後輩の作ってきた乙女ゲームが独特すぎる件
9/6 文法がおかしかったので修正しました。
作者は乙女ゲームをプレイしたことがありません。なので、ズレた表現をしてしまう可能性があります。そこを承知した上で読んでください。まあ!なろうの乙女ゲームものはいっぱい読んできましたけどね!調子乗ってすいません。それではどうぞ。
「先輩、乙女ゲーって知ってます?」
「まあ、名前くらいはな、詳しくは知らないが。」
ここはゲーム部、ゲームをする部活だ。ゲームをするのは当たり前か。逆に、ゲーム部と名乗っておいてゲームをしない部活があるなら聞いてみたい。
「私、ちょっと作ってみたんですけど、プレイしてくれません?」
「まあ、専門的な意見は出せないが、それでもいいならプレイしよう。」
さっきから話してくるのは、一年生の田中理恵、成績優秀、容姿端麗、運動神経も抜群だ。おまけに絵も描けるし、文も書けるし、ゲームも上手い。神に愛された人がいるなら理恵を置いて他にはいないだろう。まあ、相当抜けてるところがあるのだが、そこも他人にはない個性と言えるだろう。しかし、なんでゲーム部なんかに入っているのだろうか、もしかして俺に惚れてる?なんて勘違いしそうになるじゃないか。
……勘違いじゃないことを祈りたい。
「やったー! じゃあ説明しますね!」
「頼む。」
「今回は大作を作ってきましたよ!」
「おお、すごい自信だな、どんなストーリーなんだ? ネタバレしない程度に説明してほしい。」
「そうですね、校内放送を鳴らすあの機械と、教室に付いている時計が、主人公つまりプレイヤーですね、を奪い合うというストーリーです!! 他にはないストーリーだと思いますよ〜。」
そんなストーリー書くやつが他にいてたまるか。
「な、なぁ、それは擬人化させてあるのか?」
「ふふふ、キャラデザ気になっちゃいます?」
いや、気になるというか。
…………まぁ、気にはなってるな。
「それは、プレイしてからのお楽しみ! さあさあどうぞ!」
進められるままにPCを起動する。お、それらしいソフトを見つけた。そのソフトを指差して問う。
「これを起動すればいいのか?」
「はい! それであってます!!」
起動する。すると、美しい桜の下で校内放送の機械と教室についている時計からスラッとした体が生えた男が立っているメニュー画面に飛ばされた。制服のデザインとか桜とかはめちゃくちゃいいんだけどなぁ……
「ふふん! どうですか!」
「あ、ああ、なかなかいいんじゃないか?」
「じゃあそこの、スタートボタンを押して開始してください!」
スタートと書かれたボタンをクリックする。すると桜並木の絵が映された。下手な絵師より全然うまい風景に息を飲む。
名前を選択してね!
名前か……取り敢えずパッと浮かんだ名前を打っておこう。リエっと。
「ちょっ!?先輩!?」
抗議じみたリエ、じゃなくて理恵の声も無視してゲームはスタートする。
♪タッタッタッタッ
今日は入学式! 新しい生活が始まると思うとワクワクするなっ! 高校はどんなところなんだろ? 楽しみだな〜。
……思いっきり理恵の声じゃないか。まあ、予想はしてたけど。アフレコ上手いな。
♪タッタッタッタッ……
足音が遠ざかっていく音がした。通学でイベントは発生しないのだろうか。
絵が変わった、教室の絵だ。これも上手く描かれている。何もおかしいところはない。
……校内放送の機械と壁に掛かっている時計から体が生えていることを除けばだが。
お、選択肢だ。
1 「君たちはなんで壁に吊り下げられてるの?」
2 無視する。
……2で。
無視する。
すると校内放送と時計から体がなくなっていく。
ーバッドエンドー
「あーあ、先輩やっちゃいましたね。彼らは、そこで声をかけてもらえないと、人間としての生を諦めてしまうんですよ。」
あのキャラデザを見る限り、人間として生を送るのは絶望的だと思うが。
「ほら! もう一回やり直してください!」
今度は1を選択した、果たしてどうなるのやら。
リエ「君たちはなんで壁に吊り下げられてるの?」
時計「カチッカチッ!」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
俺たちは俺たちの仕事をするだけだ、気にしないでくれ。
キーンコーンカーンコーン」
1 「分かった! 気にしないでおくね!」
2 「もっとお喋りしようよ!」
……ツッコミどころが多いな。まず、時計にも喋らせてあげろよ。それから、校内放送はいちいちチャイムを鳴らしてからでないと喋れないとか不便すぎるだろう。最後にだが、気にするなって、校内放送と時計から体が生えてるのは、絶対気になるだろう。むしろ他のクラスメイトは何で気にならなかったんだ。あぁ、関わりたくなかったのか。分かるね、その気持ち。
選択肢はどちらを選ぼうか。まあ、さっきの傾向からすると、1を選ぶとバッドエンドで終わるだろう。ここは2を選択しよう。
リエ「もっとお喋りしようよ!」
時計「カチッカチッカチッ」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
……仕方ないな、よっ、と。
キーンコーンカーンコーン」
時計と校内放送がスタイリッシュな降り方をしているアニメーションが付いていた。
「先輩! 分かってきましたね! このままどんどん進めていっちゃってください!!」
あれから三十分程プレイして、ついに最後の選択肢間際までたどり着いた。ちなみに、このゲームに好感度はなかった。選択肢をミスると彼らは容赦なく死んでいった。これを本当に乙女ゲーと呼んでいいのだろうか。不安になってきた。それと、校内放送のキーンコーンカーンコーンにはもう慣れた。
「さあ、先輩! そこからの選択肢で、ハッピーエンドとバッドエンドに分岐しますからね! ちゃんと考えてくださいよ! あと、ここから全部アニメーションついてるんで、しっかり見てくださいね! 頑張って描いたんですから!」
選択肢は二人から屋上で同時にデートに誘われたシチュエーションで出てきた。
1 校内放送を選ぶ
2 時計を選ぶ
どちらにしようか……正直どっちでもいい。文章も、背景もいいんだけど、いかんせん攻略対象があの二人ではなぁ……二人に惹かれていく主人公に全く感情移入できなかった。というか、これ選ばれなかった方は今までの経験上死ぬだろ。
取り敢えず1から選んでみよう。
リエ「私は……校内放送くんとデートに行きたいっ!」
時計「カチッ……カチッ…………カ……チ……」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
そうか、俺を選んでくれて良かったよ。
キーンコーンカーンコーン」
時計「カチッ……」
時計くんは教室に帰って行った。
おぉ、時計死ななかった!最後だから、サービスしてくれたのかもしれない。
校内放送「キーンコーンカーンコーン
デート、どこにするかきめてくれ。
キーンコーンカーンコーン」
1 プール
2 学校
学校って何だよ。少なくともデートで行くところじゃないだろ。
「先輩、どっちを選びますか〜?重要ですよ!」
取り敢えず、セーブしてから考えよう。そうだな、まあ学校はデートで行く場所じゃないからな、1を選択しよう。
校内放送「キーンコーンカーンコーン
待ってろ! 今助ける!!
キーンコーンカーンコーン」
リエ「校内放送くん! 来ちゃ駄目!! 校内放送くんがプールに浸かると、ショートしちゃう!!」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
そんなの関係あるか! お前、溺れてるじゃねーか!
キーンコーンカー」
♪ザブンッ!
♪ビリビリッ!
♪キーンコーンカーンコーンッ!!
理恵「校内放送……くん……」
校内放送「キーンコーンカカカコンン
プハッ、ぐぅぅっ! なんとか引き上げられたが……! 息をしてねぇ!!
キキキキキキキ」
校内放送「キコキコカンンン
最初で最後のキスになりそうだな……!!
キカキカンンキカキカキカ」
薄れゆく意識の中で、口元に暖かくて、柔らかいものがつけられたのが分かった。
校内……放送く……ん…………
リエ「うっん、はっ! 校内放送くん? 校内放送くん!!」
校内放送くんからは壊れたようなチャイムしか聞こえなかった。
♪キキカキキキキンンココキキキキカキキカカカ
理恵「ごめんね、校内放送くん……! ごめんね……!!」
その声は届かなかった……
ーバッドエンドー
えぇぇぇ、今まででダントツで一番かっこいい死に方したけど……しかも全部アニメーション付きだったけど……めちゃくちゃ力入れてるの分かったけど…………
「グスッ、今まで声を届けていた校内放送くんに、校内放送君が一番聞きたかった声が届かないなんて、悲しすぎますよねぇ……。」
感情移入できない……俺が冷めたやつなのだろうか?自分で書いたくせに、ここまで感情移入している理恵を見ていると心配になってきた。
セーブまで戻って、次は2を選択してみよう。
今度は2の学校を選択した。どのような結果になるのだろうか。学校でデートってロクな結果にならないと思うんだけどなぁ……
夕暮れが幻想的な教室の風景だ。
校内放送「キーンコーンカーンコーン
お前が初めてだったんだよ、俺のチャイムを認めてくれたのはッ……綺麗な音階だね、なんて言ってくれたのはッッ……お前が初めてだったんだよッ!
キーンコーンカーンコーン」
リエ「校内放送くん…」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
お前が好きだッ! お前のためなら何回だってチャイムを鳴らしてやれる!! 何回だって呼び出してやれる!!!
キーンコーンカーンコーン」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
だから! 俺と付き合ってくれ!!
キーンコーンカーンコーン」
リエ「私も大好きだよっ!校内放送くん!」
二人はお互いの愛を確かめ合うように、キスをした。
♪キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
校庭ではチャイムが鳴り響いていた…。
ーハッピーエンドー
なるほど、まあ、こっちは学校でデート何でことをした割には妥当な終わり方だな。アニメーションもバッチリだった。あれ?でも待てよ。放課後学校で2時間ほどデートした後なってるチャイムってこれ下校のチャイムじゃないか?もしそうなら早く帰れよ。
「よがっだでずねぇぇ……。」
お前はちょっと感情移入しすぎだろ。相手、校内放送だぞ。
「せんぱぁい、時計くんのエンドも見てあげてくださいぃぃ……。」
「分かったから、ほら、涙と鼻水拭け。」
ポケットティッシュを渡す。
「ありがとうございますぅぅ。」
1 校内放送を選ぶ
2 時計を選ぶ
ここまで戻ってきた。今度は2を選ぼう。
リエ「私は……時計くんとデートに行きたいっ!」
時計「カチカチカチカチカチ!」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
全校生徒の皆様ー、リエさんは私をこっぴどく振って時計を選びましたー、くりかえします。全校生徒の皆様ー、リエさんはこっぴどく私を振って時計を選びましたー。
キーンコーンカーンコーン」
時計「カチカチッ!」
校内放送は教室に帰って行った。
校内放送、器ちっっさ! あの野郎全校生徒にこっぴどく振られたとかを呼びかけやがったぞ!
「先輩、校内放送くんの気持ちも分かってあげてくださいよ〜、振られた直後に時計くんにあんなに勝ち勝ち言われたら、キレちゃいますよぉ。」
えっ、時計くんのカチカチって勝ちって言う勝利宣言だったの? それなら時計くん最低だな、めちゃくちゃ煽ってんじゃん。
「時計くん最低だな。」
「あっ、違います。時計くんは悪気はないんです。でも、カチカチなってるので校内放送くんは勘違いしちゃったんですね。悲しい勘違いです。」
なるほどね?
時計「カチカチカチカチ?」
1 学校
2 時の狭間
なるほど。どっちも行きたくないっ! 時の狭間ってなんだよ。永遠に彷徨いそうな雰囲気がプンプンしてるんですけど。消去法で1を……いやでも、さっきはキワモノの学校がハッピーエンドだったからなぁ……キワモノを選んだ方がハッピーエンドになるかもなぁ……あと、時の狭間が気になる。2を選択しよう。その前にセーブっと。
時の狭間から脱出するために、時計くんは電池を使い果たした。脱出した先は学校の中だった。
時計「カチッ……カチッ……」
リエ「嫌だ……嫌だよ時計くん……なんで私なんかを助けるために、電池を全部使ったの……?時計くんが動かなくなる世界なんて……意味がないよ…………」
時計「カチッ…………カチッ……………」
リエ「嫌だっ!誰かなんとかしてよ!」
校内放送「キーンコーンカーンコーン
時計はお前を助けるために電池を全部使ったんだ、お前が笑顔じゃないと報われないぜ。
キーンコーンカーンコーン」
時計「カチッ………………」
リエ「ごめんね、ごめんね時計くん。」
私は涙が溢れてきてどうしても笑えなかった。
時計「カチッ………………………」
リエ「時計くん……」
私は泣きながら、笑う。今までで一番の笑顔になるように、笑う。
時計「カチッ……………………………カ……チ………………………………………………………」
時計くんの音がしなくなった。まるで時が止まったようだった。
涙が溢れてきて、嗚咽が漏れる。それでも私は天国の時計くんに向けて精一杯笑顔を送るのだった。
ーバッドエンドー
やっぱり彷徨っちゃったかぁ。なんで、そんな危険なとこデートしようとか思っちゃったんだよ。というか、校内放送いいやつだな、見直したわ。あと、最後ぐらいは喋れよ時計。
「時計くんの時を刻む音がなくなって、時が止まってしまったように錯覚してしまった主人公には、どうしても同情をしてしまいます……。」
そうかな?? 少なくともここに同情しなかった奴がここに一人いるぞ。
「でも…先輩!最後の選択です!残るはハッピーエンドのみです!楽しみにしておいてください!」
セーブまで戻って今度は1の学校を選択した。
また、夕暮れが幻想的な教室だ。
時計「カチッカチッカチッカチッ」
リエ「と、時計くん!大好きだよっ!」
私は時計くんに抱きつく。
♪ポキッ……
時針が折れた。
リエ「ご、ごめん時計くん!私っていっつも肝心なところでミスしちゃって……時計くんは鈍臭い女なんて嫌だよね……」
時計くんの顔が見れない。
涙が地面に落ちていく。
時計「カチカチカチカチカチカチッッ!!」
リエ「こんな、私でも……いいの?」
時計「カチカチカチカチカチッッッッッ!!」
リエ「時計くん! 私も大好きっ!」
♪ポポキッ……
分針と秒針も折れた。だが、二人の愛は折れることがなかった。
ーハッピーエンドー
時計の針全部折れてんじゃねーか。これは果たしてハッピーエンドと言えるのだろうか? あと、最後ちょっと上手いこと言ったみたいな雰囲気が出てるのもちょっとムカつく。
「二人は時計の針がなくなったことで、時間を気にせず、愛を伝えられるようになったんですねぇぇ、よがっだよがったぁぁ。」
良かったのかは疑問だけどな。
「チーン! んんっ! 先輩どうでしたか? 楽しかったですか?」
「まあ、色々思うことはあったけど、楽しかったのは楽しかったよ。」
「それなら良かったです!」
そう言って理恵は満面の笑みを見せた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
えー、ここからはダラダラと作者の事と作品の事を書いていくので別に読まなくていいです。あぁ待って、最後に評価だけしていってくれるとありがたいです。別に評価を10くれとは言いませんから、思った通りの評価をしてから帰って頂けるとありがたいです。
はい、えー、趣味で書いている別の小説が行き詰まった時に気分転換で書いたのがこの作品なんですが、こう、気楽に書ける小説はいいですね。スラスラーと書ける物語は書いていると、自粛中のイライラした気持ちの気分転換になるので、小説なんて書いたこともない!って人も是非書いてみて下さい。きっと楽しいと思います。それと、この作品の原案というか、一番元となったのは友達とのLINEでの履歴なんですよね。LINEで会話してると、後から見てあ、ここ面白いってなったりするじゃないですか、それを元にして短編を書いていくとすごく楽しいんですよね。あぁ、そうだ最後に、皆さんコロナにはお気をつけて下さいね。それでは、後書きを長く書きすぎたことによって評価を押しにくくしてることに気づいて絶望してる作者からでした。