第59話 夫からデートに誘われて……不覚にも、きゅんです。
「服……これで良いかな?」
夕方。結ちゃんとのデートに向けて、せっせと服を選ぶ。
「やっぱりこっち?」
鏡の前で何度も当ててみる。どれも結ちゃんに買ってもらった物ばかりだけど、憧れの仕事終わりデート。いつも以上に気合が入る。
「結ちゃん……どんなのが好きかな」
ときめいて貰いたい。
「……よし! 女は度胸! これで良い! バッチリ! いざ出陣よ、愛子!」
鏡の前で気合を入れて、部屋を出る。
階段を降りて……
「あの……そろそろ出かけます」
キヨさん達にご報告。
「はい、お気をつけて……まぁ美しい!」
「え、あ。そ、そうですか?」
「まー、坊っちゃんも幸せ者ですね」
「そうでしょうか……。結仁さんの好みが分かりかねて……」
「まぁいじらしい。坊っちゃんが好きになったほどですから、どのようなお姿も坊っちゃん好みだと思いますよ」
「ありがとうございます。行って参ります!」
キヨさんに自信を与えて貰って、家を出た。
✽
結ちゃんの職場に到着。
(相変わらず、凄いビル……)
この高層ビルの一番上にいるのが、私の夫。……信じられない。
地上から見上げる私は、正に天と地の差。
(連絡無い。会議、長引いてるのかな?)
定時になったのか続々と社員と思わしき人達がビルから出てきた。その人の多さ、キラキラ感に圧倒され、隅の方で結ちゃんからの連絡を待つ。
(やっぱり都会で働く人は違うな……かっこいい)
「あれ? 奥様?」
「――あ、戸塚さん……」
下を向いてウジウジしていたら声をかけられた。キラキラ秘書の戸塚さんと同じくキラキラ秘書の木崎さん。
前に会ったときと同じ、キラキラ感。東京のオフィースで働くかっこいいキャリアウーマン達。
「CEOと待ち合わせですか?」
「あ……はい」
「会議が長引いてるみたいで、もう終わると思うんですけど」
にこやかに話しかけられて、緊張が解れる。
「定時10分前になったらお茶を下げていい決まりになってて、もう重役のおじさん達も分かっているから終わると思うんですけどねぇ」
「そうなんですね。ご丁寧にありがとうございます」
「――あ! お義姉さん!」
「あ、ももちゃん」
戸塚さん木崎さんと話していたら、ももちゃんと直くんにも遭遇。
「……こんばんは」
「こんばんは」
直くんにも挨拶された為、返答。
(結ちゃんがかわいいかわいい言ってたけど、直くんはかっこいい部類だよ。イケメンだな、直くん)
この三兄弟、顔面偏差値高い。
「お義姉さん、お兄さんとデートですかぁ?」
「あ、うん……ちょっと……」
「わー! 素敵! 私達もこれから直くんとデートです!」
「そうなんだね」
嬉しそうに教えてくれたももちゃんに微笑ましい気持ちになる。
私も……
〝これから結仁さんとデートなの! とっても楽しみ!〟
「――っ……」
い、言えない……。私の臆病者ぉ!
✽
皆と別れて、少ししたところ
(あ、出てきた)
無駄に大っきくて高い都会的なオフィスビルから結ちゃんが出てきた。
(びっくりするくらい、かっこいい。スーツの結ちゃんは朝晩毎日見てるけど、背景がオフィスビルだと、余計……)
「かっ……」
「愛ちゃんお待たせ。ごめん、かなり待ったよね?」
「……いえ」
目の前に現れたかっこいいイケメンに、緊張する。
「……お仕事は良かったですか?」
「どうしたの? なんか他人行儀だけど……」
「お気になさらず」
(かっこよくて、直視出来ない)
つい、うつむいてモジモジする。
「……具合悪い? なんか顔が赤いけど……」
「や……! そのようなことは!」
「やっと目が合った」
「っ……!」
(どうしよう。不意打ちだ)
赤い顔を悟られたくなくて、勢い良く否定したらスパダリさんと目が合ってしまった。
そしたら、嬉しそうに蕩けるような笑顔で私を見つめる結ちゃんが視界に入ってきて……
かっこよさに、負けた……。もうだめ。腰が抜ける。
――かくんっ
「わっ! どうしたの!? 大丈夫!?」
「おっ! お構い無く……」
あまりの不甲斐なさに、結ちゃんが抱きとめてくれた手を退かして、自力で離れて立とうとする。
「構いたい」
「そっ、そうですか」
「……そんなに俺と会えて嬉しい?」
「っ! はぁっ!? 自意識過剰!」
「はいはい。自意識過剰ね」
(く、悔しいぃ!!)
ときめきも恥ずかしさもどこかに行って、いつもの調子に戻った。
そう思ったのに……
「遅くなったけど、改めて……僕とデートして頂けませんか?」
そう言って私の手を取る結ちゃん。
――きゅん……
悔しい。惨敗。
(さっきのはきっと……私の緊張を解すためにいじって来たんだ……)
私の気持ちも考え方も何もかも……結ちゃんの勝手知ったるところ。
それが垣間見えた。
「は、い……。喜んで……」
照れながら、握られた手に力を込める。
私は結ちゃんの手中の中。
そんな気がして……
包まれる心地良さに、震えた。
✽
「ビジネスマンがいっぱいだね」
結ちゃんと手を繋いで、予約してあるホテルのレストランまで歩く。
「俺以外に見惚れたらだめだよ」
「……しませんよ」
貴方が一番かっこいいわよ。悔しい、このやろう。
「いいね。いつもは一人の仕事帰りも、愛ちゃんが一緒だと気分が軽い」
「そう……」
「そんなに照れなくても」
「て! 照れてない!」
「かわいいね。最高だ」
「……」
「間違えました。綺麗です」
黙ってしまった私を結ちゃんは怒っていると感じたよう。
〝かわいい〟に怒ったわけじゃない。本当に嬉しそうに伝えてくれて、ギュッと握った手が温かくて……
――どうしようもなく、ドキドキしたからなの。
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