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2.運命の出会い

前回のあらすじ

少女が魔王を殴り倒す


 玉座の間で、魔王が血を吐いて倒れていた。


 赤いカーペットが僅かに変色している。


 その傍には、ボロボロのローブと杖の少女が座りこんでいた。


 一応、状況の確認をしよう。


「お嬢ちゃん、なにやってんの……?」


 呼びかけられて顔を上げた少女。その頬は涙で濡れていた。


「ど、どうした! 大丈夫か!?」


 慌てる俺を見て、少女は涙を拭き立ち上がる。


「大丈夫、じゃないけど……ケガはしてないよ」

「じゃあ、無傷で魔王を……!?」


 こんな少女が、あの魔王を!?


「まぁ、そうなるね……」


 照れたように頬をかく少女。信じられない……!


「っていうか! あなたはどちら様? 魔王の手下?」


 訝しげな目でこちらを見る少女。あ、これ返答間違ったら殺される?


「いや違うよ全然! 俺はその……ただの人間! なんだけど、ちょっと道に迷っちゃって! 大きい声が聞こえたから何事かと思って!」


 とっさに嘘をつく。無理があったか……?

 少女は――目を伏せ、顔を赤らめている。なんで?


「そんなに……声大きかったか……」


 消え入りそうな声で呟いた。

 そこか。まぁ、嘘のほうはバレてないらしいな。ほっと胸を撫で下ろす。


「じゃ、じゃああたしはもう行くから! さよなら!」


 少女は逃げるように立ち去ろうとする。


「ちょっと待ってくれ!!!」


 まずい。こんな少女に魔王が倒されたなんて知られたら……。


 今までの努力は水の泡。

 国民の不満は大爆発。

 諸外国からは笑いもの……。


「えっ、な、なに……?」


 この少女を帰してはならない。絶対に。

 しかし、口封じに殺すにしても、魔王を倒した人間に勝てるとは思えない。


「えっと、その……」


 言葉が続かない。どうすれば……!


 と、足元から声がした。


「おのれ小娘、やるではないか……カハッ」


 よかった魔王生きてた!まだなんとかなる!!


「あれ、まだ生きてたか」


 チカが不思議そうに杖を振りかぶる。


「バッカとどめ刺しに行くな! って力強ぉ!?」


 羽交い締めにしようとするが一瞬で振りほどかれた。腕が痛い。


「びっくりした……。って、ダメなの? なんで?」


 少女が不思議そうに俺を見る。


「なんでって――」


 魔王は勇者に討伐してもらわないといけないから。

 そんなこと言っても納得するはずがない。


 少女は帰せない。しかも、魔王を殺させてはならない。

 どうすれば……。


「ねぇ、なんでよ」


 早く、早くなにか理由を……!


「実はこの魔王すっごいバカだっただけで今までの悪事に悪気はなかったんだよ! 言ってやれば魔王も反省するって!!」

「この我が反省など……」

「するって!!!」


 魔王の声は小さかった。瀕死だしな。

 どうだ!?


「…………」


 魔王をじっと見つめる少女。


 くっ、これじゃ理由が弱いか?

 理由、理由は……。


「あと、あの……国民! そう! いきなり魔王いなくなっちゃったら魔王国の国民も困っちゃうから!!」

「それは、そうかもだけど……」


 あと一押し。何かこう、少女を帰さず、魔王を殺さず、おまけに魔王軍の幹部や国民に魔王が負けたことが知られないような名案は……!


 ――そのひらめきは、まるで天啓のようだった。


「そうだ!! 魔王やろうよ! こいつの代わりに!」

「……は?」


 驚いてる。魔王も驚いてる。俺だって驚いてる。


 魔王をやらせれば少女は帰らない。

 戦闘力は言うまでもない。

 見た目は俺の魔法でどうとでもなる。

 日頃の行動は魔王から聞き出せば真似できる。

 その本物の魔王は……これだけ弱ってれば一時的な封印ぐらいできるだろ!


「きみが魔王のお手本をやってこいつに見せてやるの! そうすればこいつも正しいやり方がわかるよね!!」


 早口でまくし立てる。大切なのは自信と勢いだ。


「あたしが、魔王……女だから魔女? 魔女王?」


 反応は悪くない。あるよな権力に憧れる年頃。


「でもあたし王様の仕事とかわかんないし……」

「俺がわかる! 全力でサポートする!!」


 わかるわけがない。俺はただの諜報員だぞ?


「そ、そお……?」


 よし、いける!いけるぞ!

 最後の一押し……!


 ――扉の外から話し声が近づいてきた。


「静かに」「むぐ」


 とっさに少女の口を塞ぐ。


 入る時に扉は閉めておいた。お互い姿は見えない。話し声はまだこちらの状況には気づいていない。

 話し声は……4人。


「チッ……」


 今日、この時間。4人。間違いない。

 四天王だ。


 ____________________


 事前に情報は掴んでいた。

 四天王とは幹部の中から選ばれた4人の忠実な臣下だ。当然実力も高い。


 毎週金曜の夜、玉座の間に四天王が集まり、魔王と集会を開いている。

 結界のせいで、その内容まではわからなかったが……。


 ともかく、扉の外にいるのは四天王だ。

 これ以上事態を広げるわけにはいかない……!

 クソッ、もう少し時間が欲しかった。


「なぁ頼む、俺に協力してくれ」


 少女へと、小声で早く、しっかりと伝わるように。


「今からきみに魔法をかける。そこに倒れてる魔王と同じ姿になる魔法だ。魔王として振る舞ってほしい」


 少女は口を塞がれたまま頷く。


「魔王様ー、四天王一同到着しましたー」


 扉の外から声がする。急がなければ。


「声も魔法でどうにかする。だがこの魔法は1人が限度なんだ。俺は人間のまま。なんとかフォローしてくれよ、名女優」


 塞いでいた手を外す。


「わ、わかった……」


 混乱しているのは明らか。だがもう時間が無い。


「魔王様ー、どうしましたー?」


 急いで魔法をかける。


光彩魔法(ミラージュ)調律魔法(チューン)


 少女の姿が歪み、魔王のものへと変わる。


「声出してみろ。小さくな」

「え?あ、あー」


 声も魔王のそれへと変わった。


「す、すごい……!」


 少女(魔王)はとても楽しそうに声を出し、自分の手足を眺めている。


「あとは……」


 魔王(本物)。

 床に横たわる魔王を見る。

 動かないものに対してなら簡易的な魔法で十分だ。早く隠さないと……!


光彩魔法(ミラージュ)……あれ?」


 魔法が発動しない。いや、掻き消された?


「そのような低級魔法が我に通じると思ったか?」


 さすがは魔王様だ。わりと高度なやつだと思ってたんだが……。


 となると物理的に隠すしかない。

 隠せる場所は、玉座の裏か……横の壁に扉がある!

 あそこまで運ぶことができれば……!


 ――と、魔王が大きく息を吸った。

 まずい!


調律魔法(チューン)!」


 魔王に変なことを言わせるわけにはいかない!


「我が四天王!来いっ!!」


 魔王の声が響いた。くそ、やはり魔王に俺の魔法は効かないのか!?


「黙らせろ!」

「そしてこやつr 「ていっ」


 少女の恐ろしく早い手刀。

 ナイスだ。魔王は気絶して……死んではいないよな?


光彩魔法(ミラージュ)……ダメか」


 改めてかけてみるが、やはりかき消された。

 気絶していてもダメなのか。


「入りまーす」


 もう覚悟を決めるしかないらしい。

 国のため。プロジェクトのため。

 ……そして何より俺の命のため。


 なんとしてもこの状況を乗り切るのだ……!


毎日投稿ってすごいですよね。

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