表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/163

第51話 新入社員

「黒崎くんって俺のマル秘情報知ってる?」

「実務に関係ない話は慎んで下さい」


 俺のマル秘情報を知りたがっていた愛ちゃんに、なんとか情報を作ってあげたいのだが……


「そんなことより、本日の会食ですが……」

「ああ」


 今日は事業拡大のため、以前パーティーで知り合った別会社の社長と会食の予定だ。


 寂しがってくれる愛ちゃんには悪いけど、今日は夕飯は別。

 遅くなるかも知れないから先に休んでもらうようにしている。




 ✽✽


「ご無沙汰しております、CEO」

「こちらこそお時間を頂戴し、ありがとうございます」


 会食となり、お互いにこやかに挨拶。

 俺と黒崎くん、相手側の社長と……


「は、はじめまして……! 十時(ととき)と申します……」


 初々しい、若い女性……


「この度の人事異動でね、新卒のこの子を秘書に抜擢したんですよ」

「そうでございましたか」


 俺と面識のあった秘書さんではなく、新人さんらしい。


「これから宜しくお願い致します」


 新卒かー、と懐かしいことを思い出しながら名刺を渡し、挨拶をした。



 ✽✽


「――では、そう致しましょう」

「宜しくお願い致します」


 会食も終盤、今後の話も上手くまとまり、そろそろお開きといったところだ。


「あれ? うちの十時はどこに行ったかな」

「私が探して参ります」

「あ、私が。黒崎くんは残っていて」


 黒崎くんは人当たりのよいタイプでは無い。ここは、俺が行こう。




「十時さん?」


 部屋から出て探していたら、廊下でうずくまっている女性を発見した。


「あっ……」

「具合悪いの? 大丈夫?」

「すみません……お酒飲めなくて……」


 俺もしゃがみ、目線を合わせる。見ると青白い。


 ……そうだよな。4月入社なら入社してまだ数日。それがいきなり社長秘書、しかも夜の会食とは……。


「だけど、具合悪くなったなんて……知られたくないんです……」

「大丈夫だよ。言わないから」

「……すみません」

「期待されているんだろうね。社長から」

「私……秘書になると思ってなくて……もう……続けられるか……」


 新入社員、出来上がっている組織に入り、これまでと違う生活を送る。


 真面目な人であれば尚更、この変化はきついだろう。


「……まずは一週間だよ」

「え……?」

「一週間頑張ってみて、次は二週間……そうやって自分の中で設定して、そして先ずは一ヶ月やってみたらどうかな。そうすれば、何かが変わるかも知れないし」


 両親が亡くなり、3月末で急遽決まった俺の入社。

 小さい弟の世話と、色々な手続き、慣れない環境に冷めた目。俺は当時、何度も胃液を戻していた。


「あんまり難しいようなら人事課とか……そっちの会社のシステムは分からないけど、相談出来る人を探して相談したら良いと思うよ」

「はい……」

「戻れそう? もう少し休む?」

「あ、も、戻ります……」

「社長が心配してたよ。新入社員は大変だよね」

「ありがとうございます……」


 少し話して、顔色も良くなって来た。



「あー、戻って来たか」

「あっ……席を外して申し訳ございませんでした」

「社長、そろそろ良いお時間でございますから、また是非私と二人で食事をしませんか?」

「なんだ、今日はもう行かないのか?」

「明日も早朝ミーティングなんです。残念ですが、今度またゆっくりとお時間を頂きたいと思います」

「ああ。私が今日しか時間が無かったから……すまなかったね」

「いいえ、こちらこそ。良い事業になりそうで――」


 挨拶をして、お開き。

 社長と十時さんを乗せたタクシーを見送り、俺と黒崎くんもそれぞれ帰路についた。




 ✽✽


「それ、結ちゃんに惚れたな」


 一次会でお開きとなったため、早く帰り着いた俺を愛ちゃんが出迎えてくれた。


「新卒ってことは20代前半くらいだよ」

「大人の男の魅力にやられてるはず」


 今日起こったことを愛ちゃんに伝えると、そう返事が返ってきた。


「焼きもち?」


 俺は嬉しくなって愛ちゃんを抱きしめる。


「そうだよ。結ちゃんはなんせジェントルマーンですから」


 はぐらかされると思えば、肯定された。


「そう?」

「貴ちゃんのこと……ありがとう」

「解決したなら良かった」

「……ジェントルマーン」


 照れて、不貞腐れたように言う。


「あーかわいい」

「違うもん、戸塚さんが言ってたの」

「戸塚さんが?」

「CEOは家でもジェントルマンですかって」

「そうなんだ。外面良男?」

「早く寝たら? 早朝ミーティングなんでしょ!」

「無いよ、早朝ミーティングなんて」


 あれは、辛そうな十時さんを早く返すための措置。社長とはまた今度二人で飲みに行く約束もしたから大丈夫。


「外面良男」

「あ、やっぱりそうなんだ」


 悪態をつきながらも、愛ちゃんが俺に腕を回してくれた。


「俺は愛ちゃんのものだから」

「……」

「指輪もしてるし」


 俺の左手の薬指には愛ちゃんとお揃いの結婚指輪がある。カモフラージュでもなんでも無い。正真正銘、俺は愛ちゃんのものだ。


「こんなに早くなるとは思わなかったな」

「そうね」

「どうします? 殿下」

「……」


 俺は愛ちゃんを誘う。


「ちゅっ」

「んっ……」


 軽くキスをすると、愛ちゃんも応えてくれる。


「愛ちゃんの部屋に行こうか」


 遅く帰って、添い寝だけだと思っていたけれど、これはこれで、頂いたチャンス。


「好きだよ」


 今日も俺は愛ちゃんと夜を過ごす。



ご覧頂きありがとうございました!

評価、ブックマークも宜しくお願い致しますm(__)m


「戸塚さんが言っていた」の件はシリーズ小説

【脇役女子、奮闘します!〜冷酷な彼にデレて貰いたいんです〜】の【第12話 始まった飲み会②】にて掲載しております。こちらも併せてお願い致します(*^^*)


この二人の初夜を【R版】としてムーンライトノベルズさんの方で掲載しております。

↓URLです。コピペしてお使い下さい。

https://novel18.syosetu.com/n1609gx/


一日一更新を基本に小説をアップしております。

こちらのアップが無いときは【R版】を更新していると思いますので、気長に待って下さると幸いです(^o^)

もちろん、【R版】に遊びに来て下さればもっと嬉しいです♡


宜しくお願い致しますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ