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第31話 愛妻を狙う狼は男だけではなかった……!

 

「ヨガ?」


 海外出張から帰って来た。自分の部屋で、上着を脱いでいると少し前に実家から戻っていた愛妻から報告を受ける。


「そう。ヨガ。女子ばかりだから問題無いよね?」


 そういう妻の顔には決意が感じられる。

 実家で何かあったのだろうか。


「まぁそれなら……。道中気をつけてね」

「歩く」

「ここから一駅って言っても結構あるよ」

「それ以降は聞く耳持ちません」


 そう言って耳を塞ぐ愛ちゃん。久しぶりなのもあるがめちゃくちゃかわいい。


「皆様お元気だった?」


 俺はクローゼットを閉め、愛ちゃんを抱き締める。


「元気過ぎた」

「それなら良かった。安心だね」

「歩いてヨガに行って歩いて帰って見返してやる……!」

「……何かあった?」


 なんか愛ちゃんのボルテージが……。


「……くれぐれも結仁くんに宜しくって」

「そう? 今度は俺も挨拶に行かせて頂かないとね」


 ……でもその前に。


「充電」


 俺は愛ちゃんを強く強く抱き締める。離れていたのは一週間。


 仕事ばかりしていたけど、夜は中々寝付けなかった。


 愛ちゃんに会いたくて、触りたくて、抱き締めたくて……。


「愛ちゃんの料理が恋しかったな」


 回想。仕事は有意義に進んだ。何も問題無い。


「明日のお弁当何がいい?」

「決まってるだろ、ち……」

「それは今日もう食べるでしょ……」


 いつものように「愛ちゃん」と答え、怒られるかと思ったら……


 顔を真っ赤にして、俯きながら答えてくれた。


「もちろん。いただきます、殿下」


 どうせ死ぬなら今がいい、とはもう思わない。


 俺は日々、幸せが更新されて行く。



 これから先も、もっともっと幸せが待っている。



 長生きしよう。





 ✽✽✽


「あら、CEOお疲れ様です」


 翌日、会社で弁当箱を洗うため、給湯室に行くと社長秘書の友田さんと遭遇した。


「ご苦労様。いつもありがとう」

「いいえ……あら、CEO……愛妻弁当ですか……?」

「あ、うん。いつも作ってくれるからせめて洗うくらいは、と思ってね」

「CEOらしいですね……」


 友田さんがにこやかに微笑む。友田さんも弁当箱を洗っていたため、雑談をしながら待つことにする。


「いかがですか、ご結婚されて」

「ありがたい事に幸せだよ」

「まぁ……。奥様は専業主婦でしたっけ?」

「ああ、うん。家で料理がしたいって言ってくれてるから、役割分担する事にしたんだ」

「私も……得意なんですよ、料理……」


 友田さんの笑顔に影が落ちる。


「そうなんだ。すごいね」

「得意料理は……なんだと思います……?」

「うーん……」


 何だろ? 範囲が広すぎて全く分からない……。


「ビーフシチューなんです」

「そうなんだ」

「じっくり煮込むんです。ぐーつぐつ……」


 俺を見つめて、そう言う。


「ぐーつぐつ……」

「……味が凝縮されて美味しそうだね」

「ええ……CEOにも食べさせてあげたい……」


 弁当箱を洗い終えた友田さんが俺に近づく。


「ありがとう。コンプライアンスに違反するから気持ちだけ貰っておくね」


 俺は場所を移動してシンク前に立つ。


「……奥様は日中何をしているんですか?」

「今度からヨガに行くって言ってたよ」


 俺は弁当箱をシンクに置いて洗い出す。


「本当はジムに行きたかったみたいだけど、僕の狭量に合わせて女性だけのところにしてくれたんだ」

「まぁ……CEOも焼きもちとか焼くんですか?」

「僕は子供っぽいよ」

「……嫌だCEOったら……敵は男だけだとお考えですか……?」

「え……?」


 手を止め振り向くと、妖艶に微笑む友田さんが……


「私、ティラピスしてるんですよ。会員は女性だけですわ」

「そうなんだ」

「……綺麗な女の子達ばかりなんです……」

「へー」

「CEO……私……女の子もいける口なんですよ……」

「……え?」

「それでは、失礼致します」


 固まった俺に頭を下げて去っていく友田さん……。



 え。



 ……え゛。





 ✽✽


「結ちゃん、早かったね」


 あれから黒崎くんに断って、一目散に帰ってきた。


「……大丈夫結ちゃん? 息切れてるけど」

「はー、はー……! ち、愛ちゃん……!」

「まだ16時だよ。何かあったの?」


 俺のこの動揺っぷりに何も感じていない愛ちゃん。


「ヨ、ヨガ……! はー、はー……」

「ヨガ? あ、今日体験行ってきたよ。身体バキバキだけど、凄く楽しかったからここに決めようと思って……」

「ヨガ……、はー……や、やめよう!」

「……は?」


 俺は本当に抜けている。友田さんにアドバイスを貰わなければ何も考えていなかった。


「結ちゃん、落ち着いて。息が整ったら喋ろうね」


 今だ玄関で靴も脱がず膝に手を当てて息切れしている……。


「き、危険だ……!」

「だから意味が分からないって」

「はー、はー……」

「結ちゃん走って帰って来たの?」

「っ、女性だけだからって油断してた……!」

「だから、さっきからどうしたのよ」

「愛ちゃんが女性に狙われる可能性があるから!!」


 盲点だった……。愛ちゃんの周りに寄ってくるライバルは男だけだと完全に油断していた!


「何それ? ドラマの見すぎね」

「俺はドラマとか見たことないよ!」

「あー、もう。分かったから。今日はお仕事もう良かったの?」


 ……全く取り合ってくれない。俺の奥さんは本当に危機感が無い……!



 全く無い……!!

ここまでご覧頂きありがとうございます!


結仁くんと友田さんの関係はシリーズ小説

【脇役女子、奮闘します!〜冷酷な彼にデレて貰いたいんです〜】を拝見して頂けると分かるかも……(*゜O゜*)))

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