1.ことの終わり
俺は魔王城へと潜入していた。
ヒトノ王国の諜報員として何度も仕事をこなしてきたが、こんなにデカい仕事は始めてだった。
この魔王討伐は、国をあげた一大プロジェクトだ。
俺が失敗しても代わりはいるだろうが……。
基本的に失敗は死を意味する。当然プレッシャーはあった。
そんな中だが、相手の兵士の数、城の見取り図、幹部の弱点など使えそうな情報はだいたい掴めた。
これだけ持ち帰れば十分な成果だと言われるだろう。だけど。
あと、一つだけ。
魔王。あいつだけはダメだった。隙が一切ない。
気配遮断はバレそうになるし、自室や玉座の間に結界張ってるし、誰も弱点知らないしそもそも弱点無さげだし。
毒物対策か知らないけど自炊してるし、たまに店開くし。
魔王城城下町ガイドブックの『これ食え!ランキング』で4位だったし。
ともかく、ヤツの情報無しでは帰れない。どうにか情報を得なければ……。
――と、話し声が聞こえた。
隠密魔法で気配遮断をし、声の方向へ向かう。盗み聞きは諜報の基本だ。
声は半開きの扉から漏れていた。
玉座の間の。
……おかしい。 玉座の間の結界は声なんて漏らさない。
なんか結界破れてない? ってかなんで半開き? ……あと、これ魔王の声じゃない?
おそるおそる中をのぞ
「えええええええええいさあああああ!!!!!!!」
魔王が撲殺されてた。少女に。
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この魔王討伐は、国をあげた一大プロジェクトだ。絶対に失敗できない。
この計画が始まって早10余年。
かけた資金は億千万、不満の声は数知れず。
しかし、走り出したら止まれないかった。
この魔王討伐は、国をあげた一大プロジェクトだ。
討伐さえできれば、国民の不満もなくなる。
諸外国からは拍手喝采、みんなハッピー、大団円!
――討伐さえできれば。
ヒトノ王国の勇者が、計画通り討伐さえできれば。
この魔王討伐は、国をあげた一大プロジェクトだ。
初投稿でした。
内容に齟齬があったら伏線ということにしておいてください。