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第22話 仕事以外の仕事②

 

 今の俺の最優先課題はこれだ。


 丸顔……

 緊張感……

 宝石……


 丸顔……緊張感……



 ――コンコン


 自室をノックをされ我に帰る。また自分の世界に入っていた。


「はい?」

「CEO〜! あ~そ~ぼ〜!」


 この声は!


 ――ガチャ


「仕事して!」


 扉が開いてすかさず言う。真面目に仕事してる社員はどうするんだ!


「相変わらず、ボキャブラリーの無い返事っすね〜!」

「……塚本くんもね」


 この一連の会話はもはや定番化している。


「今日、本田ちゃんにやられたんすよー」

「やられた?」


 本田ちゃん、百子さんか。


「備品持って来たと思ったら、おもむろに俺の前に立って、色々とポーズ取るんで、突っ込んだら……」

「また百子さんのいない所で勝手に俺に話しして……」

「〝私、今日どこが違うと思います?〟とか言って、すっげーポーズ取って主張してくるんっすよー!」

「うん」

「そしたらキラリと光る指輪が!!」

「あー! 直くんあげたんだ!」


 あのテレ屋な直くんが! お母さんの指輪をあげたんだ。

 見たかったなー。かわいいなー。成長したなー。


「すっげーでっけー宝石! 直くん金持ち!」

「母親の形見だよ」

「で、ずっと俺の前で惚気けて、さらに営業部の一人一人に見せて回ってたんすよ」

「……そんなに喜んでもらえたなら直くんも嬉しいだろうね」

「朝から耳にタコが出来るくらいノロケを聞かされたんで、直くんを弄って発散しようとしたんすよ」

「直くんに変な事するのやめてよ」

「そしたら、直くん会議中だったんすよー!」

「良かった! 直くんが弄られなくて。」

「ブラコンが過ぎますって! ワハハ!!」


 ……出た。分かってるよ、そのくらい。弟二人、目に入れても痛くないんだよ。


「本田ちゃん、今日緩みっぱなしっすよ」

「まぁ、ずっと緊張しててもねぇ……」


 ん? あれ? 宝石、緊張……もしかして。


「そんな感じでフザケてたら、珍しく社長が通りかかって、本田ちゃんを上から下まで見渡して行きました! あれは偵察っすね!」

「……」


 これかー!



 叔父さんの言ってた事がようやく分かった。さっきは全く会話が噛み合ってなかったんだ!


 ……俺の事かと思ってたのに。すぐに叔父さんの所に言って釈明しないと!!


「塚本くん、ありがとう! 謎が全て解けたよ。」

「……なんで急に探偵ごっこが始まったんすか?」


 丸顔、緊張感、宝石!

 宝石はいいとして丸顔と緊張感って……。


 百子さん、うちの社長がすみません。

 心の中で謝る。直接本人に言わなかっただけ、良かったと思おう。





 ✽✽✽


 ――コンコン


「……あれ?」

 社長室をノックする。返事は無い。


「CEO、いかがされましたか?」

「あ、社長は外出中かな?」


 社長秘書の友田さんが声をかけてくれた。


「大層ご立腹のご様子で、本日は退社されました」

「……そうなんだ」


 一足遅かった。釈明をしたいのに。叔父さんが百子さんを誤解したままだと、これから先がややこしくなる。


 その前に手を打っておきたい。


「血圧が微かに高かったのを〝こんなに高い!これでは仕事にならん!〟と申しておいででした」

「……いつもありがとう。何かあったらいつでも言ってね」


 これまで何人もの社長秘書の配置転換をしてきた。叔父さんは素直に生きてる人だから、部下との付き合いに中々問題がある。


 友田さんはこれまでで一番長い。それにしてもパワハラで訴えられたら、企業として大打撃だ。言われかねない事態は裂けたい。


 成功とリスクは……常に隣り合わせだ。


「CEOがいらっしゃるから……私、平気です」

「本当?そう言ってもらえると助かるよ。だけど無理はしないでね」

「CEOのお役に立てるなら、私……どんな事でも出来ます」

「充分! いてくれるだけで、本当に感謝してるよ」


 これ以上、社長秘書に配置転換出来る人がいない。


「ありがとう。じゃあ、仕事に戻るよ」

「あっ……」



 彼女は会社に対する忠誠心が強い。社長の相手は嫌な顔をする人も多い中、進んでやってくれる。



 とりあえず、叔父さんをどうしよう……。

丸顔ももちゃん(笑)

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