7 ちょっとラブコメします
次の日の放課後、俺は体育館裏に姫鶴を呼び出していた。
行う策はもう決まっている。
「な、なにをするんですか?」
姫鶴は自分だけ呼び出されたのが不安らしかった。
まあ最近ロクなことになってなかったからな。
「うむ。今日はちょっとお前と町を散歩しようと思ってな」
「?」
「いや、そのままの意味だぞ。ちょっと気分転換にそのへんぶらぶらして帰るだけだ。お前行きたいところあるか?」
「えっと、それって……」
「ああ、デートともいうな」
「ぶえっ!?」
俺がそっけなく言うと、姫鶴はのけぞって喉を詰まらせた。一瞬で顔がゆでだこみたいになっている。
「でっでーとですか!? なんでまた!?」
「質問は許可しない。命令だぞ。どうするんだ?」
「あ……その、命令なら、仕方ないですかね」
「決まりだな」
俺はスマホを取り出して操作する。
「えへへ……そうですか。今日は戦いはお休みするんですね」
姫鶴はというと満面の笑みで口元を両手で押さえながら左右に揺れていた。
「で、行きたいところはないのか?」
俺が再び質問すると、姫鶴は言いにくそうにはにかんだ。
「……じゃあ、かわいい服とか着てみたいかなって」
「服屋か? そんな所でいいのか?」
「はいっ、それだけでいいです。あっ、でも、できれば、気になる本もちょっとあって……この前ここの生徒の女の子が読んでたやつで」
「本屋もだな。かまわんぞ。一冊くらいなら買ってやる。あとは?」
「あとは、おまかせします……わがままですいません」
「ずいぶん控えめだな。まあいい。二か所も回れば日が暮れるだろうしな」
「ですね!」
ずいぶん嬉しそうだった。
うむ。いい表情だ。
「では姫鶴」
「はいっ」
「1~3までの数字を一つ選べ」
「……なんでです?」
「これからお前と出かけるのに必要だからだ。心理テストとかそういうのじゃないから気兼ねなく適当に選んでみろ」
「えっと、じゃあ、2番で」
「2番だな。2番は俺の携帯にこう書いてある」
「?」
いまだ上機嫌で首をかしげていた姫鶴に、俺のスマホの画面を見せた。
メモ書き機能にはこう打ち込んである。
1・首輪をつけて四つん這いで歩く
2・服を脱ぐ
3・どちらもやる
「ということで、お前が服を脱いだら出発するぞ。3番じゃなくてよかったな」
「え、ええー……」
一瞬にして表情から色が消えうせる姫鶴。もちろん脱ごうとはしない。
「どうした? 早くしろ」
「えっ、あの、せめて1番で、1番でお願いします」
「だめだ。お前が選んだんだぞ。ちゃんと自分で決めたのには責任を持て」
「い、いやです、恥ずかしいです……」
「誰にも見えないんだから平気だろう」
「で、でも。いや、ちょっと待ってください。なんですかこれ。普通に出かけるんじゃだめなんですか」
「いいからやれ。小葉菜先輩を助けたいんだろう? まだ自分のそのちっぽけなプライドと小葉菜先輩を天秤にかけるつもりか? いい加減そんな自尊心は邪魔であることに気付いたらどうなんだ。いいか、もう一度言うぞ。目的の達成に、その自尊心は邪魔だ。そうだろう」
「そうかも、しれないですけど……いえ、これ小葉菜ちゃん関係ないですよね?」
「あるんだよ。お前がやらなければ目的は先に進まないぞ。どうするんだ?」
「いや、でも……」
尻込みしている姫鶴の制服に、俺は手をかけた。
「ほら、手伝ってやるからさっさと脱げ。見えたとしてもそんな貧相な身体じゃ誰も反応せん」
「ひどい、私だって成長すればスタイルくらい……」
「お前成長しないだろ」
必死になって服の裾を押さえる姫鶴に対して、俺は脱衣を強行する。しかし姫鶴も押さえる力を強くして抵抗していた。
「ひっひええぇ、待ってください、まだやるって決めてな――」
「俺とデートするって言っただろ。それはつまりやるってことだ」
「待ちなさい!」
小さなへそが見え肌が胸元まであらわになろうとしていたところで、あらぬところから突然声がかかった。
日の光を遮るようにして、千子が駆けつけに来たのだった。しかし妙に顔が赤い。
「そのようなふしだらな行為、私が許さないわ!」
「鼻血拭けよ」
案の定引っかかりやがった。しかも颯爽と興奮している。




