仲が良すぎる!
「すまない」
やめて、そんなあからさまにシュンとした顔しないで。そっと目を逸らして俯いたかんばせが美麗なことには定評があるのよ、千尋様ったら!
うんうん、悲しげに伏せた目……長い睫毛が麗しい。光を受けた白銀の髪がその横顔にサラリと落ちてきて、いやもう、なんかエフェクトでもかかったんじゃないかと思ったよ。
ここぞとばかりに穴があくんじゃないかってくらい見つめまくっていたら、目の前でいきなりパンッと手が打ち鳴らされた。
ハッとして見上げれば、うんざりしたような絢香さんの顔。
「アホ面で見惚れてるんじゃねーよ、この千尋オタク! 早速顔にだまされやがって」
「しょうがないじゃない。絢香さんだって真白ちゃんの涙目上目遣いスチルがあったら萌えるでしょ!」
「今まさに若干近いものを見てるけどな。中身がお前だと思うとなんだかなあ」
おのれ! 真白オタクめ。しかし言わんとする事は分かる。
真白ちゃんは千尋様に全力で怯えつつもなんとか良き妻になろうと必死で努力していた健気な娘だ。私もそんなところが好きだった。
あのいじらしい性格までは再現できないんだよ、ごめんね絢香さん。
「仲が良すぎる!」
私と絢香さんの間に割って入ってきた千尋様は、そのまま私を背中で隠すように絢香さんと向き合っている。
「さっきから何を言っているんだ、意味が分からない。俺にも分かるように話してくれ」
「あ、悪い、つい。って言うか千尋サマ、話の内容ってどこから聞いてた?」
「む……」
私達の迂闊な会話に、さすがに千尋様がツッコミを入れようとしたところを、すかさず絢香さんが逆質問で封じた。
さっきストーカーと罵られたせいか、絢香さんの返しに千尋様の背中がピクリと動く。足を踏み出して千尋様の顔を仰ぎ見れば、千尋様は思い出すように目を泳がせていた。
「たしか……一族率いて全面戦争、と言っていたようだが。穏やかじゃない話だ、あれはうちの一族を指しているのか?」
千尋様の言葉を聞いて、私は正直ちょっとほっとした。
そこからなら絢香さんが陰陽師だっていう話はたぶん終わっていた筈。
さすがにそこが知られると面倒なことになりそうだもの。ちらりと綾香さんを見たら、絢香さんも明らかにホッとした顔をしていた。
一方千尋様は、なおも口元に手をあて、思案気に眉根を寄せている。
「他にも妖狐一族は怖い、融通が利かなそう……だから俺にも出張って欲しくない、そう言っていたような」
「めっちゃ聞いてるじゃねえか」




