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第7話

 それから前回と同じようにレオンハルト王子の婚約者となった。


「レオンハルト王子、お初にお目にかかります。フリューゲル公爵が娘ユリアナ・フリューゲルにございます」


「初めましてユリアナ嬢。僕はレオンハルト・ルインセットだ。急に婚約者となったことでこれから大変なこともあるけれども、これからよろしく頼むね。短時間でお互いを知るためにこれからは僕のことをレオと呼んでおくれ。僕はユリアナと呼ばせてもらうよ」 


レオンハルト様はニッコリと美しい微笑みで握手を求めてきた。

前はこの微笑みにドキドキしたのがなんだか悔しい。確かに綺麗な顔立ちはしているけど、この人はナルシストなのよね。それでも最初の1年だけはよかったんだけれども、良かった分の落胆は大きかったわね。


 春になると私たちは学園に入学しAクラスとなり学園での生活が始まった。この国では夜会やお茶会などに子供は参加することはなかったのでほとんどが初対面であり、その中で皆の名前をすらすらと言える私には皆好意的であった。


「我が伯爵領の特産品までご存知とはさすがユリアナ様。王太子妃候補ともなりますと様々な知識をお持ちなのですね」


「そんなことはございません。皆さまの領地には素晴らしい物が沢山ありますので記憶にございますのよ。皆さまよろしくお願いいたしますね」


私はとっておきの笑顔を振りまいた。皆、王族に次ぐ上位貴族に覚えて貰えることは悪い気はしないだろう。

そんな私の姿をレオンハルト様が目を見開いては見ているが気にしない、気にしない。



入学からひと月が経つ頃王太子妃教育が始まった。

学園の授業が終わると迎えの馬車に乗り王宮に向かった。

王宮の一室の豪奢な部屋で王太子妃教育は行われており、ジャポニル帝国でしか織られていない紋様の絨毯、レアノン魔法公国製の不思議な色彩のカーテン、我が国で国宝と呼ばれる職人たちが作った調度品など所狭しと置かれていた。


これみよがしに高級な物を揃え王族の威厳を見せつけるようなこの部屋はいい思い出がないので好きではないが、一応王太子妃教育を受けなければならないので仕方がない。さっさと終わらせてこんな部屋は立ち去るに限る。


「春から王太子妃候補になられたということで、1から進めなければならないと苦慮しておりましたのに公爵家ではここまで教育されていたのですね」

年老いた歴史担当の教師は目を細めて頷いている。


「いえ、先生の著書を何冊か読ませていただき興味が湧き学んだことですの。ですから先生にこうして教えていただけることを知り楽しみで仕方がありませんでした。著書では歴史を新たな観点から分析した〈今、この時歴史は変わる〉をよく読んでおります」

前回は先生に暗記するまで読ませられましたからね。


「まあまあ、私の著書を読んで下さるなんて。あの本は私が半生を掛けて執筆したもので…………」





「王太子妃教育を行う前に6カ国語もマスターしておられるとは素晴らしい!」




「他国のそのような知識まであるとはさすが外務大臣の御息女ですね」


前回の王太子妃教育の記憶もしっかり残っており、以前に一度こなして習得しているので半分ほどの時間で済み、なおかつ教師たちからの評価も良好だった。そして、どんな言葉を教師たちが喜ぶかも知っていたのであの部屋での滞在時間も最低限で済んだ。


当初王太子妃教育の帰りにはレオンハルト様が労いの言葉をかけてくれたが、教師たちからの評価を聞いたであろう頃から声をかけられることはなくなった。きっと概ね良好であった評価がレオンハルト様のちっぽけなプライドを傷つけたのだろう。



私は教師たちから時々出される宿題をこなし、学園での勉強も行い成績をキープしていた。学園での勉強も1度こなしているからそう難しくはない。


「ユリアナ、一緒にランチをしないか?君は婚約者だろう?才女である君でも学内ではそういうポーズも必要だろう?」


「ユリアナ、君がその座を奪った元婚約者であるジョアンナ嬢の弟君のマシューが病気療養中らしい。見舞いに行くので僕に付き添いたまえ」


レオンハルト様はたまに私に声をかけたかと思えば、優しさのかけらもない物言いだった。いつの間にレオンハルト王子の中で婚約者の座を奪った事になっていたのだろうか?化けの皮が剥がれるのが前回より早いようだった。やはりレオンハルト王子はこういう男だ。私は復讐を誓ったことは間違いないと確信したのだった。


一方でミリーは学園の講師になるためにとある男爵家の養女になることが決まった。講師になるには最低でも貴族の身分が必要だからだ。


「お嬢様、両親のいない私が男爵令嬢だなんて!?それにこの家を離れるなんて寂しすぎます!」


「ミリー、私もよ。でも計画のためには仕方がないわ。それに学園の講師になるには手芸の腕前だけではなく、貴族の作法も知らないといけないのよ。ミリーが行くことになった男爵家の人はとてもいい人たちよ。令息たちしかいないから娘が欲しかったようできっと可愛がってくれるわ。それに我が家で主催するお茶会にミリーを招待するからすぐに会えるわよ。マナーのチェックも兼ねるけれどね。ふふふ」


私はミリーを見つめながらいたずらっぽい笑みを浮かべた。


「可愛がってくれるって私をいくつだと思っているのですか?!」  


この家からミリーが居なくなるのは寂しいけれど3年生になった時のためだ。たまに会うことも出来るし、手紙だって書くこともできる。それにこんなことでも無ければ貴族の養女になることなんてないだろう。復讐に巻き込んでおいて言うのも何だけれど、大好きなミリーには幸せになって欲しい。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] マナーのチェックも兼ねるけれどね(笑) [一言] (笑)のようなネット用語はコメディでもなければしらけます。 コメディでも使い方次第でかなりしらけますからね。 きちんと下記のように人…
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