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第17話 野獣の群れには連れていけません

「出来上がり〜」

「美味そう!」


結局途中から愛ちゃんの手を借りて、出来た。


(これで、あの時の愛ちゃんをもう一度見れる!)


「お腹空いたねー。座って食べよう」

「うん」

「丁度いい感じに紅しょうがも漬かってて良かったー」


ホクホクと冷蔵庫から愛ちゃんがお手製の紅しょうがを取り出した。

すっごく、かわいい。


「何かね、ペテン師くん」

「何も言って無いよ」

「なんか顔が怪しい」

「言葉にしなくても伝わるっていいね」


夫婦って感じ。


「「いただきます」」


向かい合って座り、食べ始める。


「もち粟は増血作用と血液循環を良くする働きがあるから沢山食べてね」

「美味しい」


塩だけでこんなにトロトロでクリーミーなスープが出来るんだ。


「結ちゃんの作品だよ」

「かなり愛ちゃんの力を借りたけどね」


俺がしたのは雑穀を洗うのと沸騰した瞬間を愛ちゃんに伝えただけ。


「結ちゃんポテンシャルはあるよ」


そう言って、焼きうどんをすする愛ちゃん。

かけうどんの時とまではいかないけど、眼福。やっぱりうどんにして正解だ。


「ありがとう」

「何よ。ソース付いてた?」

「いや、褒めてくれたから」


早くもう一口食べないかな。


「結ちゃんも早く食べなさい」

「はーい」


遮断された。残念。




✽✽✽


美味しい昼食を食べて、リビングで一休み。


「…ちょいとスパダリさんよ」

「すぱだり?」


あれ?デジャヴかな?


「これ、いつまで続けるつもり?」

「一生」


すかさず言い返す。

今、リビングのソファーに横向きに座って、また後ろから愛ちゃんを抱き締めている状態だ。


「リアルに無理がある」

「じゃあ、一分一秒でも長く」

「〜!」

「好きなだけ甘えて良いって言ってくれたよね」

「その言葉の賞味期限は切れました」

「上手い言葉を考えついたね」


楽しい。俺はまた愛ちゃんの肩に顎を乗せる。


「あー、か…」


わいい、は、言ってはいけない。


「何よ」

「何でもありません」


良かった。セーフだ。


「明日夕方さー、貴ちゃんが帰ったら、晩ごはんは外で食べない?」

「うん、いいよ」

「あの大量の肉食を私は作れません」

「運動量も凄いからね」

「じゃあ二人で迎えに行って、そのまま行ったら丁度いいね」

「だめ」

「は?」

「危険」

「何が?」


かわいい子供達とはいえ、皆男。しかも厳つい大学ラグビー。


「ちょっと前までは〝見せびらかしたいから早く試合無いかな〜〟って言ってたじゃない」

「その言葉の賞味期限は切れました」

「私の言葉よ」

「もう〝見せびらかしたい〟は撤回したよ」


あの野獣の群れに愛ちゃんを連れて行くなんて言語道断。


「貴ちゃんみたいな屈強な男の子が沢山いるんでしょ?ちょっと見てみたい」

「浮気発言」

「生のスポーツ選手見たいって言ってるのと同じ感覚よ」

「だめ」


サラッと浮気発言をされた。益々付いて回らないと!


「ちょいとそこのベイビーさんよ。職場でのジェントルマンはどこにいったの?」

「意識してる訳じゃないんだけどね。なんか色々と誤解されてるみたい」


結婚してすぐの時に、戸塚さん達と愛ちゃんとで飲みに行った。その時の俺を見て、このかわいい愛妻から新たに〝外面良男〟というニックネームがつけられた。


俺から言わせて貰ったら、愛ちゃんの方がよっぽど〝外面良子〟さん。


「俺はあの時初めて料理を取り分けて貰ったよ」

「それで照れてたのね」


いつも取り分けるのは俺の仕事。いつものように取り分けてたら、俺の分を愛ちゃんが取ってくれていた。


「人生で初めての出来事をあの時も愛ちゃんがしてくれた」

「それは良かった」


くすぐったくも、嬉しい。それが、あの時の心境だった。


「愛ちゃんが塚本くんに絡まれなくて良かったよ」

「結ちゃんと話したいだけだったと思うよ」

「いや、塚本くんは女性と会ったら口説くのが礼儀だって前に言ってた」

「それで結ちゃんあんなに私をガードしてたのね」

「愛ちゃんをほったらかしにしてしまってごめんね」

「そんなことないよ。戸塚さんがずっと話しかけてくれてたし、職場のペテン師くんを見れて良かったよ」

「外面良男?」

「ううん。…か…かっこ良かったですよ…」


照れて、しどろもどろ。めちゃくちゃかわいい。


「ありがとう」


あまりのかわいさにちょっかいを出したいところだけど、ここはやめておこう。きっと、この状況を強制終了される。


「塚本さんって若いのにもう部長なんだね」


恥ずかしさを紛らわすように、話は営業部の塚本くんに。


「営業部の中では一番年上なんだよ」

「えっ!?」


愛ちゃんが驚く。まあ、無理も無いか。


「会社は赤字の一途で、尚且つこれまで自分の下にいた高卒のコネ入社のボンボンが裏で筆頭株主になってて、代表になるって知られたら…ね」

「…結ちゃんのこと?」

「だから皆辞めちゃったんだ…」


思い出して、ちょっとしんみり。残ってくれたのは後輩だけ。本当にありがたい。いい後輩に恵まれた。


「皆さん、お父さんが社長の時の全盛期に入社した方ばかりだから。有能な分、引き抜きがあったんだよ」


間もなく破産。当時の我社はそんな感じだった。


「…皆さん今頃後悔してるね」

「後悔?」


愛ちゃんが話しだした。


「今の結ちゃんを見て、きっと後悔してるよ。辞めなきゃ良かったって」


そうハキハキと励ますように言ってくれる愛ちゃんに堪らない気持ちになる。


「愛ちゃん、愛してるよ」

「おーぅ…」


もういい加減慣れても良さそうなのに。


「好きだよー…慣れた?」

「慣れまへん」

「なんで関西弁?」


あまりのかわいさにクスクスと笑ってしまった。


「結ちゃんもお兄さんと話すとき関西弁だよ」

「標準語とミックスされてなんかとんちんかんだけどね」

「いえいえ、イケメンでございますよ」

「ありがとう」


褒められた!


「ちょっと食べ過ぎたなー、眠くなっちゃった」

「寝ていいよ。膝枕しようか?」

「…ぃぇ」

「そんなに照れなくても」


すっごく小さい声で言われた。かーわいい。


「食べて寝たら豚になる」

「美味しいだろうね」


まん丸愛ちゃんを想像。かーわいい。


「きみは肥満製造機か」

「あれ?なんか聞き覚えが…」


前に似たような言葉を聞いたような。


「結ちゃん、この間からどうしたの?」

「何が?」

「私にべったり」

「いつもだよ」

「なんかここ最近さらに酷くなった気が…」

「嫌?」


嫌なら仕方ない…悲しいけど。


愛ちゃんに変な虫がつかないか心配なだけだ。

会社の人と飲みに行った件は【脇役女子、奮闘します!〜冷酷な彼にデレて貰いたいんです〜】の【第二章 第11話 始まった飲み会①】〜をご覧いただけると嬉しいです♡

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