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俺の強さが行方不明 ~昔は最強だったが今は粘土こねてるだけ~  作者: 裏山吹
第二話 調教の通常運用(リアルスキル)
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 部屋の中、一人の少女がベッドで上体を起こしている。

 控えめな色のカーペットに、整然とした室内。机の上も片づけられていて近頃使用した形跡はない。キャラクターものの古い目覚まし時計が、寂しげに時を刻んでいる。掃除はしっかりとされていて埃などは落ちていないが、生活感はどこか希薄だ。ただ、本棚には隙間なく様々な本が詰め込まれていて、そこだけにぎやかといえばにぎやかだった。


 無機質の雰囲気漂う部屋と同じく、ベッドでじっとしている少女の顔にも色がない。どこも見ていないし、何も聞いていない。表情もなく、何かをしゃべる様子でもない。

 高校生くらいの女の子である。細く長い髪の毛先にはやや癖があるだろうか、前髪は伸ばしっぱなしで目にかかるほどだ。少し小柄で、あまり外に出ないのか肌は日本人にしてはかなり白い。


 呼吸はしている。死んでいるわけではない。

 心もなくただ生きている。そんな印象。


「また来ちゃいました……」


 姫鶴ひめづるはそんな彼女の手をとって、薄く微笑んだ。

 手を握られた少女は、わずかな反応さえない。誰かがいることを認識できるだけの意識がないのだ。


「おととい私が言ってた男の人、あなたが以前話してた仲門遼なかかどりょうさんでした。びっくりです」


 姫鶴は楽しそうに話しながら、表情を濁らせる。


「でも、なんていうか、面白い人っていうよりはいじめっこでしたよ。すごくいじめっこでした。聞いてたのとちょっと違った……」


 姫鶴がしゃべっている間にも、彼女に反応はない。姫鶴もそれがわかっているのか、一人で話を進めている。


「でもね、なんだかんだ言って優しいところもあって……いや、でもやっぱりかなりいじわるでした。いちおう私に協力してくれるって言ってたけど、その前には裏切るとかなんとか言ってたし……でも、がんばります。たとえ大変な道のりでも、きっと『本』を手に入れて――」


 姫鶴は改めて決意を固めるように手をぎゅっと握って、言葉を切り、


「――小葉菜こはなちゃん、絶対にあなたの心を救ってみせますから。待っていてください」


 呪文のように、自分の願いを口にした。

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