコンタとマノに意識の紐を繋げておくと、術式を起動した。


「――行き先を求めて(クウェア・ディスティ)

 術式範囲を広げて俺とトゥーリアの輪郭がうっすらと消えていくに合わせ、一気に身体を沈ませると頭上に何かが着弾する音が聞こえてきた。見上げて確認せずとも、音と鼻で感じるところから察するに炸裂する系統の術式だろう。

 やはり居場所はしっかり把握してるな。そう納得すると、俺は完全に地面へと沈んでいった。

 暗い視界も問題かと思い、視覚能力の共有をトゥーリアに繋げておく。

 流石にトゥーリアでも珍しいのか、きょろきょろと周囲を眺めて観察した後、改めて俺の肩を叩いて振り向かせた。


「……面白い術式さねえ」

「そうか? ニグレオスのやり方を術式で再現してみたんだが」

 導師に興味を覚えてもらえたのは光栄だが、黒の術式は外に登録するつもりはない。


「話は後だ。さっさと逃げるぞ」

 潜る前に方向は確認してある。俺がコンタを抱え直して先を歩き出すと、トゥーリアも後ろをついて来た。

 しばらくはお互いに無言でいたが、流石に終始無言は音のない世界のここでは厳しいとも思い、途中から体力に気を配りつつ術式の話くらいは少しずつし始めた。


「地上の様子はわかるんさね?」

「少し浮き上がるか視覚を強化すれば出来るが、今の距離ではさほど意味はないだろう」

「なんでさ?」

「俺たちを囲っていた状況からすると、今歩いた距離ではさほど状況を脱してはいないというだけさ」

 一面雪景色で居場所がわからなくなりやすい白の国の騎士団は、自分の徒歩数からおおよその距離を割り出す術を皆覚えさせられる。それからすると、一番遠くに見えていた《エクステリオッサ》の足元からは出られただろうが、それでも安全圏内に出たとは言えないだろう。


「馬で楽が出来た分の皺寄せが帰りに来たと思えば、まだマシだろう」

「徒歩って考えると歩き続けても五日ってとこかねえ」

 地下――正しくは空間的に地上より下の階層という事なので地下ではないのだが――の利点としては、地形に関係なく進めるというところだろう。

 直線距離として考えればもう少し日程の短縮は出来るはずだが、厳しめに見ておく必要はある。


「術式維持がどこまで保つかはわからんが、半日を超えるのは流石に無理だ。いずれにしろどこかで上がって休憩を取る必要はある」


「おそらくその時が《エクステリオッサ》を再度装着して逃げる、最初で最後の機会だ」

 もちろん、戦う事がなければ一番の理想だが、それを安直に許してくれる赤の国王でもないだろう。

 戦う覚悟を決めつつ、それでも戦わなければいいと願いながら、俺は足を止めずに歩いていった。

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