表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/163

第56話 尾行?

 料理が運ばれて、食事中。


「んまっ!」

「美味しいね」

「やー、食べてみたかったのよ! 最高ですね」


 結ちゃんにご機嫌を取ってもらい、私はいつもどおり。


 だが……


「結ちゃん、視線……感じない?」

「え?」


 見るとやっぱり。私と目が会うとパッと反らされた。


 深く帽子を被って、サングラスをかけた人から。


「あれ……十時さんじゃないよね?」

「さっきと服違うよ? まさか」


 結ちゃんは気づいていない。だけど……


 やっぱり、視線を感じる……。


 私達の斜め前の席にひっそりと座る全身暗い服に見を包んだ……女性。


 私と対角線上。結ちゃんは斜め後ろになるから分からないか……。


「いつから見られてたのかな?」

「見られてるの?」


 また私がそちらの方を見ると、パッと窓の外の視線を移す、女性。テーブルを見ると、お水とメニュー表。


 つまり、私達に料理が運ばれたくらいからいる、と。


「尾行かな?」

「俺も愛ちゃんを尾行したかったな」

「……」

「お姉さん達と銀座に向かって歩いてた。愛ちゃんめちゃくちゃ綺麗だったよ」

「それはどうも……じゃない!」


 結ちゃんが私に片思いをしてくれてたときがあったようで……。私が知らないその時の話をされて、恥ずかしい。


 ……って、照れてる場合じゃない!


「十時さんだよ! やっぱり!」

「声かけてみようか?」

「やだよ! 人違いだったらどうするのよ!」

「気になるなら声をかけて、もしかしたら何かビジネスに繋がるかも知れないし」

「何が繋がるのよ!」

「話していたら、ヒントが出たとか。探している人材のままだった、とか」

「……と、とにかく話しかけるのはいい! 様子を見よう」


 さっき別れて、服を着替えて、そこからあまり離れていないとはいえ、私達の場所が分かるかな?

 やっぱり、間違い?




 ✽✽


「今日のはやっぱり十時さんだよ!」

「うーん……」


(あれから店を出ても、ずっと視線を感じていた。あれはやっぱり絶対十時さん!)


 気になり、夕飯は家で食べることにして帰ってきた。


「結ちゃんのこと、諦めてないんだよ!」

「そうかなぁ」

「ちょっと! 当事者がそんなに曖昧でどうするのよ!」

「俺が好きなのは愛ちゃんだから」

「お、おぅ……」

「あ、それも久しぶりに聞いたな。かわいい」

「かわいいって言うんじゃない!」

「間違えました。綺麗です」

「バカにして!」

「バカにしてないよ。愛でてるだけ」

「おーぅ……」

「……ふ」

「堪えんでいい!」


 く、悔しい。私だけがワタワタしてる……!


「俺はそれより、今日のデートの続きがしたいよ」

「……」

「せっかく愛ちゃんと一日デートの予定だったのに」

「今度……貴ちゃんが友達とご飯の日に、私達も夜ご飯食べに行こう」

「うん、愛ちゃんが行きたがってたホテルのディナーを予約しよう」

「ありがとう」

「思えば平日の夜って一緒に出かけたことないよね」

「そうね。ちょっと憧れだったから楽しみ」

「憧れ?」

「なんか大人って感じじゃない? スーツの男性と仕事終わりに食事って。私は仕事終わりじゃないけど……」


 恥ずかしくなって段々と小声になってしまった。


 二十代の頃、本当に憧れだった。

 諦めてたことが、今になって実現するとは……。


 ――ギュッ


「ゆ、結ちゃん?」


 手を引き寄せられて、抱きしめられた。


「かわいい」

「またかわいいって言った……」


 不貞腐れたように言ってしまった。


「かわいいんだから仕方ない」

「もう……」


 悪態をつきながら、私も結ちゃんの大きな背中に手を回す。


「その日は……愛ちゃんに選んで貰おうかな、ネクタイ」

「……私センス無いもん」

「貴ちゃんの靴を選んであげてて羨ましかった。俺もされたい」

「スパダリさんのコーディネイトを担うって、プレッシャー……」


 〝私服もかっこいいですね〟


 もっとオシャレを勉強しておけば良かった。都会のキラキラ軍団にまた卑屈になってしまった。


「うぅ〜。結ちゃんを取られたくないよぅ!」

「取られないよ。俺が好きなのは愛ちゃんだけだから」


 泣いてしまった私を前に、あやすように抱き締めてくれる。


「若い娘の方が良いに決まってる!」

「それはそれでちょっと俺が引っかかるな」

「うぅっ!」

「俺より若い男の子の方が良い?」

「良くない! 結ちゃんがいい〜!」

「俺も同じだよ。あーもう、かわいいな。最高だ」


 結ちゃんの服を掴み、胸に顔をグリグリと押し付け、イヤイヤと顔を横に振る。駄々をこねる子供のように。


「愛ちゃんの仕事が増えるけど、選んでよ。俺のネクタイ。出来れば……毎日」

「うぅ〜」

「貴将のために、一生懸命選んでた。俺には?」


 私の背中をトントンと叩きながら、優しい声で言ってくれる。


 私が安心する。心地よい低音。


「会社でダサいって言われても知らないよ」

「構わないよ。服装なんて個人の見解だけだから」

「……」

「愛ちゃんが選んでくれた物を身に着けたら、俺は自信を持って振る舞える」

「……」

「愛ちゃんがいない職場でも、愛ちゃんを感じたいよ」


 私はいつも結ちゃんに大きな愛を与えられて、守られている。


 だから誰にも取られたくない。この男は私のものだ。

ご覧頂きありがとうございます!

宜しければ、評価、ブックマークもお願いいたします。


この二人のR版も書いております。

↓下記URLをコピーしてご覧下さいm(__)m

https://novel18.syosetu.com/n1609gx/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ