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第55話 妻の過去の恋愛模様

この二人のR版も書いております。

下記URLをコピーしてご覧下さいm(__)m

https://novel18.syosetu.com/n1609gx/

「愛ちゃん」

「……」

「愛子さん」

「……」


 愛ちゃんの手を引っ張りレストランに足を運んだ。席についたが愛ちゃんは無言のまま……


「何食べたい?」


 なんとかこの状況を打破しようと、優しく尋ねる。


「……」


 聞くとメニューを指差しされた。


「分かった。……ここ、今度行こうって約束してたよね」

「……」

「愛ちゃんと一緒に来れて良かった」

「……」


 注文して暫し待つ。



 何か言いたげな愛ちゃん。


「指輪はしてたから」


 きっとお怒りの原因はこれ。


「人が見落とすことにまで俺は介入出来ないよ。ビジネスの場で見せびらかすのもどうかと思うし」

「……」

「今度から、左手をよく使って動かすようにするから……」


 今の俺に提示出来る解決策はこれくらいだ。


「……俺が不倫も出来ないように、見張っててくれるんだよね?」


 以前、そう言ってくれた。俺の結婚の条件でもあった。



「……あれは私がピチピチの20代の頃」

「え?」


 愛ちゃんがようやく口を開いたと思ったら、含みを持たせたナレーションのように話しだした。


「派遣社員の私は一人ポツンと社会人生活がスタートしました」

「うん……」

「同期はおらず、皆先輩。ガチガチに緊張していた私の元に……一人の男性が声をかけてくれました。分からないことがあったら何でも聞いてね、と……」

「うん」

「初めて見る年上のスーツ姿の男性に優しく声をかけてもらい、社会を知らなかった私は酷く心をときめかせたものです」

「ちょっと待って」


 今のはこのまま聞き役に徹することは出来ない。


「その男の人のこと……好きとかじゃないよね?」


 驚きを抑えつつ、探るように伺う。


「……」

「まさか……初恋……」

「それは違う」


 否定され、パッと高揚した。


「そっか。俺は愛ちゃんが初恋の人だよって伝えたよね。愛ちゃんは?」


 俺はにこにこと続きを期待する。


「……私の初恋は小学五年生」

「えっ!」

「クラス一かっこいいモテモテの男の子でした」


 愛ちゃんの発言に驚き、俺の気分は急降下する。


「私にはもうパートナーがいると思っていたんでしょ?」

「思っていたけど……」


 愛ちゃんを手に入れる前と後で俺の気持ちは違う。

 愛ちゃんは全部俺のもの。分かっていても、実際には聞きたくなかった。


「私の初恋はアイドルのおっかけみたいなものだから」

「……」


 俺の雰囲気が伝わったのか、愛ちゃんがフォローを始めた。


「じゃあその職場の男が本当の初恋なんだ」

「違うよ。中学のときはアイドルグループの一人に肩入れして、この人と結婚するって思っていたし」

「はあ!?」

「当時面食いだったのよ」

「お金は良かったんだ?」

「なんかすっごく棘のある言い方ね」


 愛妻の過去の恋愛模様を聞いて、俺のテンションはガタ落ち。怒りすら覚える。


「何怒ってるのよ。手を繋ぐのも隣を長時間歩いたのも、私の初めては全てきみが奪ったんだよ」


 愛ちゃんは俺の扱いが上手いと思う。


「私は結ちゃんのものよ。自信を持ちなさい」

「うん……」


 骨抜き。俺のテンションは急浮上だ。


「だけど、その話を聞いたら、やっぱり職場の男の人が気になるよ」

「派遣社員を転々としてたから、その都度優しくしてくれた男性社員にときめいてたよ。そのレベル」

「悔しい。俺も愛ちゃんと働きたかった」

「ビジネスで出会った人とはビジネスなんでしょ?」

「愛ちゃんは特別」

「おやまぁ」

「あ、なんか久しぶりに聞いたな」


 俺達はベストタイミングで繋がれた。それは理解していても、俺が知らない愛ちゃんの過去があることが悔しい。

 俺の愛ちゃんなのに。


「つまり、十時さんもときめいたのよ」

「十時さん?」


 急に話が戻った。


「あんなに若くてかわいい子が結ちゃん見つけて、飛び跳ねるように喜んでたじゃない」

「うーん……」

「私が男なら、でへへってなる」

「ふっ……何それ」


 愛ちゃんの「でへへ」の言い方が面白くて……つい、吹き出してしまった。


「いいなぁ……愛ちゃんと働いた男の人」

「また話を戻したわね」

「中々流せないよ。俺だって愛ちゃんが入社して来たら、優しく声をかけるよ」

「仕事は?」

「かっこいい所を見せたいから、頑張る」

「もうかっこいいよ」

「……何も無かったんだよね?」


 サラッと素面で褒められたため、つい、勘ぐってしまう。

 何かまだ隠しごとがあるのでは……。


「独身だと信じていたら、妻子持ち。がーん。終わり」

「は?」

「指輪をしていないだけで、私がときめいたのは既婚者。何もあるわけない」

「……」

「今思えば既婚者だから、余裕があって声をかけてもらったんだろうねー」

「そっか……」

「だから、指輪は相手がいるかどうかのバロメーター」


 急に愛ちゃんの目が鋭くなった。


「恋心に火がつく前で終わるか、好きになってから知るのか。ショック度が全然違う」

「なるほど……」

「私は十時さんの気持ちも分かるし、私が男なら、若い娘にムラムラしますよ」

「なんで愛ちゃんが男の気持ちが分かるんだよ……」


 愛ちゃんは100%美しい女性。俺が知っている。


「私は結ちゃんが絡んで無かったら、でへへってしてた」

「それ。……やっぱり友田さんのアドバイスどおりだった」


 女性同士と言って油断してはならない。


 覚えておこう。


ご覧頂きありがとうございます。

連日の評価、並びにブックマークも本当にありがとうございます!


この二人のR版も書いております。

下記URLをコピーしてご覧下さいm(__)m

https://novel18.syosetu.com/n1609gx/

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