表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

疎まれ姫と怪物辺境伯(短編版)

作者: 朝霧 陽月

とびらの様『あらすじだけ』企画参加作品で、長編想定作品のダイジェスト版となっており普通の短編作品とは異なります。

ご了承くださいませ。

 若き王の異母兄妹で、その存在を疎んじられているレリチアは、王女であるにも関わらず城外れの塔に幽閉されて暮らしていた。

 母を亡くして以来ひとりぼっちの彼女だったが、母の教えである『どんな境遇であっても明るく笑顔を絶やさないように、前向きに生きていればいつか道は開ける』という言葉を信じて、日々前向きに生きていた。

 そんな彼女に突然転機が訪れる。

 それは長年険悪な関係である、隣国の帝国と友好関係を結ぶために、帝国の辺境伯と王女のレリチアが政略結婚することになったのだ。


 そしてその辺境伯というのが、若くして戦場で数々の武勇をあげていることと、常に顔を覆う仮面を付けていることで悪い噂の絶えない不気味な人物、ブラッド・バルジークであった。

 国の者たちは疎まれた姫の結婚相手にはピッタリだと、嘲笑と共に彼女を送り出したが、レリチア自身は自分の目で見て相手を判断しようと考えていたため、一切悲観などしていなかった。


 そうしてバルジーク家の城にやってきた彼女を待っていたのは、噂通りの仮面をしているものの、噂と違い紳士的なバルジーク辺境伯の姿だった。

「ようこそいらっしゃいましたレリチア姫、心の底からアナタを歓迎しましょう」


 その言葉通り、国に居た頃より格段にレリチアの扱いはよく、居心地もいい。

 しかしその一方で、ブラッドの言動には距離があり、食事を含めほぼ顔を合わせないのが気掛かりだった。


 政略結婚ではあるものの、できれば彼との関係性を良くしたいと考えたレリチア姫は、彼をどうにか捕まえてお茶に誘う。

 戸惑いつつも、誘いを受けてくれたブラッドに喜んで御礼を述べたレリチアは、彼に楽しんで貰えるように頑張ってその準備をした。


 そうして当日に現れたブラッドは、いつもの仮面ではなく、顔の半分だけを隠す仮面つけており、レリチアは初めて彼の素顔を見た。

 それは噂とは違い、かなり整った部類ものであった。

 レリチアがそれを素直に褒めると、彼は戸惑いつつもその褒め言葉を受け取った。

 しばらく会話をしたところでブラッドは「自分といることが不快ではないのか」と聞いてきた。

 それにレリチアは「むしろブラッド様のことを色々知れて嬉しいです」と屈託なく答えると、ブラッドはしばらく黙り込んだ後に一緒に食事を取ることを提案してきて、レリチアは喜んでそれを了承した。


 それ以来、食事の他にもレリチアとブラッドが共に凄す時間が少しづつ増えていき、二人の距離も段々と近づいていった。


 すっかりブラッドとも打ち解けてきた、レリチアは彼の誕生日も近いこともあり、彼へこっそりと特別なプレゼントを用意しようと考えた。

 そしてプレゼントの準備のために、お忍びで街にやってきたレリチアだったが、連れ去られる子供を目撃してしまい、それを助けようとしたところで自分が捕まってしまう。


 レリチアに危険が迫ったところで、ブラッドがそこへ乗り込んできて彼女を救い出す。

 街で偶然、レリチアの護衛が彼女を見失って慌てているところを発見し、事情を聞いてレリチアを探していたのだった。

 ブラッドは感情に任せて自分がどれだけレリチアを心配していたか語った彼は最後に「二度とこんなことをしないと誓って欲しい」と言って、レリチアに約束をさせた。

 この出来事もあって自分がどれほどレリチアを愛しているか自覚したブラッドは、彼女に自分の全てを話すことを決意する。


 そして後日、二人きりで話がしたいとレリチアのことを呼び出した。

 そこでブラッドが語ったのは、まず自分は先代の正妻の子供ではなく、夫人にその存在を疎まれていた事実。それを知らずに彼は夫人に懐いていたが、あるとき我慢が限界を迎えた彼女によって顔の半分を火傷させられ、一生消えない醜い火傷の痕が残ってしまった。それ以降、火傷を隠すために仮面を常に付けるようになり、そのせいで人からは気味悪がられた。そのため社交界からは遠ざかり、逆に力さえあれば容姿に文句を付けられない戦地に進んで身を置くようになったこと。

 そうして武勲を上げていくうちに、皇帝からの信を得た彼にレリチアの祖国との政略結婚の話が持ち上がり、そのおりに自分と同じように身内から疎まれ虐げられている姫君がいるという話を知って、同族意識から助けるつもりで自ら結婚を提案ということ。


「その結果、一番救われたのは僕自身でしたがね」誰も信じられなくなり、いつの間にか他人を遠ざけていた自分が、再び人といる楽しさを思い出せたのはレリチアのお陰だと彼は語った。


 レリチアは彼が全てを話してくれたことに御礼をいいつつ、彼に仮面を外して欲しいと頼む。そして仮面を外した彼の顔にそっと手を伸ばしながら「これからは私もその傷を共に背負います」と告げた。


 そこから二人は初めてキスをして、その後ブラッドが改めて愛告白とプロポーズをし、レリチアはそれを受け入れ、二人は本当の意味で伴侶となり幸せになったという。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] よく出来た、綺麗な恋愛物だと思います。流れに矛盾点はなく、キャラクターの性格、言動にも欠陥らしいものもありません。(城外れと言う言葉がちょっと引っかかりましたが)あらすじでわかりにくいとこ…
[良い点] 静かに感動させてくれる作品でした。 似たような心の傷を持った者同士が、少しずつ、怯えながらも距離をつめていく過程がたまりません。 相手の傷も含めて受け入れる包容力が最高です。 この2人には…
[良い点] すごく好きな作品です! レリチアにもブラッドにも辛い過去があって、それをお互いが埋めていく過程が心暖まります。 レリチアが前向きなのも好感度が高いです! ピンチにヒーローに救出されるとい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ