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彼女の行方は

粘って粘って、何とか思い出してくれたのは蒲田という地名だけ。


それでも私にとってはかなりの前進だ。


蒲田にもしも行っているなら、きっと乗り合い馬車を使った筈だ。


だって走り始めたばかりの汽車のルートにはまだ組み込まれていないし、徒歩や人力車では遠過ぎる。馬車はさほど庶民にとって頻繁に使うものではないけれど、こうした遠くの街を繋ぐものとしての需要はあるって聞いたもの。


まあ、この調査を始めてから仕入れた知識だけど。



「ねえ」


「なんだよー、もうこれ以上は頭かち割ったって出てこねーからな!」


「うん、今日はもうこの辺で許してあげる。また頑張って思い出してね」


「鬼!」



見つけて欲しいのは貴方でしょうに。


そうは思うものの、グッタリした様子の絢香さんに流石にそうは言えなくて、私は緑茶を振る舞った。



「しっぽ〜……しっぽ触らせて」



潤んだ目で懇願されれば思わず触らせてあげたくなっちゃうけど、ここはグッと我慢だ。



「ダメだよ、なんか千尋様に怒られちゃうもの」


「なんでアイツが!」


「さあ、分かんないけど。それよりねえ、持って来てくれた?」



ぷくーっとほっぺたを膨らませて私を睨んだ後、諦めたみたいに溜息をついて、絢香さんは大きめのバッグをゴソゴソとあさる。



「……これ」


「なにこれ枕? もうちょっと小ぶりな物はなかったの?」



絢香さんの妹が使っていた物を持って来て欲しいとお願いしたんだけど。うまく使えば本人の気と呼び合って、羅針盤みたいな役割を果たしてくれるかもと思ったんだ。でも枕は持ち歩くにはデカ過ぎる。



「だってお前が、できるだけ長時間身につけてたもんがいいっていうから!」


「そりゃ言ったけど」


「だってあいつの服とかアクセサリー、今俺が使ってるし」


「確かにそれだと絢香さんの気の方が濃いからダメだよね」


「あいつが大切にしてた本と筆記道具は持ってってるみたいで無いし」



そっか、そうかも。大切な物で小ぶりな物なら持っていくよね。



「俺が使ってないので、あいつが使ったまま残ってるのなんか下着とか部屋の家具とかしかねーんだって!」


「下着」



そりゃあ、人の使ったのは使いたくない……っていうか、絢香さん男の子だっけ。私が思わず復唱したもんだから、可哀想に絢香さんは真っ赤になってしまっていた。


ごめん、悪気はなかった。



ううむ、流石にこんなに真っ赤になってる人にタンスあさってパンツ持ってこいと言うのは忍びない。枕で何とかできないか、取り敢えずやってみよう。


なんだかんだ言って、枕と地名、今日は二つの情報をゲットできたんだから、まずはそれを使ってみなくちゃね!

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