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俺の強さが行方不明 ~昔は最強だったが今は粘土こねてるだけ~  作者: 裏山吹
第三話 自業自得とひねくれ者の魔法
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11 クズとクズが手を組んでよりタチが悪くみえる

 生徒玄関から中を覗き込む。

 学校内にも、赤い糸のモンスターはいた。というか、視界に入る人影がすべて赤いモンスターと化している。


 状況は思いのほか深刻だった。


「勇は学校の中にいると思うか?」

「まずいるでしょうね」


 千子は携帯電話を操作しながら答えた。


「『さもんじこはな』名義で参照者どもに学校を制圧するようメールを送ったわ。これで少しはましになるはず」

「ふん、ではまず俺の教室に行くぞ。援護しろよ」

「私に指図しないで。なんでそんな場所に行かなきゃいけないの」

「お前にプレゼントがあるんだよ」

「はあ?」

「いくぞ!」


 全員で一体ずつモンスターを倒しながら進んでいく。倒すのは進路を阻んでいるやつだけだ。

 しらみつぶしに倒していたら日が暮れる。


 それに、もっと直接的な攻撃力と防御力が必要だ。

 そのための材料を取りに行く。



 ……教室につくと、ほかのものに教室内を見張らせて、俺は自分の机の中をまさぐった。


「――あった!」


 俺自身も忘れて入れっぱなしにしていた。

 取り出したのは何の変哲もない一冊のノートだ。


「何よそれ」


 周囲を警戒しながら千子は訊ねる。


「遼さん、赤い人が入ってきました!」


 叫ぶ姫鶴。

 教室内には、二体の闖入者。


「千子、これに魔力を込めてみろ。練り上げる魔力因子は適当でいい」


 俺はノートのページを破って千子に渡す。


「気安く呼ばないでくれる? ていうか何よこれ」

「いいからやれ」

「!」


 千子がすぐさまノートのページに魔力を込めると、俺たちの周囲一帯の床に魔法陣が描かれる。破られたページに描かれていたのと同じものだ。


 魔法陣はそのまま、侵入者を拒み許された者しか出入りすることができない特別な魔力障壁を形作る。

 結界というやつだ。赤いモンスターたちはどうあったって入ってこられない。


「これは、ページが護符タリスマンの代わりになっているの? でも、こんな強力な……!」


 目を丸くする千子。


「いや……本来ならもっと範囲が広く強力なんだがな」


 教室の半分ほどしか守れていない。魔力因子の薄いここじゃ、効果もそれなりだ。


「一体、なんなのよそれ」

「黒歴史ノートだ」

「はあ?」


 俺が取り出したのは、加納と檜山に黒歴史ノート呼ばわりされた一冊だった。

 俺の記憶が戻りたてのころ、魔法が使えるかといろいろ魔法陣や術式を書きなぐって試してみたノート。


 結局俺には魔力が込められないから使えなかった。

 しかしここに魔力を込められる奴が一人いる。


「二次被害を起こさないためにここに被害のあった生徒たちを収容するぞ。いったん魔法陣の本体である紙に魔力が込められれば、俺たちがここを離れていても障壁の効果は破られない限り持続する」


 魔法の使える者が正しく使えば、この黒歴史ノートはたちどころに超強力な魔導書となる。


 なにせ俺が考えた特製の術式がほとんどだからな。しかも何も考えずに魔力をこめるだけで、あとは自動で発動までやってくれる。


「姫鶴と笹露はほかの参照者どもと協力して生徒を助けろ。俺と千子で勇を叩く」


 笹露は頷いた。

 姫鶴も同じように頷いて、


「わかりました。でも、勇さんの居場所は?」

「千子」


 千子は、携帯電話を操作しながらうんざりそうに言った。


「だから、気安く呼ばないで――今、仲間の参照者から連絡が来たわ。三日月勇は屋上に逃げたそうよ」

「よし。お前なら赤い奴らを蹴散らしながら強行突破できるな?」

「誰に言ってるの?」


 俺は微笑して、またノートのページを破って千子に渡した。


「これは?」


 千子はいぶかしげに訊いてくる。まだこいつは俺を信用しきってないのか。まあそれはお互いさまか。


「魔法剣を生成する魔法陣だ」

「そんなことできるの?」

「普通は無理だな」

「……どんだけでたらめなのよ」


 千子が魔力を込めると、ページが勢いよく燃え上る。灰になって消えると同時、炎のような赤い刀身を持つショートソードが現れた。


「生物以外を燃やし尽くす『火界の炎』を宿した剣だ。生物本体を傷つけず赤い糸を燃やすことができる。服は燃えて全裸になるが、体力を吸い尽くされて瀕死になるよりはましだろう」


 研究途中の燃焼エネルギーを使っているためまだ試作段階だが、威力は折り紙付きである。


 千子はすぐさま結界の外にいた赤いモンスター二体に切りかかった。


「ぎゃあああっ」


 赤い糸と服を燃やしながら、全裸になった生徒が声を上げてその場に倒れる。

 怪我はないとはいえ、さすがに容赦ないな。


「ふん、あなたにしては上出来ね。進路上の赤い人間はしらみつぶしに倒しながら行くわよ」

「俺に指図するな。つーかなんでそんな上から目線なんだよ。俺に感謝しながら行け」

「ただの協調でしょう? 助け合って当然よ」


 教室のドアを開け、一閃。全身を燃焼させて生徒は倒れた。


 俺は遅れて、千子の背中を追っていく。


「おい、ちょっと待て! 勇が屋上にいるってのは正しい情報なんだろうな?」

「どういうこと?」


 千子はその場に立ち止まる。


「もし勇がお前の仲間を倒して、そいつの携帯から嘘情報をメールで送ってるって可能性もあるだろ。そしたら完全な罠だ」

「それしか情報がないんだから屋上に向かうしかないでしょう?」


 まあそりゃそうなんだが。


「たとえ罠でも、私なら切り抜けられるわ」


 堂々と言われて、俺は嘆息した。それだけの実力を彼女は持っている。


「……まあいい。まかせる」


 だがちょっと面白くない。


「あのっ」


 行こうとすると、結界の外に出た姫鶴から声がかかった。


「お二人とも、気を付けてください!」

「ふん、当然だ。誰に言っている?」

「ち、ちちちち忠告、かっ感謝するわ……!」


 千子は赤くなって目を泳がせていた。わっかりやすいなぁ。


「とても罠を力押しで切り抜けようとする人間の言葉には聞こえんな」

「うっ、うるさい!」


 言いながら、千子はもう一体、近づいてきた赤いモンスターを切り伏せた。


「そうだ、姫鶴、お前も来い」

「はああっ!?」


 俺の提案に、千子は声を荒げた。


「な、なに言ってるの!? 罠かもしれないって言っているでしょう!? 危険すぎる!」


 これでもかってくらい声が裏返っていた。


 うむ。

 いいぞぉ、これ。


「お前のリトルペンナイフによる刃物は糸を断ち切れる。いざというときお前がいてくれると助かる」

「あ、はい……じゃあ、一緒に行きます」


 姫鶴は心なしか嬉しそうにうなずいた。


「では笹露、結界内の守りは任せたぞ」


 落下の能力で倒れた全裸の生徒たちを結界内に移動させながら、笹露は頷いた。


「お任せください。ご武運を」


 罠ならば千子が活路を開いてくれるそうだし、これで状況は整った。


 ……勇を止めるのはもちろん大前提だ。

 問題は俺が主導権を握れるかどうかである。

 姫鶴がいれば、とりあえず千子は大人しくなる。それが大事だ。


「フハハハ! ではゆくぞ!」


 今後のことを考えれば、千子には俺におとなしく従ってもらわねば困るのだ。

 それに、たとえ協力し合っていても、千子にいいように使われるだけってわけにはいかないからな。


 こればかりは譲れない。状況をコントロールし、この事件を収めるのはこの俺だ!

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