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第70話 すべてがベストタイミング。褒めらるのは嬉しい事だと知りました。

「……弟が卒業するまで、うちで結婚生活を送るという手もありますよ」


 〝今すぐ結婚してもいいよ。だけど、俺が家にいる間はお兄ちゃんも家にいて〟


 俺は本当に抜けている。貴ちゃんへ応相談も何もない。

 俺が嫌だっただけだ。貴ちゃんが昔は家に人が来るのが苦手だったから。


 だけど貴ちゃんは成長して、おじいさん、おばあさん、お母さんが家にいても良いとなっている今、確かに桑野さんがうちに住んでもらっても問題無い。


「私は両親を置いて都会には行きませんよ」

「……お姉さんは?」

「なんで私の家族構成を知ってるんですか?」

「以前、三人でいるのを見かけました」

「……」

「たまたま、見かけただけですから。ストーカーじゃないですよ」

「何年間か無駄にしました」


 てっきり引かれたかと思えば、悔しそうにする桑野さん。


「私が一番彼氏が欲しかった20代を無駄にしました」


 〝11年前からずっと好きでした。〟


「……初めてあった時に例え知り合いになれていたとしても、恋には発展していません」

「え?」

「俺は高卒の給料だったので、条件①は満たせていないですし、それ以上に自分の時間も無く働いていました。今がベストタイミングです」


 俺の20代は子育てと仕事以外に何も入り込む余地はなかった。

 きっと桑野さんから連絡が来たとしても、返す隙もなかっただろう。仕事以外は一分一秒でも長く、直くんと貴ちゃんといたかったし。(…ちなみにそれは今もだけど)


 だから、直くんが巣立って、貴ちゃんが成長した今を目掛けて桑野さんと繋がったと、俺は思ってる。


「……そうですね。三井さんには今更でしたね! ではプラトニックをこれからも続ける事も可能ですよね?」


 そこにこじつけたか!


「……桑野さんに聞いていません。挨拶に行かせてもらった時に俺がご両親に直談判します」

「怒鳴られるかもしれませんよ」

「……二年半限定の東京暮らしです。商談と思って上手く運ばせます」

「どうかな〜。出来るかな〜」


 桑野さんが嫌な笑みを浮かべる。


「怒鳴られるのは慣れていますから」

「……そんなにプラトニックが嫌ですか?」

「当然でしょう」

「言い切りましたね。子供は欲しく無いって言ってたくせに」

「桑野さんとの子供なら沢山欲しいです」

「……お、おぅ」

「本当に照れた時は小声になるんですね」

「……」

「本当に照れてますね」

「っ! いつまで駐車場にいるんですか!? 駐車場代がかかります! もったいない!」

「桑野さんは堅実ですね」


 ようやく車に乗り込み発進させる。

 平日の駐車場で物凄く濃い時間を過ごした。


 真っ赤に照れた桑野さんが愛しくて、可愛くて……

 それは、思いが通じ合ってから尚更そう感じるようになった。


「堅実ですから! 結婚したら私が家計を管理しましょう!」

「俺が桑野さんに必要経費と謝礼金という名のおこづかいを差し上げる形にします」

「……権力振りかざすつもりですか?」

「俺は収入源が複数ありますので、管理は大変ですよ」

「……ふ」


 桑野さんがほくそ笑む。明らかにこらえきれていない。


「条件①、満たせてると思ってニヤついているんですか?」

「三井さんって幼稚な弄り方しますね」

「上には上がいます。そして、下には下がいます。常に上も下も見るようにしないと。そうでないと、傲慢な人間になってしまいます」

「三井さんって深いですよね。考えも懐も。……褒め言葉です」

「ありがとうございます。褒められる事は嬉しい事だと最近知ったので、沢山褒めて下さい」

「子供か」

「子供です。褒めて伸ばして下さい」

「あ、思い出した」


 そう言って桑野さんが俺の頭に手を乗せ……動かす。


「……信号で止まってて良かったです。運転中は危険ですからね」

「止まってるから手を出したのに」


 〝ご褒美に頭を撫でてあげます〟


「やめて下さいって言ったのに……」

「褒めて伸ばしているんです。よしよし、いい子いい子」

「……物凄ーく棒読みですね」

「照れなくてもいいのに」

「いえ、意外と嬉しいと思って感動しているんです」

「は、早くランチしましょう!」


 俺が照れないのが逆に恥ずかしくなったのか桑野さんは手を引っ込め、早口で話す。


「はいはい。お昼は何を召し上がりたいですか?殿下」

「……バカにしましたね?」

「崇め奉ってますよ。俺は人生初を沢山体験させてもらっていますから」


 頭なんか初めて撫でられた。じゃんけんもそうだし。告白したのも……。


 俺はこれから桑野さんと、沢山の時間を共有出来る。

 桑野さんと一緒に色んな経験を積みたい。

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