そう簡単に言えるかよ
「これ以上、さおりちゃんに男どもをゴリゴリ推されるの、ツライ……」
吹いた。
「お、お前なぁ! 笑ってるけど、俺の立場になってみろっつーの!」
「あはははは、ごめんごめん。そっかーそうだよね」
絢香さんはサポートキャラのさおりちゃんに淡い恋心を抱いていたんだった。でも、そういえばゲームでは毎朝、さおりちゃんは攻略対象のことを噂話的にヒロインである絢香さんに話してくれるんだよね。
誰それがこんな風に素敵でとか、絢香のことを見ていたみたいとか、褒めちぎりながら。
サポートキャラという性質上しかたがないことだけれど、さおりちゃんが他の男の人を褒めまくるのを聞くのは苦痛なんだろう。そもそも絢香さんの格好をしている間はアプローチすらできないだろうしなぁ。
ちょっと同情する。
「む、今のはまさか……」
「な、なんだよ」
「お前、もしかして女が好きなのか?」
「当たり前だろっ!!!!」
千尋様が心底驚いた、という顔で絢香さんを見るもんだから、絢香さんったら素直に白状してしまっている。まあ、絢香さんって結構顔に出ちゃうものね。
「なんだ、そういうことなら正直に言えばいいものを」
「そう簡単に言えるかよ! さおりちゃんは俺のことだって信じ切ってるんだぞ」
「いや、本人に言うのはまぁ、その……勇気が要るのは理解できる」
途端にもごもごと千尋様の口が重くなった。でも、確かに千尋様の言う通りかも知れない。
「そうではなくてな、その思いを正直に言ってくれれば協力は惜しまぬと、そう言いたかったのだが」
「それですよ、千尋様!」
そーだ、そうだよ。よくぞ言ってくれた、千尋様。は思わず興奮してしまった。
「え、なにが『それ』なんだよ。意味が分からない」
怪訝な顔の絢香さん。千尋様も首をかしげているけれど、もう突破口はこれしかない気がしてきた。
「絢香さん、雅様と妹さんに今の話を正直にしようよ。きっと、協力してくれるよ!」
「ばっ、ばか言え! なんでアイツらにまでそんなこと言わなきゃなんねーんだ!」
「だって、千尋様だって協力は惜しまないって気持ちになってくれたんだよ? 妹さんも雅様も、ただ戻ってこい、学園に通えって言われるより、よっぽど協力してくれる気持ちになるんじゃない?」
真っ赤になった絢香さんが「やだ、絶対やだ!!」と駄々をこねるのを、あたしは根気よく説得する。だってもう、いい加減この案件にかかりっきりになるわけにもいかないしね。
これ以外の案件もお店の手伝いもどうしても手薄になっちゃうのよ。この案件をしっかりとやり終えて、淡雪さんにも恩返ししたいんだもの。
そろそろ絢香さんにも覚悟を決めてもらわないと。




