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第52話 電話応対

 

 翌日、いつも通り出社して仕事を進めていく。


 ――トゥルトゥルトゥル


「はい」


 内線がなったため、俺は電話に出る。


『――会社の十時さんからお電話です』

「はい、ありがとう」


(十時さんか)


「はい、お電話代わりました」

『あ、――会社の、十時と、申します……』


 まだ電話に慣れていないのか、しどろもどろでゆっくりとしている。


「昨日はお疲れ様でした。具合は良くなった?」


 俺も電話応対は苦手だった。だから、十時さんが分かりやすいように、緊張が解れるように、いつもよりゆっくりと話す。


『はっ、はい! ありがとうございました!』

「段々と慣れていけたらいいね」

『はっ、はい…………』

「?」


 十時さんが無言になった。


 慣れない電話で俺が先に話したから、要件が飛んだかな?

 なんか悪いことしたな。失敗。


「何か社長から伝言かな?」

『えっ! あっ! えっと……』

「うん、ゆっくりでいいよ。練習練習」

『あ、ありがとうございます……』

「いいえ。どういたしまして」

『えっと……あ、あ! スケジュールを!』

「スケジュール?」

『は、はい! 今後の、日程、の……ことで、お電話、を、致しました』


 所々で区切られている話し方。


(メモに書いた文字でも読み上げているのかな?)


 しかしスケジュールか。


「はい、ありがとう。僕のスケジュールは僕自身で管理していなくて、秘書に任せているから、秘書に電話を回すね」

『えっ!? あ! す、すみません!!』

「二人いるから優しい方に連絡するね。そんなに緊張しなくていいよ」


 ここは黒崎くんに回すのは止めておこう。きっと萎縮させる。





 電話を回して、俺は仕事を再開する。


(あともう少ししたら、愛妻弁当が待っている)


 決裁文書を見つめ仕事をしながらも、つい、顔がニヤける。


(昨日もかわいかったなー)


 俺の原動力。おかげで仕事がサクサク進む。


 ――トゥルトゥルトゥル


「はい」


 内線がなったため、俺は電話に出る。


『――会社の十時さんからお電話です』

「はい、ありがとう」


(十時さんか。なんだろ?)


 本日二回目の電話。やはり、伝え忘れだろう。


「はい、お電話代わりました」

『あ、――会社の、十時と、申します』

「いつもお世話になっております」

『あ! こ、こちらこそ……!……』


 またしても、無言。


「何か社長から伝言かな?」

『あ、い! いえ……!』

「落ち着いてからでいいよ。ゆっくり話そう」

『…………えっと……』

「うん」

『……あ! き、昨日のお礼に! あ、いえ、えっと! き、昨日のお礼の連絡を、させて頂きました!』


 昨日の、お礼?

 さっきの電話でも話したけど……。


(慌ててたし、忘れたんだろうな)


「それはご丁寧にありがとうございます」

『あっ! い、いえ!』

「気にしなくていいよ。僕も昔はお酒が苦手だっから」


 成人して以来、やたらと飲み会で飲まされた。

 職場の先輩は前社長の息子と言えども、赤の他人である俺のことを良くは思っていなかったからだろう。


 上手いとは言えない酒を、ひたすら胃に流し込んだ。


(まあ、そのおかげで酒に詳しくなって、酒の味も覚えたわけだから感謝してるけど)


『そうなんですか!?』


 十時さんの声が弾む。


「うん、飲んだこと無かったからね」

『どうやって慣れました!?』

「僕は美味しいと感じなかっただけで飲めなかったわけじゃないからね。十時さんは具合が悪くなるなら、無理して飲まない方がいいと思うよ」


 もう今の時代、お酒の強要はハラスメントになるし。


『す、凄いですね』

「そんな要素があったかな? ありがとうございます」

『い、いえ……』

「これからも仕事頑張ってね。無理はしないようにして」

『は、はい!』

「ご丁寧にありがとうございました。それじゃあ……」

『あっ……!』


 電話越しに、十時さんの慌てた声。


「……どうかした?」

『あ、いえ……』

「そう? じゃあ切るね?」

『えっ! あの……!』

「うん」

『な、なんでもありません……』

「そう? じゃあ……」

『あっ! いえ……失礼致します』

「はい、失礼致します」


 電話を終える。お昼の時間だ。

 続きは……食べてからにしよう。




「今日は高野豆腐の煮物、とろろ昆布……」


 愛ちゃんからのメールを見て、ほっこり。


「〝午後からも頑張ってね〟かー」


 愛ちゃんのメールはいつも無機質。必要最小限しか打たない。愛ちゃんにとってメールとは、事務連絡のツールだけである。


 それが。


「頑張ろう」


 気持ちが高揚して、温かくなる。


 今黒崎くんに会ったら、きっと「色ボケで締まりのない顔をしている」と言われるだろう。


 今は休憩中。緩んでいても全く気にならない。


「午後は集中して、早く切り上げて帰ろう」


 あー、幸せ。愛妻が待っている。




 ✽



 ――トゥルトゥルトゥル


「はい」


 午後、集中して仕事をしていたら、内線が鳴ったため、俺は電話に出る。


『――会社の十時さんからお電話です』

「はい、ありがとう」


 本日三回目の電話。どうしたんだろう。


「はい、お電話代わりました」

『あ、――会社の、十時と、申します』

「いつもお世話になっております」

『あ! こ、こちらこそ……! ……』


 またしても、無言。


 なんだ……?

ご覧頂きありがとうございます。

また、評価、ブックマークも本当にありがとうございます(*^^*)


R版の閲覧、ブックマークも本当にありがとうございます!

第二夜を構想中です(*^^*)

↓R版はこちらから!コピペしてお使い下さい(^o^)

https://novel18.syosetu.com/n1609gx/


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