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第40話 俺と社長

 ――コンコン


「はい?」


 塚本くんが戻るとすぐにノックされた。


(……もしかして、黒崎くんが再度注意に現れたのか?)


 ――カチャ


「失礼致します」


 出た! 黒崎くん!


……と。


「CEO、社長がお呼びでございます」


 社長秘書の友田さん。


「分かった。今から行くよ」


(……何かしたっけ?)


 俺は慌てて席から立ち上がり、自室を後にした。




 ✽


「社長から要件は聞いてる?」


 社長室に向かう途中、友田さんに聞いてみる。


「いいえ」

「そっか。ありがとう」


 大抵この流れは怒られるパターン。


 ……いや、それを考えたら本当にそうなりそうだ。ここは冷静に。


「友田さん、この間はアドバイスをありがとう」


 話を変えて、気を紛らわす。


「アドバイス……?」

「女性100%なら安心って思っていたよ」

「ああ……あの時の……」

「信頼はしてるけど、心配になってね」

「奥様が羨ましい……」

「え?」

「CEOにこんなに思われている奥様が羨ましいです……」

「そう?うっとうしいだろうから、そう言ってくれると安心するよ」

「奥様だけではありません……私……CEOの歴代の彼女全てが……羨ましい……」

「歴代の彼女?」


(……いないけど。なんかここでも誤解が……)



 話していたら社長室の前についた。


「ありがとう、じゃあ社長と会ってくるね」

「あっ……」



 ――コンコン


「私です。お呼びでしょうか」

「入れ」

「失礼致します」


 ――カチャ


 扉を開けて社長室に入る。物は……飛んでこなかった。


「おい、いつまでお前はいるつもりだ!」


(やっぱり怒られるパターンだった……)


「いるつもり、ですか?」

「お前は結婚して婿に行ったろう! もうこことは一切関係ないのを分かっているのか!!」


 え、今更?


「今すぐ退け。そして直之くんを社長にするんだ」

「まだ直之は25歳です。少々気が早いかと存じます」

「私が会長としてバックアップする。時期は早い方がいい。お前みたいなものに会社を良いようにされ、直之くんが一般社員に使われるなぞ言語道断!」


 叔父さんは本当に直くんの味方だ。


 私利私欲の人間では無い。


「今、直之が社長に就任するとなると、他社員の心情を無に扱うこととなります」


 俺が代表についたのは26歳の時。だから叔父さんはそろそろだと思っている。


「話に聞くと、お前は直之くんに経営学を教えていないらしいな。留学もさせずに……! やはり乗っ取るつもりか!」

「そのようなつもりは毛頭ございません」


 叔父さんの言いたいことは分かる。俺はこの会社を継ぐために育てられた。会長から。


 会長から経営学を学び、留学も決められていて、そこで更に経済と語学を学んだ。


 直くんが跡取りなら、俺と同じ環境を用意しておいて当然なんだ。


「……先代ご夫妻が亡くなり、心のケアの方を優先させて頂きました。直之と貴将は血の繋がった、たった二人の兄弟でございますから、離れ離れにするという選択肢を用意することが出来ませんでした。申し訳ございません」


 俺は深々と頭を下げる。


「だったら今すぐ直之くんを社長にしろ。私が教える」


(何を教えると言うんだ)


「物事には最適な時期があるかと存じます。直之の社長就任は、時期を間違えるとこの会社に勤めてくれている社員を失う形になるかもしれません」


 俺がそうだったように。優秀な社員の流出は避けたい。


「そんな社員なぞ取るに足らん! 即刻やめさせろ!」

「そのようなことでは我社の未来はありません」


 今日は物が飛んでこないだけ、叔父さんの機嫌はいい。


「私と社長は、目指す所は同じでございます」


 目的は同じ。直くんを社長に、だ。


「私はその目的の為に、出来る限りのバックアップをしております」

「白々しい……!」

「直之が社長就任後、社員が流れるようでは、直之の信用が無くなります」

「……」

「そうなれば、直之の手腕を疑われ、我社は衰退の道を進むことになりかねません」

「そのようなことになるわけ無かろう! 直之くんは前社長の息子だぞ!!」

「今は一族経営をしている会社自体が少なく、ましてや、若い企業家がどんどん出てきております。〝前社長の息子〟という看板はそのような方には何一つ通じません」


 叔父さんは自分の仲のいい人としかコミュニケーションを取らない。今の経営者に昔の理論がまだ通じると思われている。


 ……会長は、あの時代で既にそれを見越して俺に経営学を叩き込んだ。


 おかげで俺はこのポジションを手放さずに済んでいる。


「社員のバックアップが無ければ、直之は裸の王様でございます」


 会長の初孫、お父さんとお母さんの第一子。

 由緒正しきお血筋を、そのようなことにさせるわけにはいかない。



 それを……叔父さんだって分かっているはずだ。





 ✽✽✽


「今日は無傷のようですね」


 自室に戻ると黒崎くんに声をかけられた。


「ありがとう。何とかね」

「先程のことを追求したいところですが、社長のあとということで大目に見ましょう」

「良かった。社長に感謝しないとね」


 ながら決裁はもうしません。


「……黒崎くんは子供の頃何になりたかった?」


 直くんを社長に、で昨日の愛ちゃんとのやり取りを思い返した。


「プライベートですので」

「それは失礼しました」


 ハラスメントには気をつけよう。



 なりたかったもの……か。

ご覧頂きありがとうございました!


結ちゃんと友田さんのやり取りが好きです(笑)


宜しければ評価、ブックマークをして頂けますよう宜しくお願い致します(*^^*)

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