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転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
二章「戦乱と血塗れた夢」
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21.盗賊団討伐1

「ここで間違いないのか?襲撃にあったという村は」

「は、はい……。ここで、間違い、ないはずで……。うっ、す、いません。ちょっとっ!」


クロハの問いに答えた年若い兵士は、目の前の光景に動揺を隠せず、口を押えたまますぐ傍の木の陰へと駆け込んだ。

直後に聞こえてくるのは、胃の内容物を吐き出す声と、不快感を拭い去るように続く苦しそうに咳き込む声。


儂はクロハの隣に立ち、辺りを見回した。


まぁ、ついこの間入ったばかりの若兵にこの光景は少々酷という物か。


所々ではあるが辛うじて原型をとどめている家屋はチラホラと見て取れるが、どれも半壊以上に壊れている。

火を放ったのであろう事は、いまだパチパチと音を立てて燻る火種と、黒く焼け焦げた木材を見れば明らかだった。

最早使い物になる家屋は残っていないだろう。


そんな焼け焦げた木造の家屋が周りに並ぶこの中心地。

恐らくは村の広場であっただろうこの場所で、折り重なるように積み上げられた、かつて人だった物。


どれもこれもが、無残に惨殺されている。


肉の焼ける匂いに顔をしかめずには居られない。


そして中心地に集められた肉塊達とはまた別に、少し離れた場所に目をやる。


広く広く広がる血溜りの中、そこに無造作に転がるのは、恐らくあらゆる部位の臓物だろう事は見て取れる。

何の(・・)かは、考えたくもないが、恐らく人の物である事は容易に想像がつく。

そして不思議な事に、その場には臓物しか見当たらない。

いや、チラホラと見える物がある。

少しだけ、申し訳程度にこびり付いた肉が覗く、骨だ。

よくよく観察してみると、至る所に同様の白骨が転がっている。


この広さの規模の村であれば、恐らく住人は30から50と言った所だろう。

その中に若い女子供は、半数とは行かないまでも十数人はいただろうか。


また積み上げられた肉塊に目をやる。

原型をとどめて居る物に重点的に目をやると明らかだ。

男と、年寄りだった者しか、そこには積み上げられていないのだと。


ゾクリと、背筋を嫌なものが撫でる。


食ったとでも、言うのだろうか。

それは果たして、人だろうか。


「人が人を食うか?全滅させられて、その後に野犬やらの森の動物に食い荒らされただけだろう?」

「いや、しかし、内臓だけを奇麗に分けて?それも、食わず嫌いまでする野生の動物がいるじゃろうか?」

「……しかし、……いや、ここで考えても無駄だな。私達は私達のすべきことをしよう。大凡の位置は、掴んでいるんだったな」


そう言ってクロハは、目の前の惨状から目を反らし、後ろに待たせている近衛兵に手綱を引かれた馬のほうへと歩み寄り、そのまま馬へと跨った。

儂はそれを横目に、手を合わせて目を瞑り、慰めの黙祷をした後、クロハの元へと駆けていく。


この村から少し離れた場所に設けられたキャンプ地へ戻る途中、ゆっくりと進む馬と並行して歩きながら、儂とクロハはこれからの事を話していた。


「それで、奴らの位置は?」

「カラス山の麓付近にある洞窟が本拠地と見て間違いない。見る限り、坑道跡地じゃろう」

「あぁ……、何年か前に放棄された場所か」

「そこに恐らくは本命がいると思われる。そして、それとは別に、そこから少し離れた位置にある元農村を拠点にしている奴らがおる」

「同じ盗賊団なのか?」

「う~む、どうじゃろうなぁ。儂が農村を見に行ったのじゃが、中に忍び込んで見た限り、賊の類なのは間違いないが……」

「何か引っかかっているのか?」


儂の考える素振りを見て、クロハが問いかける。


確かに引っかかる。


儂が盗賊団の足取りを追い、見つけ出した元農村を拠点にしている賊連中。

数は40そこそこで、どれもこれも凡庸と言わざるを得ない輩ばかりだった。


そして今日目の当たりにした先程の農村の惨状。

あれを、あの凡庸な輩達が、ヤれるのかという疑問。

占拠されていた農村も、見る限り奇麗なものだった。


「さきの惨状を見る限り、農村を拠点にしておる輩共ではどうあがいてもアレは出来んじゃろう。別物と考えたほうがよいかもしれんな」

「ふむ……」

「うーむ、子供らに坑道の方を任せたのじゃが、偵察にまでは入るなと言っておいたからのう。中に居るのは間違いないが、人数等ははっきりせん」

「アオイなら上手くやるかもしれないが、中に入るのは危険すぎる。仕方がない」

「場所も少し離れて居るし、此方の人数が多い。一度動き出せば気取られて逃げられる心配も出てくるじゃろう。もう一度偵察に出ても良いが……」

「いや、あの惨状を見てはこれ以上のんびりもしていられないだろ。やはり当初の予定通り、二か所同時に叩く。白羽と近衛は私達と共に坑道、黒羽に農村の制圧を任せる」

「恐らく農村は黒羽とイリサワ殿が居れば簡単じゃろう。囲むだけで終わるのではないか?」

「だろうな。問題は坑道のほうだな」

「うむ、儂らは勿論クロハについてゆくぞ。あの惨状を作り出した輩が居るかもしれんのじゃ。どのような面をしておるか、拝んでおかねばのう」


未だ見ぬ強敵か、それとも唯の狂った獣か。

どちらにしても、元農村に陣取る賊を見たときの落胆を消し去る程の期待感が渦巻いている。

どうか、儂を楽しませてくれる事を切に願う。


こうして、盗賊団殲滅作戦が始まるだった。




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