第49話 義兄弟問題!俺を頼りにしてよ
「私のこと……好き……?」
「決まってるだろ? 愛してるよ」
ナーバスになっている愛ちゃんにしっかりと伝える。
「言われたら嬉しい言葉、私結ちゃんに言ってない……」
「今度からは言ってくれるの? それは楽しみだな」
「うぅ〜」
「あー、本当にかわいい。最高だね」
俺に身を委ねて、甘えてくれている愛ちゃんの身体を更に抱きしめる。
「私は見る影もなく太って、結ちゃんの足を痺れさせてる!」
「……どうしたの、急に」
抱きついたまま、叫ぶ愛ちゃんがかわいい。
愛ちゃんの重みが心地良い。何を気にしているんだろう?
「好きだよ。中々伝わらないね、俺の重ーい愛は」
「……」
「分かってる? 俺が愛してるのは愛ちゃんだけ」
「私……結ちゃんがいないと……生きていけないよ……」
……え。
「だから、いなくならないように、ずっとこうして抱きついとく」
愛ちゃんの腕と足に力がこもる。
……か、かわいい……!
「骨抜きです」
「本気です」
「最高です」
「……うっ」
「何があったの? こんなにかわいい愛ちゃんが悲しんでるのは苦しいよ」
「……笑って下さい」
「笑わないよ。解決してあげたい」
いつも……俺ばかりが好きだと思っていた。
「俺を、頼りにしてよ」
俺は愛ちゃんのナイトになりたい。
「……私は変態です」
「…………は?」
暫しの沈黙の後、愛ちゃんが重たく口を開いた……が、その言葉に呆気にとられる。
「どうぞ、笑って下さい。指を指して、ゲラゲラと……」
「いや、笑わないけど……」
ちょっと検討違いだったから、拍子抜けした。
「腹を抱えて、転がって……」
「笑わないから!」
もうその姿が愛おしい。
「……そのうちラグビーボーイズにも知れ渡ります」
「ラグビーボーイズ?」
なんだろ? 流行っている芸能人のグループかな?
「うっ……!」
「えっ! ちょっ、ちょっと待って! 何があったの!?」
止まったと思っていた愛ちゃんがまた涙ぐむ。
俺が聞き出すと、愛ちゃんは言いにくそうにこれまでの一連の流れを教えてくれた。
「ちょっと貴将の部屋に言ってくる」
まさか愛ちゃんに嫁姑問題ではなく、義兄弟問題が起こっていたとは……!
「いいよ! 私が告げ口したみたいじゃない……!」
「告げ口じゃない、相談!」
「14歳下に言い負かされたって嫌よ!」
「俺の弟だから、気を遣っただけだろ!?」
貴ちゃんにはしっかりと伝えて、二度としないように約束して貰わないと!
✽✽
貴ちゃんの部屋に行き、たっぷりとお説教した。
「愛ちゃんに謝るって」
「いいよ、もう……」
「良くないよ。愛ちゃんが落ち込んでいるなら」
「……」
「俺の子育てがなってなかった。愛ちゃんの言うとおりだ」
「ごめんなさい……」
「なんで愛ちゃんが謝るんだよ。謝らないといけないのは俺の方」
俺のマル秘情報だけではないとは思っていたが、まさかこんなことを使って口止めしていたとは……!
「うっうぅ〜……」
「ごめん、泣かないで……」
立ち尽くして泣く愛ちゃんを抱きしめて頭を俺に近づける。
愛ちゃんの涙が、俺に染みるように。
「うっ……」
「これからは隠し事しないで、なんでも俺に言って欲しい」
知らずに、勝手にグルだと決めつけてしまっていた。猛省。
「言えないよ……私が変態って」
「…………ふっ」
堪えたが、その落ち込んだ態度と相反する言葉についに堪えきれず吹き出してしまった。
「ひどい」
「ごめんなさい」
「……結ちゃんのせいだもん」
「俺の?」
「結ちゃんと一緒にいて変態にならない方がおかしいから」
以前、俺が言った言葉をそのまま使う愛ちゃん。
「私……結ちゃんに作り変えられちゃった……」
そう言って俺に寄りかかり、身体を預けてくれる。
そんなこと言われたら……
「どこで覚えたの? そんな殺し文句」
「死なないでよ。私、結ちゃんがいないと生きていけない」
「それは最高だね」
願ってもない最上級の言葉。俺の自己肯定感を底上げしてくれる。
明日もしっかりと働いて、愛ちゃんに楽をさせてあげたい。
……生きる目的も見いだせず、与えられたお役目のためにだけ動いて来た。当時の俺は初期設定された動きを繰り返すロボットだったと思う。そんな人間だった。
〝お兄ちゃん、俺達これからどうなるの?〟
直くんからの、あの一言で、俺は変われた。
――守るものがある。それが、俺の支えだ。
「愛ちゃんはどう変態なの? 俺に見せてよ」
俺は寧ろ好都合。
「知ってるくせに……」
「全然知らないよ。愛ちゃんが俺に隠すから」
貴ちゃんから言われて隠すくらいだからな。
「……」
「かわいい」
俺の腕の中でモジモジしてる。
「んっ、……」
意を決したように愛ちゃんが俺の首筋にキスをした。
「はむっ」
――ちゅぅーーっ……!
そのまま必死に俺の首筋を吸う。
「……つかない」
「キスマーク?」
「……」
「俺につけたいの?」
もうかわいすぎて、愛ちゃんが愛おしくて、俺は自然と笑顔になる。
「結ちゃんは私のだもん……」
「そうだね」
愛ちゃんが拗ねたように言う、その姿がかわいくてかわいくて……
「一緒にお風呂に入ろうか」
俺は続きを促す。昨夜のやり直しだ。
「うん……」
「俺が綺麗に洗ってあげる。汚くても好きだけど」
「……」
あ、照れた。
「……私がする」
「え?」
「私の結ちゃんだから、私がお世話する。……んっ」
愛ちゃんの顔が近づき、キスをされた。
「私の。……ちゅぷ、んっ」
決意のこもった目で見つめられ、すぐさま二度目のキス。
「好きだよ」
「んっ、私も、んぅ……」
「はぁっ……続きは……?」
「あっ……結ちゃんが……好き、んー!」
ようやく待ちに待った続きが聞けて、俺達は何度もキスを繰り返した。
これから、ご褒美が待っている。
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