*彼と彼女の生活*
世界は優しくて残酷。生きていくにはいろいろな、方法がある。
私の世界は、あえて言葉で表現するならば、呪いをかけられ眠ってしまったお姫様のような出口のない世界な気がする。
呪いをかけられるのは人間だけだと。どこかで聞いた気がする。
呪われてるのは人間な証拠。でも呪いをかけるのを人間なのではないか。
本当は、食べ物と着る物、雨風を防げる建物、それに心を癒す音楽さえあればもうなにもいらない。
そんな優しい世界であって欲しいと願う。
「んーーー。」
ソフィアは目をさますとゆっくりとベットから起きがあり身体を伸ばした。
・・・首が痛い。
バイオリンを長く連続して演奏するとどうしても首と肩が痛む。
首をこきこきと動かす。
ソフィアは年季の入ったバイオリンケースに目をやった。
昨日は三ヶ所だバイオリンのストリートライブをやった。
自分の演奏で世界を変えようとか、プロになってたくさんの人に聞いてもらおうとそんな青臭いことは考えていない。
このバイオリンは生きる術だ。
曲を弾き対価としてお金を得る。細々と生活する分には困らない。
「・・・もう夕方ね・・・」
ソフィアはスウェットにたジャージの、寝巻きのまま、部屋のカーテンを開けた。
彼女の1Lの部屋に朝日に似た夕日が部屋に入り込んでくる。
部屋の中は年頃の女性の部屋とは思えないほど簡素なものだった。
ベットとテレビと小さな本棚。それに中身の少ない衣装ケース。
「さてと・・」
朝日が始まりであるのならば夕日は終わりなのか。
終える1日とともに彼女は活動を開始する。
ソフィアは、いつもの準備をルーティンのようにこなす。
髪を整え服を着替え。買い置きのパンをトースター焼く。
その時間に自分の持っていく荷物を確認する。
小さな黒いリュックサックの中には財布。バイオリンの小物。ちょっとした楽譜。それにほんのわずかな化粧品。
チン!
トースターのメモリが0になったのと同時に音がなった。
パンの焼けた香ばしい匂いが付近を漂っていた。
ソフィアはそのパンにバターを薄く塗る。それをかじりながら冷蔵庫にある水を飲み始めた。
食事にもあまり執着がない。生きてける物を食べられれば大丈夫だ。
質素な生活とは思わない。
それが自分の身の丈に一番合っている気がする。
・・・今日はクラブの演奏。かな?
ソフィアは全ての準備を整えて家を出るとき少し考えた。
まぁ、間違えてたらそのままストリートにいくだけの話だから問題はないんだけどね。
ソフィアは少し高めのヒールを履いて部屋の鍵を掛け足早にクラブに向かった。