プロローグ
初の投稿作品です。温かい目で見ていただけると幸いです。
とある某所の山道にて、その少年、平野 和義は途方に暮れていた。
学校の遠足できた山登り。その途中で少年は運悪く足を滑らせ、がけから滑り落ちたのだ。運よく骨が折れることはなかったものの、足首を怪我し、右腕の関節にはひびが入っていた。ひ弱な少年では歩くこともままならない。
それに加え、もうじき日が暮れるため、あたりも薄暗くなりより一層、心細くなるのであった。
「僕はここで死んじゃうんだ……」
そうつぶやき、瞳を閉じる。そして、湿り気を帯びた冷たい腐葉土に身を任せ、全身から力を抜き去る。
小学生というのは実際にそうは思っていなかったとしてもなぜか大げさな言葉を口にしてしまう。
大けがをしたと言ったらただの捻挫。めっちゃ大きい虫がいると言ったら普通のセミやカナブン。うちの学校の給食めちゃくちゃうまいから、と豪語したとしてもそれは可もなく不可もない普通の給食である。
この発言もやはりそれほど本気で言ったわけではない。少なくともカズヨシの中ではそうだった。
しかし体から力を抜いたその瞬間、妙な安心感と、浮遊感が入り混じった不思議な感覚に襲われた。このままずっとここにいたい、そう思わせるものがそこにはあった。
その時だった。
「————————!」
今まで聞いたことのない怒号が少年を現実に引き戻した。
目を開き周りを見渡すと、あたりは薄暗く、元居た森の中とは打って変わり、土の壁に周囲は囲まれている。それに加え、目の前には見たことのない恰好をした男が八人。加えて、周囲にはカズヨシのように状況が把握できず、戸惑う子供が四人いた。
「————————」
男たちが何かを話しているようであったが、それはカズヨシの聞いたことのない言語であった。
英語なのかもしれないし、フランス語なのかもしれない。あるいは中国語や韓国語のようなアジア系の言語なのかもしれない。いずれにせよ、小学三年生の少年にその区別はつかないため、結局は同じである。
「————————」
相も変わらず男たちはなにやら、わけのわからない言葉で話している。それをカズヨシ含め四人はわけがわからずただ見つめていた。
しばらくすると男の一人がぶつぶつと何かを言いながら近づいてくる。そして無造作にカズヨシの隣の少女の髪を引っ張り連れ去っていった。その光景にわけがわからず、何もできずにただカズヨシはおびえていた。
少女も何やらカズヨシの聞いたことのない言語で助けを求めているようだったが、ほかの三人にそんな余裕があるはずもなかった。
引っ張られる少女のほうに別の男は目配せをし、ついていくようにと残っている三人を蹴り飛ばす。生まれて初めて受ける大人の本気の蹴りは重く、小さな体を簡単に屈服させる。
ただそれに恐怖し、カズヨシたちは従うのみであった。この時、手足の痛みはあったものの恐怖ゆえに唇をかみしめ、痛みに耐え足を運んだ。
この先に何があるかなど一切考えは及ばなかった。
一話の投稿は明日になります。なんとか毎日投稿を心がけていこうと思っておりますので、読み続けていただけると幸いです。感想などお待ちしております。
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