3.四天王
前回のあらすじ
魔王やろうぜ!!!!!
詳細は……おや、誰か来たようだ。
「入りまーす」
玉座の間に四天王が足を踏み入れる。
『豪炎』バーン。浅黒い肌の少年。さっきから軽い口調で話しているのはこいつだ。
『毒蛇』ミア。ラミアの女。長い黒髪で、胸がでかい。基本的に二本足で歩く。
『賢者』ライト。頭脳担当のおにいさん。2本の角がある戦闘力もわりとある。
『癒し枠』ぷわわ。ファンシーな女の子。今日はツインテールか。かわいいな。
やはり四天王が揃うと迫力がある。
だが、圧倒されている場合ではない。
冷静に……堂々と……。
隣に目をやると、少女(魔王)が固まっていた。緊張だろうか。
ここは魔王として何か返事をしなければ不自然だ。
少女を肘で軽く突く。
少女はハッとしたように顔を上げた。自分が返事をするべきだと気がついたのだろう。
大きく深呼吸をした。
頼むぞ……!
「あ、あたs……我は魔王だ……ぞ?」
そっと目を閉じる。
……あぁ。
せめて、楽に死にたいなぁ。
「そんなこと知ってますよ、何言ってるんすか」
バレて……いない!?
少女がどうだと言わんばかりに視線を送る。いやお前の演技力は皆無だったよ。
いや待て、バーンは頭が弱いところがある。
ミアは無口な方だから多分大丈夫。
この状況で最も警戒すべきはライトだ。
ライトは…
「……! ……!?」
固まってる。そりゃそうだよな。普通思考が追いつかないよな。
「っていうか、あのー……」
なんとか、なった……? とりあえず弁明をするチャンスはありそうだ。
「なんで魔王様2人いるんすか? 片方死んでるし」
……さて、ここからどうしようか。
__________
ここからは俺もサポートできる。というか極力少女に喋らせたくない。
「そちらの床にあるのは……魔王様の抜け殻でございます。魔王様が脱皮なされたのです。」
「脱皮!?」「は!?」
ミアとライトがめちゃくちゃ驚いてる。
……いや我ながら苦しいな。なんだ脱皮って。
「魔王様が脱皮するなんて聞いた事ないっすけど」
そりゃそうだよな。俺も今初めて聞いた。
「数万年に1度、脱皮なさるそうです。辺りの血はその時のものだそうです。」
「抜け殻っぽくないっすねー。中身もありそうですし。なんかこう、今にも動き出しそうな……」
「ま、魔王様の抜け殻はかなり特殊なのd 「っていうかさあ!」
バーンがこちらを睨みつける。なんだ、バレたか!?
「おまえ誰だよ。オレは魔王様に聞いてるんだけど?」
まずい、警戒を解かなければ……!
「私は……」
「だからおまえには聞いてないって」
ぴしゃり、と。話す機会を失ってしまった。これでは嘘のつきようがない……!
少女、どうにか……あぁ、おろおろしてる。
「魔王様、こいつ誰っすか?」
頼む、まだフォローできる嘘を……!
「この人は……わ、我の相談役だ。脱皮のことも事実だ」
相談役!悪くない。ナイスだ少女。
「相談、役……!?」
ライトが頭を抱えよろめく。
「ぼ、僕では不満だと……?」
かなりのショックを受けているようだ。なんだか知らんがよし。できればお前は会話に参加しないでくれ。
「脱皮……」
それはそうと、さっきからミアが魔王の抜け殻(瀕死体)をじっと見ているんだが……。怪しまれている……?
「相談役、っすか……。名前は?」
「……」
そういえばまだ名乗っていなかった。名前なんて適当でいい、さっさと答えてくれ!
「……ちゅんのすけ」
俺は今からちゅんのすけだ。以後よろしく。
と、バーンの後ろからぷわわが近づいてくる。
「ちゅんのすけ! かわいいなまえだね!」
お前がかわいい。ぷわわは手を差し出してくる。
「わたし、ぷわわ! よろしくね!」
ぷわわは礼儀正しいなぁ……。
「私はちゅんのすけ、魔王様に相談役を任されました。よろしくお願いします」
差し出された手を取る。やわらかい……。
「おいぷわわ、あんまり寄るなよ」
バーンが睨みつけてくる。
「やー! ばーんがこわいー!」
ぷわわが俺の後ろに隠れる。かわいいなおい。
ともかく、空気が少し和んだか。これなら俺の発言も許してもらえるだろう。
ここまで、驚くほど順調に話が進んでいる。
残る問題は……
「まぁいいや。魔王様、そろそろアレ出してくださいよ!」
俺が、これがなんのための集会か知らないことか。