潜入、成功!
窓の外でくるくるっと円を描くようにクダちゃんが回転すると、ぼんやりと焦点があっていないようだった妹さんが、クダちゃんの細い体に目をとめた。
「か、可愛い~!」
おお、妹さんの目がキラッキラしてる! どうやらクダちゃんの長細いモフモフボディがお気に召したらしい。良かった。
「うわぁ、こんなの初めて見たぁ! もふもふ、可愛い~!」
これは好感触! 窓にぴったりと張り付いて、くるくると円を描くクダちゃんを熱心に見つめている。
「なにこれ、めっちゃまわってる~! 何してるの~。うわ、もうちょっとこっち来てくれないかな~」
窓を開けようとして、妹さんは「あっ」と小さく声をだし、「危ない、窓開けちゃダメなんだった」と窓から一歩遠ざかる。窓を開けちゃいけないって……やっぱり結界的なことなのかしら。
「ああ~このところ爬虫類しか見てなかったら、もふもふが恋しいよ~。撫でたい~」
それでも、もふもふの誘惑には抗えないらしい。なるほど、たしかに蛇神様のお屋敷なら、爬虫類しかいないのも頷ける。爬虫類のひんやりツルツルした感触も素敵だけれど、モフモフはそれとはまた全然違う魅力だものね。
妹さんの視線がクダちゃんに釘付けなのをいいことに、クダちゃんに妹さんをじっと見つめて小首をかしげてもらった。
「きゅ?」
「か・わ・い・い~~~!!!」
悶絶する妹さん。そうでしょう、そうでしょう! モフモフ可愛い小動物に、つぶらな瞳で見つめられて小首をかしげられた日にゃ可愛い以外の言葉などあるまい!
クダちゃん頑張れ! 頑張ってそのかわいさで妹さんを誘惑してくれ!
私の感情の指令を受けて、クダちゃんが限りなく窓に近づく。入りたそうに「きゅー……」と窓ギリギリをふわふわと飛べば、妹さんも窓にべったり張り付いて「ああ~ん、触りたい……!」とうめいている。
「なにこの子、人なつっこい! 抱きしめたい~……おいで!!!」
気持ちだけでも抱きしめようと思ったのか、妹さんが両手を大きく広げてクダちゃんを呼んだその時。
一気に結界の中に引き寄せられた。気がついたらしまっている窓も飛び越え、妹さんと顔をつきあわせるくらいの近さに飛び込んでいた。
「ええっ!?」
まさか入ってくるとは思っていなかったんだろう、妹さんの声が驚きで裏返る。
「きゅうっ」
クダちゃんから勝利の雄叫びが漏れるのが可愛い。驚きで妹さんが固まっている間に、なんとか話しかけるところまでもっていかないと。
もしかしたら、妹さんに触れると雅様が飛んでくるとか、部屋に入っただけでもなんらかの警報が雅様に伝わるだとか、そういう可能性だってなくはないんだもの。




