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第34話 俺のこと、好き?

「それでどうなったの?」


 家に帰り、この一部始終を愛ちゃんに告げ口。


 俺に対して怒っていた愛ちゃんも、この内容の方が気になったようで、普通に会話に乗ってくれた。良かった……。


「取り敢えず黒崎くんの言い方を注意してたら、電話がかかってきてお開き」

「結ちゃんびっくりしたね」

「お父さんとお母さんの喧嘩を思い起こさせる時間だったな」


 お父さんは基本的に怒らない。いつもお母さんが怒って、お父さんが謝り倒す。これが両親の喧嘩スタイル。


 ただ……


「お母さんが激しかったからなぁ」

「少年結仁、夫婦喧嘩に挟まれる、の巻、ね」


 そう言って愛ちゃんがクスクスと笑う。その笑顔に癒やされ、俺は愛ちゃんに手を伸ばす。


「……触るんじゃない」

「昨日から一度も触ってない。充電」


 愛ちゃんを抱きしめて、思い切り息を吸う。俺は昨日、愛ちゃんを抱きしめて寝れなかった。


 だから、俺は愛ちゃん欠乏症だ。


「私は行くからね、ヨガ」

「うん、オンラインでね」

「またしても言い合うつもり?」

「言葉って大切だよね……」


 今日の二人を見て思った。


「俺は愛ちゃんを誰にも取られたくない」


 俺がずっと伝えたかった思い。


「愛ちゃんは俺のだから……」


 やっと手に入れた、人生初の俺だけのもの。


「俺の知らない所で俺以外の誰かが愛ちゃんに思いを寄せるのも嫌なんだ」


 幼稚な独占欲。ただそれだけだ。


「だからといって愛ちゃんの行動を抑制する権限は俺には無いから……」


 今の俺の行為は外に行きたい妻を拘束するモラハラ夫。


 黒崎くんの言い方なんかより、たちが悪い。



「……ゆーいちゃん!」


 愛ちゃんの明るい声と共に、俺の頬を両手でギュッと挟まれた。


「ふぁに(何)?」

「かわいい顔ねー」

「……」

「今日のお弁当美味しかった?」

「うん」

「不自然なものを食べるより、ご飯と梅干しがあれば、人間生きられるからね。……ただ、今なら海苔も入れてあげたら良かったなって後悔してる」


 そう言う愛ちゃんの目はもう怒っていない。


「……私だって結ちゃんがモテモテだと焼きもちやくよ」

「そう……」

「逆に誇らしくもある」

「?」

「さすが結ちゃん! っていうのと、そんな人が私の夫か、って誇らしい」

「……」

「私はきちんと告白されたのも結ちゃんが初めてだから、よく分からないけど……もし……」


 愛ちゃんが俺を真っ直ぐ見つめて目を細めて微笑む。


「もし、私がモテモテになったら、そんな私を手に入れたのは俺だって、自信に変えてほしい」

「愛ちゃん……」

「結ちゃん、君は選ばれし男だよ」


 年配男性風に言い、俺の肩をポンポンと叩く。その言葉と動作に、張り詰めていた物が喉へと上がってくる。


「……愛子」

「おーう……」

「照れたねぇ。かわいい」

「……」

「俺のこと……好き?」


 黒崎くんと戸塚さんの二人を見て思った。何を言われようとも、どんなに怒りが湧いても、結局は好きあってる。


 そこについて、俺は言葉にされないと自信がない。


「だっ! だだだ……大好きですよぉぉぉー?」


 頑張りかけて、だめだった。だけど、頑張って言ってくれた。


「惜しい。もう一度」

「言ったから!」

「今のはノーカウント」

「……向こう向いて」

「嫌だよ。ここに座って言って」


 そう言って俺は近くの椅子に腰掛け、自分の膝をポンポンと叩く。


「――……」

「どうぞ、殿下」

「〜〜!」

「照れてもじもじする愛ちゃんは最高にかわいいね」

「……失礼します」


 俺が折れないのを悟ったのか、愛ちゃんが動きだした。


「わっ!!」


 俺は腕を取って引き寄せ、横抱きに愛ちゃんを抱える。


「どうぞ、殿下」

「〜〜!」

「俺の目を見て言ってね」

「注文が増えてるよ!」

「愛ちゃんが早く言わないからだよ」

「腹黒大魔王!」

「そうだよ。その腹黒大魔王のことを? ……はい、どうぞ」

「……結ちゃんが……好き……」


 照れて、恥ずかしさに目を潤ませて、真っ直ぐ見つめて言ってくれた。


「大好き……」


 そう言って、顔が近づく……





 これは反則だ。





 ✽✽


「CEO、昨日はお見苦しいところをお見せして……」


 翌日、戸塚さんが自室にやって来た。

 昨日のような殺伐感は無い。寧ろ縮まっている。


「黒崎くんと仲直り出来たみたいだね」

「あっ……はい……」


 照れたように頷く戸塚さん。良かった。


「おかげ様で、ラブラブです……ふっ」


 よっぽど昨日何かあったのか、笑顔を堪えきれないようだ。


「安心したよ。良かったね」

「はい。私のダーリンは口数が少ないものですから」

「そうだね。だから黒崎くんの言葉には重みがあるよね」

「あっ、分かります〜?」


 いい事を言ったのか、戸塚さんが途端に笑顔になる。


 ここも解決したようだ。


 そして、俺と愛ちゃんも……。


「私もCEOと奥様を見習って喧嘩しないようにします」

「僕達も喧嘩するよ」

「軽く流すくらいにですよね? それは喧嘩と言いませんよ〜」


 いや、結構激しいけど……。またしても誤解が。


「奥様はCEOがいらっしゃらない間、どう過ごしてるんですか?」

「今度からヨガに行くことになってるよ」


 そう。昨日あれから話し合って、俺はモラハラ夫から卒業した。不安が無いわけでは無い。


「わー、素敵ですねぇ」

「そうかな」


 色々あったけど、俺達も黒崎くん達も取り敢えずは丸く収まった。

ご覧頂きありがとうございましたm(_ _)m


丸く収まったのか?私は結仁くんが少々不憫です(´口`)

皆様はどうでしょう?


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