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転生異世界忍法帖。  作者: 熊田猫助
二章「戦乱と血塗れた夢」
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10.二年越しの戦火8

二章で始まった戦のお話ですが、思ったより長引いているなぁと思う今日この頃でございます。

もっと早く終わるかなと思っていたのですが、思う通りには中々いかない物でしたorz

と、二話程出番が皆無だった主人公ですが、今回でようやく出番でございます。

戦闘描写やら、戦の戦況やら作戦やら、至らない点が数多く見られると思いますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

ブックマークして下さっている方、読んでくださっている方、共に感謝を。

「ふむ……、大凡予定通りに事は進んでおる様じゃのう」


儂は笑みを零しながら呟く。

目下では総勢一万という人数による殺し合いが繰り広げられている。

思わぬ者との遭遇で少し遅れたが、この戦の大凡の戦況をこの場所でずっと眺めていた。

今儂がおる場所とは、儂が木の塊と評する森の出口付近であり、ここから先はまた岩場が続く道なき道である。

その出口付近に存在する木の天辺へと昇り、谷底の戦を眺めていたという訳だ。


まず、儂から見て手前に位置する敵勢へとカオル皇子が突撃をかけ、中腹程まで進んだのち、部隊を分けて前線を押し上げている。

敵陣ど真ん中で敵兵達と奮闘するカオル皇子とカイ将軍を眺めていると血が騒いで仕方がなかった。

いつか必ず手合わせ願いたいものである。


それはさておき、カオル皇子が大立ち回りと前線を押し上げようと頑張っている間、カミハラの守備を固めるべく流れている敵兵部隊の穴を狙い、我が主であるクロハと儂の娘も奥側の前線をかなり押し上げていた。

突出している総大将という囮を使い、手薄になった個所ばかりを狙い撃ち、遠回りながらもかなり敵本陣近くまで進んだクロハの部隊だったが、ある程度まで進んだ所で動きが止まった。

なぜなら、敵兵を全て蹴散らして進んだ訳ではないのだから当たり前なのだが、周りを敵に囲まれたからだ。


今の現状を言うと、まず最前線の味方の本隊がおり、その間に別働であるカオル皇子の部隊、そしてカオル皇子本隊に、逆側からクロハ達の部隊がおり、それぞれの間には数はそれなりに減ってはいるが相も変わらず敵兵部隊が存在している。

まるでハンバーガーの様に間間で違う部隊が存在しているのだ。

しかし、どうだろう。

そのハンバーガーの間をクロハにカオル皇子、別働体、それぞれが区切りとしての役割を果たし、上側のパン、もとい、カミハラの本陣部隊は孤立している。

その数、ざっと300程だろうか。


最前線は数が少ないながらもそれぞれが兵士百人に匹敵すると言われる猛者達、赤鬼衆第三部隊の前方からの支援により、ジワジワと押し上げられている。

この第三部隊と最前線の部隊が合流するのは容易ではないにしても時間の問題だろう。

総大将であるカオル皇子を打ち取ろうと群がる兵達も、その技量差から足止めを食らっている所か徐々に数を減らし始めている。

そして、不格好に守備に回り、あるいは武功を急いて総大将の首を狙った部隊達の穴は見事にクロハ達の部隊に突かれ、カミハラの目前まで迫る勢い見せている。


二年の歳月をかけ、慎重に、慎重に、準備をしたカミハラ。

儂に尻尾を掴ませる事もなく、勿論儂を過大評価するつもりはないが、カミハラのその慎重さには一目置いているのだ。

それほど慎重で用心深い男が、今のこの危険な状況をどう判断するか。



「ほっ……、と、さてそろそろ作戦も佳境じゃ。ユーリよ、そろそろ例の場所に急ぐとしようか」

「うん、アオイお姉ちゃん」


儂は戦況を見る為に登っていた木の天辺からユーリがいる枝まで飛び降り、件の場所に向かう為に動き出した。



「でも、まだ見なくてもいいの?まだ戦況がどうなるか……」

「あぁ、問題ないじゃろ。それに、いくら件の場所に近いとは言え間に合いませんでした、では済まんからのう。ここまでくればあとは……、天が結果を決めてくれるじゃろ」


そして、儂らの考えた作戦は、こうだ。

まずはカオル皇子の性格やらを知るクロハが彼の行動の予想を立てた。

それは先ほどの戦を見る限り、殆どハズレは無い様だった。


後は、カオル皇子を囮に使い、カミハラを追い詰める。

そして、ミナト殿とクロハの部隊を分け、カオル皇子の援護を言い訳にその動きを阻害する。


そして、クロハの部隊はまたジリジリとカミハラを追い詰める様に動く。

その間に前線も段々と上がるだろう。


先ほど見ていた戦況を見る限り、あそこからは余程の奇跡でも起きない限り、カミハラの勝利は万が一にも無い。

それを見極める目を持っている、と、儂らはカミハラを信じた。

恐らくそこまで追いつめる事が出来れば、退却を判断するだろうと。

退却を判断してくれれば後は、追い打ちをかけるためにクロハの部隊が率先して動く。

そして、残党処理と総大将を守るという名目の元、ミナト殿は邪魔を続行。


しかし、問題があるとすれば、二年という歳月、もしくはもっと以前から画策していたかもしれないこの挙兵を、カミハラがあっさりと見限ってくれるかどうかだ。


そして儂は、ある程度道なき道である岩場を進んだ所で例の場所へと到着し、止まる。


「ふむ、ここか……、情報通りじゃな」


ポツリと呟く。

そこは、忘れられた谷底からの抜け道。


カミハラの本陣がある場所から、谷底をウールの町へ向かって少し進むと、細い空洞がある。

その短い空洞を抜ければまた細い空が覗く谷底ではあるが、ある程度の広さはあった。


ここを真っ直ぐ抜ければ、北の山へと向かう街道へと続いている。


この道は最早使われていない物であり、極一部、それも、ある程度のお歳を召した者しか知る者はいない。


儂が二年の間、カミハラを探す為に近隣の村や町を駆けずり回っていた時に偶然知りえた情報で、恐らく、今あの戦火に身を投じている者達の中でこの道を知っているのは儂と、クロハと、もう一人しかいないはずだ。



「……ここいらでいいかのう。では、儂は下に降りる。ユーリはそこから援護じゃ」

「わ、わかった……。アオイお姉ちゃん、気を付けてね……」

「うむ、心配するな。儂はこんな所でくたばる様なヘマはせん。ましてや、残してきた子供達、ユーリに、カエデとツバキ。可愛いお前達を残してゆけるか……」


そう言って心配そうに儂を見上げるユーリの頭をクシャクシャと撫でると、ユーリは目を細めて照れ臭そうに笑う。


そして儂は、ある程度標高差の無くなった所で、下方に見える岩肌の点在する突起した部分を使い、難無く谷底の地へと足をつけた。


「んっ!んんんぅ……!ふぅっ……」


そして儂は思い切り伸びをする。

やはり足場が安定しているのは良い物だ。


「今日はピョンピョンと飛び跳ねてばかりじゃったからのう……」


と、ここでふと足元と耳に違和感が走る。

そして徐に儂はしゃがみ込み、耳を地面へとつけた。


「……この振動に音、馬じゃな。数は……、案外多いか。二十、いや、三十は居るかのう」


予想通りの働きをしてくれたネズミと、儂らの信頼に答えてくれたカミハラに感謝を。

そして儂は起き上がり、服についた土を払う。


「どうやら、今回は、天が儂らを選んだようじゃ……」


そう呟き、ニィッとした笑みが零れる。

段々と近づく振動に、土煙を見据え、準備運動の様に体を動かす。


「ようやくご対面じゃ……、二年もの間洗っておったその首、儂が頂戴しよう」


そして姿を現すのは馬に乗る数十人の兵士達。


その先頭を務めていた兵士が儂の姿に気づき、急いで馬を止めた。

そして前が止まった事でそれは後方へと伝染していく。

数十の馬の嘶きと共に一団は動きを止めた。

そしてゆっくりと先頭へと馬を進ませて来るのは、一際豪奢なマントを羽織り、仕立ての良い茶色の鎧を身に纏う男。

総白髪の髪をオールバックにし、口髭を蓄えているその男は、アイシアの街の前領主、ビゼン・カミハラ。

その人で間違いなかった。


「何事だ!!急に止まるな!!」

「す、すいません!!しかし……前方に人が……」

「何をバカな……、この道を知る者などそうはいないと……」


そしてその兵士は言葉を発しながら前方に佇む儂を見つける。


「なんだ?あの妙な恰好は……、近隣の村の者か?いやしかし、ここからはまだ大分離れて……」

「まさか!待ち伏せですか!?」

「ふんっ、何をバカな。待ち伏せの情報はあるが、それは向こうの谷底を抜けた先、ウールの町付近のはず。大体……どこの世界に一人で待ち伏せをするなどいう馬鹿がいるんだ。そうだろう!ヤスケ!!」

「へ、へい!!あっしが命からがら掴んだ情報です!間違いありやせんぜ!カミハラの旦那!!」


何やら儂を置いて話を続ける兵士達であったが、その中に、見知った顔を見つけた儂は声をかける事にする。


「おーーい!ヤスケ殿!!そんな所におったのか!ご苦労じゃったのう!!」


そう言いながら儂はニコヤカに一団へと手を振る。


「……おい、ヤスケ。何やら親しげに話しかけてきているぞ……」

「はっ!な、なにを!あっしはお前なんて……、しらな、いぞ?……いや、アイツは……」

「ほう、どうやら知り合いの様だな……。私達を嵌めたか、ヤスケ」

「い、いや!!イヤイヤ!待ってくれ!!あっしは何も知らない!!」

「もうよい!!」

「や、やめっ!ぎゃぁぁあっ!!」


そう告げたカミハラは、腰に帯びたロングソードを抜き放ち、一思いにヤスケと呼ばれた男を袈裟懸けに斬り裂いた。

そしてカミハラは儂を睨みつける。


「どうやら、まんまと私達を嵌めてくれた様だな。貴様何者だ?」

「おや、殺されてしもうたか。ヤスケ殿には悪い事をしたかのう?」

「ええぃっ!質問に答えろ!」

「ふむ……、まず人に名を訪ねる時は自分からと習わなんだか?」

「貴様……、ふざけておるのか!!」

「いや、ふざけて等おらんぞ。儂はいつでも大真面目じゃ。しかしまぁ、仕方あるまい。儂はクロハ様がシノビ。貴殿、ビゼン・カミハラ殿とお見受けするが、違いないか?」

「クロハ……、やはり貴様、ヴェイリース皇国の手の者か!くそっ!くそっ!私が一体どれほど苦労して今日この日を迎えたと思っている!!また振り出しだ!!!あと少しで、あの町さえ落とせば私もあの方達の眷属に!!!力が手に入るはずであったのに!!!!」


儂と会話をしていたカミハラは、急に喚き散らし出す。

そして、一通り喚き散らした後、落ち着きを取り戻したのか、また儂の方を睨み、辺りを見回す。


「ふんっ、よおく考えればこの様な場所で伏兵など有り得ん。回り込むには時間が足りず、その軽装から察するに、信じ難いが谷上の道無き道を超えたのか?いや、ここに至った経緯は最早どうでもいい……、今貴様が私の目の前に立ち塞がっているという事実!それが許し難い!」

「ふむ、お察しの通り、中々鋭いのうカミハラ殿よ。今この場には儂は一人じゃ。して、どうする?」

「愚かな!皆聞け!伏兵等恐れる物ではない!!こやつを退かせば道は開かれるのだ!殺せっ!!!!」


カミハラのその言葉を皮切りに、後ろに控えていた兵士達が前に出た事により一瞬でカミハラの姿は隠され、儂へ向かって騎馬隊が群がってくる。

それを眺めながら、儂はゆっくりと屈伸をした後、クラウチングスタートよろしく、一気に加速し、群がってくる騎馬隊へと向かって走り出す。


「ふふっ、楽しくなってきたのう。では、クロハ様がシノビ……、推して!参るッ!!!」




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