第13話
ある日、学園の廊下を歩いていると
「あら、ユリアナ様!レオンハルト様とご一緒じゃございませんの?リリス様がご一緒では難しいですものねえ。おほほほほ!」
高位令嬢で私になにかと張り合ってくるロジーナ嬢だ。4大公爵に次ぐ名門侯爵家の令嬢で、私がいなければレオンハルト様の婚約者の選び直しで名前が上がっていたことから張り合ってくる原因はおそらくそのことだろう。そしてこの方はちょっとお喋りなご令嬢として知られている。ついにタイミングがきた。私は笑顔になりそうになるのを堪え眉を下げ悲しそうな表情を作った。
「……リリス様ですか。レオンハルト殿下のご寵愛も深く、きっといずれはご側室に・・あ!」
「リリス様がご側室に?!」
「レオンハルト様とリリス様はお似合いですわ。私など名目上の王太子妃候補と言われても仕方がありませんもの。いずれそうなることは誰もが思うことでしょう」
私は力なく笑った。
「誰がそんなことを!レオンハルト様たちですわね。この際だから言わせていただきますわ!ユリアナ様はやられっぱなしでいいのですか?どう見てもリリス様が犯人じゃありませんか。何も言わないユリアナ様に私は憤りを感じていましたの。だから、ちょっと煽るような言い方をしておりました・・申し訳ございません」
ロジーナ嬢・・そんな風に思っていたのね。
なんか・・騙していてこちらが申し訳ない。ロジーナ嬢はいい子だった。
「いえ、ロジーナ様は悪くありません。リリス様のことはレオンハルト様のお心を繋ぎ止められなかった私が悪いのです。リリス様のように人前で腕を組んだり、常に一緒にいることは難しいものですわ。やられっぱなしとはいいますが、誰が私の物を持ち出したかなどはっきりと分かっている訳ではありません。確証のないことでことを荒立てる訳にはいきませんもの」
「それでもユリアナ様が廊下をずぶ濡れで歩いているのを見たのは1度ではありませんよ!レオンハルト様に呼び出されたのも皆知っておりますのに!あんな目に遭った上にご結婚する前にご側室候補が幅を利かせているなんて!!」
「それでもレオンハルト様のご意向は尊重せねばなりませんから・・・」
ここで私は涙を流す。
涙を自分のタイミングで流せるよう練習したかいがあります。
ロジーナ嬢との話は廊下でしたものだから聞いていた人はたくさんいた。
王子の婚約者である才色兼備の公爵令嬢。それが王子と仲睦まじい男爵令嬢からの嫌がらせを受けても健気に耐えている。
男爵令嬢と王子から噴水に突き飛ばされたらしい。
噴水では二人に罵られたらしい。
婚約者でいたければ大人しくしろと二人に脅されてるらしい。
噂は尾ひれがついて広がっていく。
学園中から白い目で見られているレオンハルト王子とリリスに心の中でニヤニヤが止まらない。王太子妃教育を受けてなかったら吹き出して笑ってるところだわ。
あの人たちが考えた〈ユリアナ嬢の罪の一覧〉を参考にして、する側ではなくされる側に先回りしてみたらうまく行ったようね。
これはこれでお望みの悪・役・令・嬢・でしょう?




