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第33話 女性陣のボルテージ

「今日のお弁当は何かな」


 翌日、楽しみにしてた愛妻弁当を広げる……と。


「……日の丸弁当?」


 全面にご飯が敷き詰められ、その中央には愛ちゃんお手製の三年ものの梅干し。


 梅干しは古いほど良いらしい。


 ……それは置いといて。


 昨日、キヨさんからの夕飯の合図で一先ず言い合いは終了。


 愛妻の外面良子さんは何事も無かったようににこやかに食事を楽しみ、以後、俺とは冷戦。


「まあ……言い合いながらも一緒に寝てるし」


 暴言を吐かれながらも、ベッドに境界線を仕切られながらも、同じベッドで寝た。


「あー、幸せ」


 喧嘩するほど仲が良い。これを体現しているのだろう。


「いただきます」


 手を合わせ、食べ始める。喧嘩していても変わらずお弁当は作ってくれる。


(お父さんとお母さんの喧嘩は激しかったからなぁ)


 思い出して、身の毛がよだつ。


「うん、塩気があるとご飯は進む」


 よく噛むと甘味も出てくるし。


「美味しい……」


 あとで「美味しかった」ってメールを打とう。



 夫婦関係は円満だ。





 ✽✽✽


「室長は私が怒っているのに、何一つ素知らぬ顔をするんです! どう思いますか!?」


 午後、仕事を進めていると秘書課の戸塚さんが自室にやってきた。


 話の内容は戸塚さんの彼氏の黒崎くんのこと。


 黒崎くんは秘書室の室長も兼務している。


「怒ってる私の方が悪いみたいな態度を取るんです!! あんまりですよ!」

「……原因は何だったの?」


 その剣幕に戸塚さんが大層立腹している事を悟る。


「私は悪くないですから!」

「黒崎くんが悪いんだね?」

「……そこまでは言っていません!」

「じゃあ……黒崎くんが半分悪いのかな?」

「私は半分も悪くありません!」


 どうしよう。原因も分からなければ、どっちの言い分も分からない。これだと解決のしようがない……。


「いっつもいっつも……肝心な事は何一つ言わないくせに……!」


 隠し事をされたのか?


「私には〝報告義務を怠っている〟って!」


 ……仕事の話かな?


「だから私も怯まずに言ったんです! 彼女に報告くらいして下さいって!!」

「うん」

「そしたらあいつ……! 何て言ったと思います!?」

「うーん……」


 この戸塚さんの剣幕に、間違えてはならないという緊張感に襲われる。


「……〝実務に関係ない話は慎むように〟とか?」

「違います!!」

「すみません……」


 これは俺がよく黒崎くんに言われてる言葉なだけだった。他には……


 分からない。黒崎くんが彼女に言うような台詞が全く頭に浮かばない。


「〝なぜ一々お前に言わねばならん〟っです!!」

「わーお……」


 びっくりし過ぎて、つい愛ちゃんの口癖が飛び出す。


 俺、愛ちゃんにそんな事言えない。恐ろしい。


「さすがに頭に来て……私、怒っているんですよ!?」

「そうだね。それは黒崎くんの言い方に問題があるね」

「そしたらあいつ……! 何て言ったと思います!?」

「うーん……」


 黒崎くんは謝りそうにない。となると……なんだ?


「〝黙れヒステリー〟っですっ!!」

「おーう……」


 びっくりし過ぎて、またしても愛ちゃんの口癖が飛び出す。


「誰のせいでヒステリーになってると思ってんのっつー話ですよ!!」

「そ、そうだね」

「CEOは奥様がこの言葉を聞いて! 本当にヒステリックになったらどう思いますかっ!!」

「僕は……絶対そんな事言わないと思う……」


 俺、愛ちゃんにそんな事言えない。恐ろしい。


「と、とにかく、その言い方は黒崎くんが良くないよ。他の社員とのコミュニケーションもあるから、そこは僕から改めるように伝えておくから」

「だめです」

「え?」

「室長に私がCEOに告げ口したって知られたら余計関係が崩れます」

「そ、そうかな。じゃあ、遠回しに……」


 ――コンコン


 解決策を相談していると自室にノック音が響いた。


「はい?」

「失礼致します」


 ――ガチャ


「あ」

「ひっ!」


 現れたのは当の黒崎くん。戸塚さんは驚いたあと、応接スペースのソファーの裏にしゃがんで隠れた。


「何かあった?」


 戸塚さんが隠れたため、黒崎くんにはバレないように通常通り話す。


「CEOには何も用などございません」


 冷たく俺に言い放つと、黒崎くんはソファーの方を向く……


「おい、いつまで席を外しているつもりだ。会社にプライベートを持ち込むんじゃない」


 戸塚さんがいることに気づいているのか、ソファーに向かって言い放った。


「……何でも話すって誓って下さい。今ここで」


 戸塚さんは観念したのかソファーから姿を現さないものの返事をした。


「……私に一切干渉するな」

「くーろさーきくーん……」


 火に油を注ぐ黒崎くんに、げんなりとする。


「全ては言い方だよ。今の黒崎くんの言い方は改善しないと」


 取り敢えず、今の言葉は俺にも聞こえてたわけだから、ここは言っておこう。


「……CEO、どっちの味方ですか?」


 姿を現さない戸塚さんから声をかけられる。(味方って……)


「怒るんならもっとけちょんけちょんに怒って下さいよ!!」


 えっ! 俺っ?


「黙れヒステリー」

「くーろさーきくーん……」


 更に油に火を注ぐ黒崎くん。……みんな仕事をしてくれ。

ご覧頂きありがとうございました!


黒崎くんと戸塚さんの恋愛模様は別小説

【脇役女子、奮闘します!〜冷酷な彼にデレて貰いたいんです〜】をご覧下さい♡


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