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第二十三話 伯爵領の悪魔 その6


 その日、カズヨシは陽が昇る直前に目を覚ました。疲れ切っているためしっかりと睡眠をとるべきなのだが、眠気がすっ飛んでしまい、仕方なく起き上がって近くの小川まで顔を洗いに歩くことにした。


 明け方の村は閑散としており、昼間よりもいっそう寒々しい。


 小川に着き、川底をのぞき込む。その水はあまりきれいとは言えなかった。どんよりとしたまあ力を多く含んでいる。おそらくこの水も作物が育たない原因の一つなのだろう。


 仕方なくニックの家にバケツを取りに戻った。すると、家の前でぼーっと空を見上げながら目的もなく空を見上げている少女がいた。フレデリカである。


「こんな時間にどうしたの?」


 カズヨシは腰をかがめ、少女の前に立つ。すると少女は驚いたようにカズヨシを見つめた。


「眠れないの」

「どうして?」

「わからない」

「……すこし、散歩でもするかい?」

「うん」


 カズヨシは小屋においてあるバケツを手に取り、フレデリカとともに周囲を歩いた。


「……パパを助けてくれてありがとう」


 ふいにフレデリカが口を開く。駄々をこねてわがままを言っている姿しか見たことがなかったため、突然の感謝の言葉に思わずうろたえてしまう。


「君のお父さんを助けたのは僕の師匠だよ。僕じゃない。だから、あの人が起きたらあの人にいってあげてくれるかな?。きっと喜ぶから」

「キツネのおじちゃん?。兜のお兄ちゃんじゃないの?」

「そ。僕はあの人についていってるだけだからね。めちゃくちゃ強いんだよ?。僕の師匠は」

「どのくらい?」

「うーん、具体的にとなると難しいなぁ……」


 カズヨシの周りにはユウサイ以外の剣士や戦士がいなかった。そのため、指標となるものがとっさに思いつかなかったのだ。


「たぶん、この国で一番強いんじゃないかな?」


 仕方がないとはいえ、無責任にもそんなことを口走ってしまう。すると、フレデリカの目がぱっと見開き、カズヨシの服の袖を引っ張る。


「じゃ、じゃあ、お姉ちゃんもたすけてくれるかな!」

「それは……」

「ダメ、なの……?」


 その一言にカズヨシは返事を返すことができなかった。するとフレデリカの表所はみるみるうちに曇っていき、しまいには涙を浮かべだしていた。


 自分の無責任に放った一言が目の前の少女を傷つけてしまった。その事実がカズヨシの胸を突き刺す。

フレデリカの今にも泣きださんとするその顔を見ると、カズヨシの後悔の念がますます強くなる。そのとき前からゆっくりと人が近づいてきていた。


「お早いんですね」


 それはエルザであった。昨晩とは打って変わり、地味な服装の彼女はやはりどこか幸薄そうな顔を浮かべる暗い雰囲気の少女であった。。誰から見ても明け方の薄暗い雰囲気が彼女には実に似合っていると思ってしまうほどである。


「お姉ちゃん……」

「おはよう。フレデリカ。それに、えっと……」

「カズヨシです。おはようございます。エルザさん」

「ごめんなさい。人の名前を覚えるのは得意じゃなくて……」

「気にしないでください。それで、エルザさんはどうしてこんな朝早くに?」

「今日でこの村ともお別れですから。できるだけ、この村のことを覚えておきたいんです。ご一緒してもいいかしら?」


 カズヨシはエルザにこくりと首を縦に振ると、「ありがとうございます」と言って、フレデリカの手を握り、カズヨシに微笑みかけるのであった。



次回は明日の18:00〜18:30ごろになります

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