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第63話 我が家のムードメーカーによる大団円。そして色ボケを…。

「あ、あー。えーっと……」


 暗い……。空気が重い。せっかく直くんと百子さんに来てもらったのに申し訳ない。なんとかして明るくしないと……。


「も、もう済んだことですし、私も経験出来て良かったと喜んでいます。キヨさんがここまで思って下さって、言って下さって……キヨさん本当にありがとうございます。嫌な役を引き受けて下さって……」

「俺は知りたいよ」


 ずっと黙っていた直くんが口を開く。


「俺の知ってる兄貴は、いつも穏やかで……人の気持ちが分かって、気が利いて……お節介で……。俺と貴将の事をいつも一番に考えてくれて……。これまで、大変だった事も全部……見てこなかった。分かっていたのに、助けられなかった。兄貴の支えになりたいって……ずっと思っていたのに」

「直くん……」


 まさか……直くんがそんな事を考えてくれていたとは……。


「お兄ちゃん」

「あ、貴ちゃんごめんね」


 貴ちゃんの目をずっと隠したままだった。慌てて手を離す。


「とりあえず、お腹空いたから、食べながら話そうよ」

「……ふっ、はは。そうだよね、お腹空いたよね。ご飯食べよう」


 貴ちゃんは我が家のムードメーカーだ。思わず笑ってしまった。


「そうですね。貴将坊っちゃん、お待たせしてすみません。ささっ、大西さん達もどうぞ」

「いえ、私達は頂く訳にはいきません」

「なんで? お兄ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんとお母さんなんでしょ?」

「貴ちゃん……」


 さっきも説明したのに。


「俺おじいちゃんとおばあちゃんの記憶ないから。おじいちゃんとおばあちゃんが出来て嬉しい」

「え?」

「お兄ちゃんのって事は、俺のでもある。お兄ちゃんのものは俺のもの」

「貴、何ガキ大将みたいな事言ってんだ」

「直は相変わらず頭かたいな。皆で仲良くしたら良いじゃん」


 ……貴ちゃんの良いところは物事を何でもポジティブに捉えること。暗く考えないこと。


 俺にはない、貴ちゃんの強みだ。


「そうですね。貴将坊っちゃん。私も言いたいことを言って胸がスッと致しました」

「そうでしょう? 直、俺を見習えよ!」

「絶対嫌だ」

「直くんはね、もうそのままで素晴らしい! 宇宙一素晴らしい!」


 百子さんはいつも直くんを褒めてくれる。


(百子さん、ありがとう。直くんをお願いします)


 心の中で、百子さんに感謝する。


「百子さんも来てくれてありがとう。沢山食べて帰ってね」

「はい! もう結婚式終わったんで山ほど食べます!!」


 百子さんはいつも食べっぷりがいい。俺は自分が過去食べられなかった事もあり、よく食べて、ふっくらしてる人の方が見ていて安心出来る。……女性を前にしては言わないけど。


「おじいちゃん、おばあちゃんここに座って!」


 貴ちゃんが二人を促す。


「お母さんはここね!」


 ……貴将くーん。


「貴ちゃんには、本物のお母さんがいるよ」


 しっかりと伝えておこう。


「お兄ちゃんって直とそっくり。頭かたい」

「いや、兄貴は貴に似てる。性格悪いところ」

「頭かたくて性格悪いってお兄ちゃん良いところ無くない?」


 かわいい弟達は随分ズバズバ言うようになった。前は「お兄ちゃん大好きー」と口を揃えて言ってくれていたのに……。


 それでも俺は、この血の繋がっていない弟達と似ていると言われると、嬉しい。


「俺の友達、皆お兄ちゃんのこと〝お兄ちゃん〟って言うよ?」

「そうだね」


 幼稚園からのエスカレーター式。小さい時から知っている分、友達も全員俺のことを〝お兄ちゃん〟と言う。


「ニックネームみたいなものだよ、お兄ちゃん! 軽く軽くー!」

「……」


 今、フッと塚本くんを思い出した。そう、人生には軽さが大事だ。


「……そうだね。どうぞお座り下さい。おじいさん、おばあさん……お母さん」


 最初で最後はあっという間に覆された。貴ちゃんのパワーには勝てない。



「「「あ、ありがとうございます……」」」


 三人の言葉が見事に調和する。三人揃うと本当に瓜が三つ並んだようにそっくりだな。この家族は。






 ✽


「美味しいねー!」


 貴ちゃんの満足そうな声に包まれる。


「……結仁坊っちゃん、先ほどは出過ぎた真似を致しました。申し訳ございません」


 キヨさんに謝られてしまった。


「いえ。キヨさんのお気持ちとても嬉しかったです。ありがとうございます」


 俺が心の底で思っていた事をキヨさんが全て言ってくれた。

 おかげで、この出来事はここまで怒っても良いことなんだと、思うことが出来た。


 ずっと……俺を産んだ人は俺を好きになれなかったから、捨てたんだと……それなら、仕方ないと諦めていたから。


「生前、奥様と話していたんです。〝今、結ちゃんの本当のご両親がやってきて返してほしいって言われたら、どうしよう〟と」


 そんな事が話題になるのか。


「〝きっと私は返せない! って言って叩いちゃうかも…〟だそうですよ。」

「私は愛されてますね」

「はい。それはもう! 奥様と旦那様のキューピットですから!」

「? はぁ……」

「うふふ」


 大西さん親子は喋らない。何か話題をふろう。直くんと百子さんも入れる話題を……。


 うーん。


「お兄さん! お兄さんのお噂は本当ですか!?」


 考えていたら百子さんが話してくれた。良かった。


(…噂? なんだろ?)


「百子まだ兄貴を疑ってるの? 兄貴に女性の影なんかこれっぽっちもあるわけ無いって」


 あ! 忘れてた!



 ……直くんは本当に信じていないのか。自信満々に百子さんを説く直くん。


 俺だって色ボケする相手がいるのに!

直くんがお兄ちゃんが性格が悪いと思った瞬間はシリーズ小説

『直くんとももちゃん〜』の129話『気の利くおせっかい』をご覧下さい。

また、直くんがどのようにお兄ちゃんを思っていたかも合わせてシリーズ小説も宜しくお願い致しますm(__)m


ちなみに結仁くんは自分が両親のキューピットとは思っていません。「仲が良くないな…仲良よくなったな」くらいの感覚だと思います(*^^*)

その両親の話『政略結婚の裏側に』も宜しくお願い致します♪

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