驚きのセカンド
ちょっと待って、ちょっと待ってよ?
「乙女ゲームのラスボスっていったら……ライバル? え??? 絢香さんって男よね?」
おおお!? すごいなー、セカンドはそんな進化をしてたのか。昨今の乙女ゲームは凄い。
あ、だからもしかして今もあんな態度でも攻略対象者たちとラブラブな感じなのかな。
めっちゃ感心していたら、真っ赤になった絢香さんに渾身のチョップを貰ってしまった。見た目は愛らしくても腕力は男の子。地味に痛い。
「違うわ! セカンドはバトル要素もあったの!」
「バトル」
「そーだよ。実はヒロインの家って陰陽師の家系でさ、ヒロインはそのせいもあって妖の知識も深いし、理解や耐性があるんだよ」
知らなかった……! 確かに攻略対象者が妖だってことすぐに受け入れてたし、その妖ゆえの悩みや感覚の違いも聖母のように大らかな愛で包み込んでいた。
順応早いなーとは思っていたけれど、まさかそんな裏設定があっただなんて。
「セカンドではさ、陰陽師としての仕事は、兄……まあ、俺なんだけど。そっちが継いでて、ヒロインは妖が悪さをしないように学園で内偵してるって設定なんだ」
「えっ、じゃあ妖とは敵対関係なの?」
「いや、別に。いくら陰陽師でも、悪ささえしなけりゃ妖だからってだけで危害を加えようってんじゃねえさ」
すっかり女の子らしい仕草も板についてきた絢香さんが、鴉の濡れ羽色の美しい髪を指先でくるりと触る。小さな唇がちょっぴり尖っているのも無駄に可愛い。
「でも、じゃあラスボスって」
「ばーか、考えてもみろよ。妖と恋仲になったなんて、親兄弟から見たら『誑かされた』ってなるに決まってんだろ」
「あ、なるほど」
「しかもお前の『千尋サマ』みたいに許嫁が決まってる奴も多いからさ、妖サイドからの妨害とかもあるわけよ」
「意外にヘビーね」
「バトル要素ありだからな。許嫁本人だったり、親族だったりがちょっかいかけてくるから、ヒロインの絢香はそれなりに危ない目にもあうわけ」
「それを力を合わせて切り抜けていく中で絆が深まるわけね。ロマンだなあ」
思わず想像して、うっとりしてしまう。あの耽美な世界観の中での、互いを守りあって深まる愛、とかめっちゃ萌える。
「うわあ、やってみたかったなあ。ねえねえ、スチル綺麗だった?」
「真白ちゃんのがなくてムカついた。だから最後までやってねえ」
コケた。
話の腰が思いっきり折れてしまったじゃない……! いや、折ったの私か?
「ま、とにかく。絢香がケガしたり妖気を纏ったりするようになると、兄も放っておけなくて敵対するようになるんだってさ」
「そうだろうね」
「そっからは泥沼だぞ。特に妖サイドは陰陽師に恨みがあるやつも多い。ルートにもよるけどさ、一族率いて全面戦争とかシャレになんねえ展開もあるって聞いたからよ。その場合、兄な俺、めっちゃ死亡」
「めっちゃ死亡!?」




