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俺の強さが行方不明 ~昔は最強だったが今は粘土こねてるだけ~  作者: 裏山吹
第二話 調教の通常運用(リアルスキル)
18/51

幕間

 吸い込まれそうな闇を抱えた室内だった。本棚が並んでいるのがうっすらと見える。

 アンティーク調の、落ち着いた木製テーブルと椅子があった。向かい合うようにして置かれた二席に、二つの人影が座っている。


 テーブルの上には二人分のティーカップ。中に入っているのは温かい紅茶だった。だが楽しげに茶会をするには、この空間はあまりに薄暗くあまりにつつましやかで、底抜けにひっそりとしていた。


 一人がその紅茶を手に取って、


「もう知ってる? ディアボロスが記憶を取り戻して、世界支配のために動き出したって……」


 弾むような声で向かいにいる人物に話しかける。女性の声だ。若い、少女の声色。


「知っている。記憶が戻ったなら、『計画』を次の段階へ移す必要がある」


 不機嫌そうな重い声が響く。同じく若い女の声だった。


「彼が『参照者』になったのは予想外だったりする?」

「なろうがなるまいが『計画』に支障はない。とにかく『本』と『鍵』の両方が奴に渡ることだけは避けねばならない」

「うん、確かにね」

「それで? どうするんだ」


 重い声は淡々と伺う。弾む声はやや悩んでから返答した。


「えーあたしに意見聞くの? 『計画』を発案して、遂行しているのはあなたなのに?」

「そうだ。それが私の役割だ」

「んーと、まだ様子見しよう?」

「勝手にしろ。覇王討伐の指導者――カストールの後継はお前なんだから」

「あたしに倒せると思う?」

「やってもらわねば困る」


 弾む声の主が紅茶の入ったティーカップを口元に近づけた。一呼吸おいて、重い声は忠告する。


「ただ、あまりもたもたしていると私が独自に動くぞ」

「んー、それも『計画』?」


 弾む声の主が言いながら頬杖をついた。


「そうだ。そして私の判断でもある。奴が記憶を取り戻したからには、早急に事を進める必要がある」

「くすっ……あたしはあたしのやり方でやるからね」

「どんなやり方でやっても構わないが、すべては復活したディアボロスを倒すためだ。それは肝に銘じておいてもらう」


 重い声の主は、椅子の背もたれに体重を預ける。それからまるで夜空でも見上げるように、無機質な天井を仰いだ。

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